声優・楠木ともり 3rdEP『narrow』インタビュー|これまでの楽曲の主人公が出会う?「narrow」の歌詞から生まれた、新たな流れ
共演作が放送中! 声優の武内駿輔さんとタッグを組んだ「よりみち」が完成
――2曲目が「よりみち」がすごくいい曲でしたが、何と言っても編曲が声優の武内駿輔さんということに驚きました。
楠木:そうなんです。TVアニメ『先輩がうざい後輩の話』で共演している武内さんなんですけど、同世代の人と何かを作るのはずっと夢で。先輩ではあるんですけどそれが実現しました。
――どんなきっかけだったのですか?
楠木:武内さんが「『Forced Shutdown』聴いたよ、いい曲だね」って感想をくださって、「今度曲を作らせてね」って言ってくれたので「お願いしてもいいんだ……」って(笑)。
「よりみち」は最後にできた曲なんですけど、少しチルっぽい感じの曲にしたいと思っていて、アレンジャーさんをどうしようかとなっているときに、武内さんが浮かんだので「編曲をお願いしてもいいですか?」と。
――音楽を作られていることは知っていたのですか?(※武内さんは、ユニット・AMADEUSで、ボーカル、作曲、編曲[トラックメイカー]のJack Westwoodとして活動中)
楠木:「Forced Shutdown」の感想をいただいたときに音楽の話になり、そこで実際に曲を作られていて、楽曲提供もしていることを初めて知りました。
――この曲は、どんなオーダーをしたのですか?
楠木:最初は細かく、こういう楽曲が近いイメージなんですとやり取りをしていたんですけど、デモを上げていただくうちに「これは武内さんに全部任せてしまったほうがいい気がする」と思ったんです。
これまでは自分のこだわりを伝えていたけど、普段、自分がヒップホップやチルミュージックをあまり聴かないので、引き出しがあるわけではなかったんですね。だったら武内さんが思うようにまとめていただいたほうがいいかもしれないと思い、最終的には丸っとお任せさせていただくことになりました。
――これまでの曲も、わりとアレンジャーさんが暴れているようなイメージはありましたけどね(笑)。
楠木:そうですね(笑)。結構自由にやっていただくのが好きなので、その中でも今回はよりお任せした感じになりました。
――この曲も夜道を歩いている情景が浮かびましたが、どんなことをテーマにして書こうと思ったのですか?
楠木:「よりみち」は夜のお散歩中に聴けるような曲というのがありました。今回のEPは冬をテーマにしつつ、温かい歌詞というのもテーマにしていたんです。
ですので自分で自分を褒めてあげるというか、自分で自分の機嫌を取るというのを意識して書いた曲です。「narrow」は客観的な映像が浮かぶ曲なら「よりみち」はより内面的な。情景描写はあまり入れていないか、曖昧にしているんですけど、あくまで自分一人でぐるぐる考えているような曖昧さが出たらいいなと思いながら歌詞を書いていました。
――確かに〈紙吹雪〉と〈赤い道〉は、実際にはない情景でしょうから内面ですよね。
楠木:これはアニメ映画の『パプリカ』のパレードシーンが浮かんでいて。あの作品内では全然明るいシーンではないんですけど、紙吹雪が舞う瞬間ってポジティブな印象があるじゃないですか。
“赤い道”はレッドカーペットです。自分が主役であるという感じも込めたくて、それが一人の帰り道でも、自分的に輝かしければそれでいいかなと思って選びました。
――『パプリカ』、好きですよね(笑)。
楠木:曲を考えているときに急に出てきちゃったんですよ(笑)。歩いていることを考えていたら浮かんでしまい……。
――あと、この歌詞って〈泣きたくなる夜だな〉とありますけど、すごく落ち込んで歩いているわけではないということですよね?
楠木:そうですね。ちょっとした残業帰りとか、何となく疲れたなぁっていうときで、その歌詞も上司に軽く怒られたくらいで重い悲しみではないです。これまで深い悲しみには寄り添ってきたけど、誰しもが抱えている、日常に転がっているようなところに寄り添ったことがなかったので、それもテーマではありました。
――ちょうどお勤めアニメでもある『先輩がうざい後輩の話』も放送していますし、実際そんなシーンもありましたからね。
楠木:まさに第1話の双葉(CV.楠木ともり)ですよね(笑)。
――あとは、2番で急に新しいメロディが入ってくる構成も良かったです。
楠木:曲を作るとき、チル系の曲の構成がどうなっているのか聴いてみたんですけど、この曲は大きくサビ!というのがあるわけではないので、同じメロディをループするより、違うメロディが入ってきたほうがいいなと考えて作ったメロディでした。
――雰囲気が変わるし、ウィスパーのボーカルを重ねているのも印象的で。
楠木:このウィスパーの部分も、武内さんがここで入れたらいいんじゃないかと言ってくださいました。
――男性コーラスの部分もですか?
楠木:これは私がどうしても入れたくて武内さんにお願いしました。めちゃめちゃ歌が上手くて、耳がすごく良い方なので、ニュアンスも合わせてくださって、頼んで良かったです。