【映画化決定!】あの日、幕張は「佐賀」になりましたーー MAPPAが手掛ける”アイドルアニメ”界の風雲児『ゾンビランドサガ』の魅力を考察!
『ゾンビランドサガ』の圧倒的“個性”
ストーリーやテーマ以外の要素にも、魅力がたっぷり詰まっている『ゾンビランドサガ』。
最大の特徴であり、魅力は「ゾンビである」ということです。
彼女らが一度死んでいる、という設定がこの作品のドラマやギャグを加速させる装置として大活躍しています。
ゾンビだからこその、切なさと希望
まずはゾンビギャグです。体の部位が飛んでいってしまったり、「ゾンビバレ」(ゾンビだとバレること)を回避するために奮闘するコメディシーンによってテンポよく鑑賞できるようになっています。
そして「アイドルアニメ」の重要なパーツである「キャラクター回」もゾンビ設定によって唯一無二なものになっています。
「キャラクター回(当番回、とも言ったりする)」とは特定のキャラクターにフォーカスした話数のこと。主人公ではないキャラクターのことがよくわかったり、意外な一面が見えたりなど、キャラクターの魅力が引き立ち、それによって作品の魅力が向上する場合が多くなっています。
このキャラクター回が『ゾンビランドサガ』では独特な味わいになっています。例えば、フランシュシュのメンバーであり、幼くして亡くなった天才子役・星川リリィのキャラクター回では、「大好きな父親に再会するも、自分の素性を明かせない」というお話になっています。
マネージャーと子役として、父と子で二人三脚で生きてきた2人。不慮の事故でリリィは死んでしまいます。その後、ゾンビとしてアイドルになったリリィのもとに「自分の子供に似ている」と生前の父親が現れるのです。
もう二度と会うことが許されなかった親子が再会した瞬間でした。しかし、リリィはゾンビ。ゾンビバレするわけにはいかず、せっかく再会した最愛の父親に自分が子供であることを告げることができないのです。
なんという切なさ。
しかし、リリィはゾンビとして父親やファンに喜びを与えるという使命を見つけるのでした。
死んで生き返ったからこその悲しみ、そして希望が描かれるのが『ゾンビランドサガ』のキャラクター回なのです。アニメのキャラクター回はどの作品でも重要ですし、人気の高いエピソードになることが多いですが、本作は「ゾンビ」という設定を生かしてキャラクターを更に深堀り、視聴者がより感情移入できるようになっています。
「フランシュシュ」のハイクオリティな楽曲の数々
基本的に物語1エピソードにつき、毎回1曲披露されるというボリューム。そして、ひとつひとつの曲がハイクオリティであることも『ゾンビランドサガ』の魅力のひとつです。
「フランシュシュ」の楽曲は王道のアイドルソングから、カオスな作品の雰囲気に相応しい激しい楽曲、ジーンと来るようなバラード、ラップバトル、イケイケで熱い不良ロックから夜の山手通りを想起させる妖艶な曲まで、多様なジャンルが存在しています。
歌唱するメンバーは6人で、楽曲のジャンルに合わせてメインのボーカルを変更したり、どの曲でもパートがしっかり別かれていて、それぞれの個性が楽しめるようになっています。
今回は数々の名曲の中でも本作のOPテーマである「徒花ネクロマンシー」をご紹介します。
この曲は『ゾンビランドサガ』第1シリーズのOP曲。実際の声優陣が地上波のTV番組で披露したこともあり、本作を代表する楽曲となっています。
私はこの曲を聞いて衝撃を受けました。
懐かしさを感じさせる昭和特撮・SFアニメ調のイントロにやはりオタクは反応してしまいますよね。出だしのトランペットや口上台詞などは、まるで『サクラ大戦』のテーマ曲である「檄!帝国華撃団」のよう。
しかし、裏のシンセやドラムはしっかりと現代的なサウンドになっており、ただ古臭いだけではない、絶妙なダサかっこよさに溢れています。歌詞もかなり渋い日本語で「ゾンビ」という生と死を超えた存在を表現しています。
そして、メンバーそれぞれの声に個性と役割が存在し、それが合わさって絶妙なハーモニーを奏でています。リーダーであるさくら(CV:本渡楓)の安定感のある歌声はこの曲の骨組みとなっています。
平成センターアイドルだった水野愛(CV:種田梨沙)のクールな声とコーラス等は楽曲に厚みを与えていますし、元No.1花魁・ゆうぎり(CV:衣川里佳)のセクシーで特徴的な歌声も余韻が耳に残ります。
元昭和の伝説アイドル、紺野純子(CV:河瀬茉希)のハスキーがかった力強い声は勢いとかっこよさが伝わりますし、元スケバン(女番長)の二階堂サキ(CV:田野アサミ)はさくらと並んでリードを歌うことが多く、低くて太い歌声に貫禄があります。
そして元天才子役の星川リリィ(CV:田中美海)のハイトーンボイスは曲のポイントで挿入されることにより楽曲がキュッと引き締まります。
これだけ個性的なメンバーが居ながら、それぞれが絶妙にマッチして数々の名曲を歌い上げているのです。名曲は「徒花ネクロマンシー」だけではありません。フランシュシュのライバルグループであるアイアンフリルの楽曲も完成度が高いため、ぜひ自分の推し曲を作っちゃいましょう!