劇場版『だかいち』主題歌を彩るDEEP SQUAD 杉山亮司さん&比嘉涼樹さんインタビュー|物語に寄り添った世界観に切なくも儚いボーカルワーク、トラックはボカロを意識!?
『だかいち』は共感できる部分がたくさんある
――『劇場版 抱かれたい男1位に脅されています。~スペイン編~』(だかいち)で初アニメ主題歌が決まったときはどのようなお気持ちでしたか。
比嘉:光栄でした。こんなに愛されている作品の主題歌に使っていただけるということでシンプルにうれしかったです。僕らのことを知らない人たちに僕らの歌を聴いていただけるチャンスでもあるなと。
――『だかいち』のお話の印象はいかがでしたか?
杉山:純粋な恋愛で、共感する部分もすごくありました。漫画の中の言葉が詩のようで、ステキな言い回しが多いなと。そういった意味でも感動した作品です。
――例えばどんなところに共感されましたか?
杉山:嫉妬の部分ですね。お互いが知らないところで動いている場面があって。お互い男性ならではの心情で「分かるなあ」と。今までBL作品に触れる機会があまりなかったので楽しく読ませていただきました。
比嘉:『チェリまほ』(30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい)のエンディング・テーマ(「Good Love Your Love」)を歌わせていただいたときにBL作品に初めて触れて。それ以来のBLだったんですけど、ふたりの恋を見守りたくなりましたね。
――おふたりが特に好きなキャラクターは?
比嘉:高人ですかね。なんでもできる完璧っぽい感じのキャラクターじゃないですか。准太は天性のもので生きている感じがあるんですけど高人は優しくてクールで「こういう男になりたいな」と憧れます。
杉山:僕は逆に准太が好きですね。才能があって、それを分かった上でその道を選んでいることが凄いですし、影では相当な努力をしているんだろうなと。恋愛の意味でも天才なのかなと思います。「持ってるな」って(笑)。
意識したのはボカロ曲
――主題歌「変わりゆくもの変わらないもの」はどのように制作されたのでしょうか。
比嘉:まずは「作品に寄り添う曲にしたいな」と思っていました。かつDEEP SQUADらしさを出したいよね、って話をしていて。「こういったトラックやテンポ感が良いんじゃないか」と話し合いながら、徐々に制作に移った感じです。
――トラックやテンポ感のお話について、もう少し詳しく教えていただいてもいいですか?
杉山:僕たちとしては「ボカロっぽい曲にしたいよね」って話をしていたんです。ボーカロイドで作った音楽を人間が歌うことによって、普通の歌とは全然違った印象になるじゃないですか。例えばYOASOBIさんやyamaさんもそうだと思うんですけど。「そういう音楽にチャレンジしたいよね」と。だからトラックを聴くとボカロチックなんですよ。
――声に集中して聴いていましたが、確かに転調があったり、音がキラキラしていたり……。
杉山:ボカロ系の曲を歌う方の中には“転調がマスト”という方もいらっしゃって。この曲にも転調がありますが、DEEP SQUADとしては転調の楽曲自体はじめてだったんです。淡々と歌っているようではあるんですけど、転調やサウンド面に注目して聴いていただけるとまた違った音楽に聴こえるんじゃないかなあと。特にトラックがミソだと思います。
――上がってきた曲を聴いたときの印象はいかがでしたか。
杉山:(曲が届いたとき)6人全員で曲を聴いたんですけど、満場一致で「めちゃくちゃ良いね」って。「早くプリプロしてレコーディングしたいね」という話になりました。僕はサビ入りのボーカルのところがすごく好きで「ここを歌いたいな」と思っていました。
――ボカロの曲って「これ人間が歌えるのかな」というような少し現実離れした、クールな雰囲気の曲調が多いとは思うんですが、この曲には温かみや日常の匂いもあって。そこがDEEP SQUADらしさなのかなとも思ったんですがいかがでしょうか。
比嘉:コーラスがあることによって、温かみや広がりが出て。そこでDEEP SQUADらしさを表現できているのかなと思います。あと、それぞれの歌声に個性があって、その個性あってこその歌だなとも感じました。
――DEEP SQUADらしさというのは、他にはどんなところにあると思いますか?
