「斉藤壮馬が朗読したい河出文庫ベスト5」『第七官界彷徨』レビュー|100年前の作品とは思えない新鮮さ! 斉藤さんの感性にもびっくり!
斉藤さんの朗読必聴ポイント! もっと聞きたくなってしまう、柔らかで温かい声
“私”のモノローグから始まる、小説の冒頭。柔らかで綺麗な斉藤さんの声と温かみあるバックミュージックに耳を傾けつつ、情景を想像するのが朗読の醍醐味です。
私は「赤いちぢれ毛を人々にたいへん遠慮に思っていたのである」などから内向的な性格を想像していました。しかし、文字ではなく声が加わることで、想像していたよりも“私”は明るく前向きな子なのだとわかりました。また祖母の言葉で口調が変わるので暖かい雰囲気の中で話していることが伝わります。
これを全て朗読で聞けたなら……と思わずひとりごと。始めの14ページまでなので、また登場人物が出てきてないのです。これは他の登場人物の声も聴きたいなと思ってしまいました。
朗読を聞いてみて“私”が控えめで可愛らしい子であると頭に浮かび、読んでいた時よりも明るい雰囲気が感じられたのでまた本を読み返してみたいなと思います。
聴きたくなってしまう斉藤壮馬さんの楽曲は「キッチン」
そんな『第七官界彷徨』読んで聴きたくなったのは、2020年12月に発売されたアルバム 「in bloom」に収録されている「キッチン」です。
なぜこの曲を選んだかというと、この物語の“私”は炊事係だからです。加えてふわっとした曲調の可愛らしさと「なに食べようとしてたっけ」ともう一度曲初めに戻りそうな曲の終わり方がこの小説に合っているなと思いました。
特に朗読を聞いた後すぐにこの曲が思い浮かびました。この時代、コーラやアボカドはないけれど、読後の不思議さを考えつつこの曲を聴き余韻に浸るのもいいかなと思います。
『第七官界彷徨』読んで、斉藤壮馬さんの朗読を聞いてより「感性で体験して」みよう!
本記事では『第七官界彷徨』をレビューさせていただきました。
私はこれまで本作のような明確な答えがないタイプの小説をほとんど読んだことがありませんでした。それでも文の表現が情景が浮かびやすく町子の日常を感じることができて貴重な経験ができたように感じています。
細かく描写を書くことで感覚も味わえてしまう作品。文字表現の幅の広さを学びました。ここから文章の枠と五官を超えて、100年前の空気を感じ取ることができるからこの小説は新鮮さがあると言われるのだと思います。
この小説を読んで思うことは人それぞれですが、皆さんもぜひ「感性で体験して」みてはいかがでしょうか。