すしお×照井順政タッグが生み出すキャラクターアーティストプロジェクト“Cing(シング)”とは? キーマンである照井さんにインタビュー!
歌詞とイラストを見て考察や謎解きをしてもらいたい
ーー出来上がった「アイスクリーム/サイネージ」を聴いて、すしおさんがイラストを起こしたわけですね。その前に打ち合わせはしたのでしょうか?
照井:一度だけリモートで会議をしました。
スタッフ:歌詞がやや難解だったので、発想の元などを伺いたいということで会議をしました。照井さんからもビジョン的なものを伝えていただき、設定にあった街や自分の中に浮かんでいた映像だったり曲を共有しました。危ないイメージのある東京の側面も切り取りつつ、きらびやかなところや悲しいところが渾然一体となった感じや、歌詞をどうしてこういうものにしたのかという説明もしていきました。
ーー照井さんはイラストを見ていかがでしたか?
照井:自分はちょっと意外というか、思っていたよりポップな印象だったのですが、すごくいいなと思いました。こういうポップさがないとしんどいと思ったので、ここからいろいろなことを進めていくのが楽しみになりました。
スタッフ:曲を聴いて描いていただくということだったので、こちらから要望はあまり伝えずに、すしおさんに委ねてみようと思いました。なので上がってきたときは「これで行きましょう! この絵が好きです!」という感じでしたね。
すしおさんのほうで手が回らない資料集めなどはこちらでお手伝いしたのですが、最後まで決まらなかったのはCingの髪型になります。ある日たまたま描いたラフが届いて「この髪型がすごくかわいいです!」と戻したら、すしおさんも最終的にこれが良い気がすると言って決まったという流れはありましたね。
照井:それとスタッフさんは、曲の中での物語で、謎解きや考察をしてほしいということをおっしゃっていたので、そういうところは絵にも入れてくださっているので、深読みができそうな気がします。
スタッフ:小さい小物などを歌詞と照らし合わせて見てみると、面白いことになっているんです。
ーー素晴らしいジャケットイラストになったと思います。ちなみに、お二人はアニメ好きだったりするのですか?
照井:ものすごく詳しくはないですが普通に好きで、『キルラキル』はリアルタイムで追って見ていました。いちばん好きなアニメが『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(第1期)なので、Cingでいただいたコンセプトはその世界観とも重なるので良かったです。
スタッフ:私はずっとプリキュアシリーズが好きなのですが、最近見返したのは『ふしぎの海のナディア』です。改めて見ると、中盤の無人島の展開がすごくて、こんなものを子供の頃見ていたんだ!という気持ちになりました(笑)。久しぶりに見返しても楽しいアニメだなと思いました。
照井:あそこはすごかったですよね。オープニングテーマの「ブルーウォーター」(森川美穂)はすごく好きです。
ーーS Fとかサイバーパンク的なものだと、いかがですか?
スタッフ:アニメではなく映画になるのですが、『トロン:レガシー』やウォシャウスキー姉弟が監督の『クラウド アトラス』が妙に好きなんですよ。後者は、時空を越えた6つの物語があって、6本の映画が進み、それが同時に終わるような映画なのですが、興行的には厳しかったかもしれないですが、自分的にはすごく感動しながら観てしまったんですよね。
ーーこれはここ最近の感覚ですが、難解なものよりもシンプルでわかりやすいものが良いみたいな風潮があるじゃないですか。でも実は難解なものを望まれているようなところもあって。
照井:反動みたいなものはありますよね。今はサブスクが主流で、2~3分の曲でサビ始まりが良い!みたいな感じで、イントロがある曲は聴いてくれないみたいな話もありましたけど、逆にミュージシャン界隈だと、今だから逆に10分の曲を、みたいな感じもある。
ーープログレみたいな。
照井:そうそう。このインスタントな世界に反逆する!みたいな流れは、よく聞きますよね。
ーー流行りって、そうやって繰り返される感じはありますよね。
スタッフ:この企画の最初の打ち合わせでも、その話をした記憶があります。やりたいこととやりたくないものを聞かれたときに、サブスクの影響で3分くらいの曲が主流の時代ですが無理して短くする必要はないですとか、サビ始まりが絶対でなくてもいいですとか。将来的にやりたいことで、組曲的に超長い曲をやりたいという話をしていたので、今のサブスクやプレイリストに乗りやすい傾向はこれだからと、マーケティングしながら作るのはやめようという話はしていました。
ーーそこを狙って作っても……というのもありますしね。
照井:スタッフさんとしては、物語の世界に入ってもらい、考察や謎解きをしてもらいたいというところがあったと思うので、僕は音楽で引き込まないといけないなと。
スタッフ:なので、制限を付けて作りづらくなるくらいならば自由に作ってもらったほうがいいので、6分の曲でもオッケーですと伝えました。
ーーでは最後に、このプロジェクトが気になった方へメッセージをお願いします。
照井:個人的に、ものすごく気合いを入れてやっているプロジェクトです。というのも、自分の性質として、今はあまり音楽を作るのが得意だと思っていなく、どちらかというとある世界観を作ったりするほうが得意だったり楽しかったりするんです。
音楽作家としては、すでに固まっているコンセプトに沿った音楽をお願いされることが普通なんですけど、今回は、基盤こそ作っていただきましたが、世界観を共同で作っていく感覚だったので、最初の段階で呼んでいただけたことで、やりがいを感じています。やはり好きなものだと気合いが入ってしまうし、このプロジェクトは自分の良いところも出せると思っているので、今後も注目していただければと思います。
[取材・文・写真/塚越淳一]
「アイスクリーム/サイネージ」
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Beingグループ内のレーベルasistobeによるキャラクターアーティストプロジェクト『Cing(シング)』
▼第一章:都市の三部作
時は西暦2050年。
かつて六本木と呼ばれていた地区で「失われた記憶=自己存在」の手掛かりを求めて街を散策する”Cing”。
フラッシュバックする記憶の欠片と旋律。
夜から朝へと移り変わる街の中で”Cing”が見つけたものとは……?
▼第一章・第一部「アイスクリーム/サイネージ」
Vocal:Cing
Illustration:すしお
Lyrics & Music & Arrange:照井順政
Director:PUPI
Mixed by:照井淳政
Recording Engineer:鈴木慎也
Mastering:form THE MASTER
Music Label:asistobe
Motion Graphic & Animation:涌井嶺