比嘉:6人でのマイクリレーのようなものもそうですし、コーラスもそうですし。あとコーラスグループはメインを歌う人が固定されていることが多いんですが、僕らの場合は“全員が主旋律を歌う”ので決まってないんです。誰がサビを歌うか、Aメロ歌うか、曲によって変わってくるんですよね。今回は亮司の歌声からはじまるんです。そこもDEEP SQUADの面白いところなのかなと思います。
杉山:6人が主メロを歌いあげられるのは大きいなと。盤でリリースするのは今回が初めてなんですが、初回生産限定盤には6人がそれぞれで歌ったバージョンも収録されていて。それを聴いたうえで6人で歌ったものを聴いたとき「この人たちがいないと俺の声は活きないんだな」と改めて感じました。DEEP SQUADは6人のそれぞれの個性があってこそ、一人ひとりが際立つボーカルグループなんだなって。
――今回の曲はあらかじめ、誰がどこを歌うというのは決められていたんですか? それとも制作の中で決めていかれるのでしょうか。
比嘉:レコーディングを何回か重ねて、そこで決めていく感じです。だから最初のころとは歌い分けも全然違って。実際に歌ってみて「ここ、〇〇のほうがいいんじゃない?」「分けたほうがいいかな」って話をしながら決めていきました。録りながらその場で変わることもあります。
杉山:より良いものを作るために変えていきましたね。元々の仮歌のクオリティがすごく高かったんです。その世界観を崩さないようにしようと、気を付けながら歌っていきました。
――言葉一つひとつに表情や色があるというか。例えば<頬に>のところは優しかったり、<残酷で>という言葉は切なかったり。一つひとつの言葉が立っている印象です。
比嘉:この曲はバラードではあるんですけど、ボカロっぽさをイメージしながら作られた曲なので、普通のバラードとは少し違うんですよね。切るところは切ったり、強めに歌ったり。その分言葉も際立っているなと思います。ある意味、セリフに近いかもしれません。もともと作品に出てくるセリフややりとりからインスパイアを受けて書かれた歌詞なので、作品を読んでいる方に刺さる曲になったと思います。
――レコーディングはいかがでしたか?
杉山:僕は冒頭のサビを担当したので、最初から「この楽曲の世界観に引き込めるように」と意識して歌いました。いろいろなアプローチの仕方を考えていて、今の音源の形になるまでに時間が掛かりましたね。いつも事前に3つくらいのアプローチを考えていくんです。今回はセリフっぽく歌ったので「こういうのもありなんだな」と、自分自身の気づきにもなったレコーディングでしたね。新しい自分に出会えたような気がします。
比嘉:僕も事前に、何パターンか考えておくんです。ただレコーディングしてみないと分からない部分があるので、ディレクターに相談しながらイメージを固めていきます。今回は曲自体難しいものだったので、レコーディングも印象深いものになりました。今までやったことのない歌い方にもチャレンジしてみたんです。
例えば、<きっと変わっていかなくちゃダメだ♪>ってところはあえてビブラートしないようしています。バラードを歌うとなったら、ここはいちばんビブラートをかけたいところだと思うんですよね。でもあえてかけずにプツッと切ってる。歌うというよりも、心の叫びに近いというか……作品の世界観を守りたかったので、そういう歌い方にしました。亮司が言ってたように、僕もいろいろ学べたレコーディングでしたね。
――新しい6人に会える曲になりましたね。映画でどういう映像とコラボレーションされるのかが楽しみです。
杉山:めちゃくちゃ楽しみですね。実はこのあと試写会に行かせてもらうんです。
比嘉:楽しみだよね。
――ぜひTwitterに感想をお願いします(笑)。
杉山:はい!(笑)いまティザー映像がアップされていますけど、セリフと一緒に良い感じに流れるので、「良かったなぁ」って。
比嘉:映画館で流れてるところを早く観たいよね。
杉山:うん。スペイン編は漫画で読ませていただいて。フラメンコの練習中、准太との才能の差を実感した高人が、“准太に負けないように”准太の故郷でもあるスペインへ向かうところからはじまるんですが……お互いに思っているからこそすれ違う部分が原作で描かれていたので、そこが特に楽しみです。あと、フラメンコの動きをアニメーションで観たいです!