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「斉藤壮馬が朗読したい河出文庫ベスト5」『第七官界彷徨』レビュー

「斉藤壮馬が朗読したい河出文庫ベスト5」『第七官界彷徨』レビュー|100年前の作品とは思えない新鮮さ! 斉藤さんの感性にもびっくり!

毎年、読書の秋になぞらえ、河出文庫の人気作を書店店頭で紹介する「河出文庫ベスト・オブ・ベスト」。対象作品の中から斉藤壮馬さんが声に出して読みたい本を選定したフェア「斉藤壮馬が朗読したい河出文庫ベスト5」がアニメイトを含め、全国の書店で開催されています。前回の2019年のコラボレーションが大反響を呼び、2021年再び斉藤さんが河出文庫ベスト5を選びました。

斉藤さんといえば読書家で有名ですが、そんな斉藤さんが河出文庫の中で朗読してみたい本を選び、さらにその本の朗読する箇所も自ら選んでいるというまさしく斉藤さんのおすすめ図書です!

カバーデザイン

また、各本を持った斉藤さんの撮り下ろしのグラビアを使用している表紙が新装されたり、斉藤さんの朗読が聴けたりと嬉しいキャンペーンになっています! さらに対象商品を購入することで撮り下ろしのポストカードセットや、フェアPVと朗読音源入りの特製DVDが必ずもらえるという嬉しい特典が盛りだくさん。

アニメイトには実施店に特設コーナーがありますので、表紙の斉藤壮馬さんの一言コメントを見て読んでみたいと思った本を買ってみるのもいいでしょう。

私は斉藤さんの楽曲がとても好きでよく聴かせていただいてます。斉藤さん自身で作詞作曲されている曲はゆったりめからバンド系、可愛い系、かっこいい系と様々な雰囲気がありどれも素敵です。中でも私が注目していたのは独特な歌詞です。日常会話であまり使われない言い回しや、情景が思い浮かぶような詩が多いことが斉藤さんの楽曲の魅力だなと思っています。

そんな素敵な歌詞は、本からも影響を受けているのでないかなと以前から思っていました。
ということで、本記事ではキャンペーンの対象となっている『第七官界彷徨(だいななかんかいほうこう)』をレビューさせていただきます。

また、読後に聞きたくなる斉藤さんの楽曲をご紹介させていただきます。

斉藤さんはどんなことを感じながらこの本を選び、どうして朗読したかったのかなどを想像しながら、おすすめ本で追体験を楽しんでみませんか?

フェア実施店舗と詳細はこちら

『第七官界彷徨』あらすじ

七つめの感覚である第七官

尾崎翠の代表作であり畢生の名作、また乙女的な観点からも様々に語り継がれる傑作『第七官界彷徨』。赤いちぢれ毛の少女・町子がその兄と従兄と3人で暮らす下宿を舞台として、彼女の視点で語られる青年2人の奇妙な個性と行動、また彼女自身の淡い恋など、小さな出来事が重なって進んでゆく小説世界は、読者の不思議な感覚と新しい認識を呼び覚まさずにはいられません。植物の実験、苔の恋、音の狂ったピアノ、分裂心理学など随所にちりばめられたモチーフが奇妙で魅力的な音を奏で、尾崎翠のその唯一無二の言語と空間がひろがる不思議さと面白さ。何よりも、主人公・町子の仕草、行動、思考、そのすべてが切なく愛らしく、この可憐な名作のヒロインにふさわしいたたずまいには共感と哀感を覚える人も多いのではないでしょうか。名久井直子さんの美しい装幀によるハンディな文庫で読めるのも魅力的な本書です。

斉藤壮馬

第七官界彷徨』のレビュー

一言でいうととても不思議なお話でした。物語の日常の中に不思議な時間が流れているなという感覚を味わうことができる作品だなと思いました。そもそも人間の五官(視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚)は理解出来ますが、第六感(霊感など人知を超えた感覚)は体験したことないし、ましてや第七官とはなんだろうと思いつつ読み始めました。

実は今回のラインナップの中で一番最初に読みたいと思ったのがこの本でした。帯に書かれている「論理ではなく、感性で体験して。」と斉藤さんのコメントに惹かれ選びました。私は感性を育てたい。私の言う感性とは、人に自分の気持ちを伝える語彙力や物事を受け取れる容量を大きくしたいことを指します。

言葉を扱うこの仕事を始めて感じるようになったことなのですが、アニメや漫画をもっと多面的に感じて日本語で表現したいと思うようになり、その気持ちを伝えるための言葉を感じれるジャンルの本を求めていました。感受性が豊かになれば表現の幅も自然に広がっていくのではないかと考えたからです。

そしてこの本は新たな感受性の一歩を踏み出すきっかけをくれました。本自体は100年以上前に書かれている作品ですし、中にも昔の言葉が散りばめられています。にも関わらず、新しい表現に出会わせてくれるのがこの小説の素敵なところです。

おすすめポイント①映像が思い浮かんでしまうほどの細かい描写の文章

細か過ぎて映像が思い浮かんでしまうほどの描写の文がこの作品の醍醐味だなと思いました。例えば、124ページから続く栗を皆に持っていく場面では、栗を摘んで食べるだけが文章で書かれているのですが……

「香水によってこやしの臭気を払ったのち二助はあらためて左指をかたみがわりに鼻にあて長いあいだしらべ、漸く眼をひらき、そして栗をつまんだ順序であった。このとき私はまだ皿をおかないでいた。けれど二助はなお蘇から眼をはなさないでうで栗を噛み割ったので、うで栗の中味がすこしばかり二助の歯からこぼれ、そしてノオトに散ったのである」

この文を読むと初めは二助の動作、次に手元、口元、最後に噛み割られた栗の破片と、頭の中で映像がいとも簡単に再生できた自分がいました。しかもこの1部分だけでそこに焦点がグッと絞られ、読み手の頭で想像している目線すら動かされている不思議な感覚が味わえるのが面白いところです。

その他の描写でも五官をフル活用しているような感覚を覚えます。まず目で見て、音を聞き、鼻で嗅ぎ、味を知り、感触を味わえる。しかし、実際に使っているのは、目のみですが本来の感覚を越えた体験ができる。これが第七官なのかもしれませんね。

おすすめポイント②昔の生活の空気感が感じられるのが楽しい

この作品は100年以上前に書かれている作品なので、もちろん現代と生活が違います。戦前の日常が細かに書かれているので、新たに知れる生活様式にも注目すると楽しいですよ。

例えば、ちぢれ毛に当てる「焼鏝(ごて、こて)」ですが、現代の言葉ならヘアアイロンですよね。しかも焼鏝は本来服などのシワを伸ばすものですから、とても髪が痛みそう……と思ってしまいます。

また当時としてはハイカラなタイ、パイプの表現のされ方も面白いです。パイプは「マドロスパイプはおれの想像の三倍にも高価だった」とお金がかかる嗜好品だとわかりますし、まっくろなボヘミアンタイは「ただ先生に嗤われると、何か賑やかなやつを買いたくなるんだ」とファッション上級者のアイテムだと理解できますよね。

おやつからも時代を感じられます。「つるし柿」や「うで栗」、「チョコレエト玉」など現代のお菓子とは違うのも面白いポイントです。また私は食べたことのない浜松の浜納豆が出てくるのですが、「ばかにからいものだね」と会話からわからせてくれるのも読んでいて笑ってしまいます。

さらに、この作品に頻繁に出てくる「こやし(肥料)の臭い」。これがどうやらとても臭いらしいです。それでも「鼻もちならぬ臭気を発散させる」、「いちばん遠い地点にある女中部屋に避難しなければならぬ」、「殊にこやしの臭いが強烈で、こやしの臭いは廊下をななめに横ぎって玄関に流れ、茶の間に流れ、台所をぬけて女中部屋に洩れてくるのだ」などと手紙に書かれている場面があります。私は煮たこやしの臭いは嗅いだことありませんが、それでも臭ってきちゃいそうな熱弁ぶり。

こんな今と違う生活を細かに覗けるのがこの作品の1つの楽しみ方かなと思います。

おすすめポイント③不思議と思いを馳せてしまう作品

私は細かな行動の表現に注目しつつ読み終えました。読み終えて押し寄せてきたのは、斉藤さんのコメントである「論理ではなく、感性で体験して」です。例えるならガムのような作品だなと感じました。自分の中で噛んで飲み込んで消化するのではなく、風味を味わう感じ。理解しきるというよりは、この本の雰囲気や文章の味わいを感じて楽しむ作品なのだなと思いました。

なぜそう思ったかと言いますと、読み始め、途中、終わりでは作品の印象がちょっと変わって、さらにまた戻ってくるのです。読み始めは第七官の詩を書きたい“私”である小野町子の周辺で起きる日常を描きつつ、第七官を探るお話なのかなと思います。しかし、読み進めていくうちに蘇の恋愛や分裂心理の話が出てき、ちょっとした違和感を感じます。それでも日常は流れ、詩が好きな女の子の話で終わるのです。

なんだかぐるりと回って、ループしているような不思議な感覚になる小説です。正直に言うと答えのような明確な事は書かれていないタイプのお話だと思います。第七官や蘇の恋愛、詩人が誰なのか、特定された文の表現はされていません。

すべてが書かれておらず想像の余地を残したお話だからこそ、この小説についてたびたび思い馳せてしまうのです。

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