あの名作アニメの劇場版3部作が完結! 『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』公開記念──エウレカ・サーストン役の名塚佳織さん&石井・風花・アネモネ役の小清水亜美さん対談インタビュー!
2人へのディレクションは「言い慣れすぎ」と「言い慣れている感を」!?
──前作の『ANEMONE』から演じるキャラも年齢を重ねたわけですが、演じる時に意識した点や印象的なディレクションはありましたか?
名塚:年齢感に関してのディレクションはほとんどなく、私自身もすんなり入れました。ただ、アイリスと2人で旅を始めた頃によく叱るシーンがあるんですが、私が実際に親になり、アイリスと同じ年くらいの子どもがいることもあって、言い慣れ過ぎているというダメ出しをいただきました。「毎日、言っているような貫禄と説得力があるけど、エウレカは初めて言うから」って(笑)。
エウレカはこの年頃の子と初めて接しているんだったと収録中に気づかされました。私も子どもに「携帯ダメ!」、「ゲーム禁止!」みたいなことを言っていたので、そこに対する抵抗感はなくて。むしろ「わかる! わかる!」と台本を読んでしまっていたので、「確かにそこは違うな」と改めました(笑)。
──あまりにもお母さん過ぎると?
名塚:そうですね。「もうちょっと最初のやり取りはぎこちなくしてください」と言われました。
小清水:私は、エウレカが飲んだくれていた部屋にアネモネが入ってきて会話するシーンで、「大丈夫? 一緒に行こうか?」とちょっと寄り添うようにやったら、「この状況は昨日今日始まった話じゃないんですよ。そういうのを通り越した日常だけど、あきらめきってはいない上での会話が欲しいんです」と言われました。頭ではわかったつもりでしたが、意外とバランスが難しくて。
名塚:逆に言い慣れている感を出さないといけないパターンだね。
小清水:そう。また新しいチャレンジで、まさかエウレカとそんな会話をする日が来るとは(笑)。そのディレクションが印象的で、おもしろかったです。
──エウレカに対しての母性や保護者的なものが求められると(笑)。
小清水:そういう面もありながらも、エウレカがいるからアネモネが頑張れた面もあるので、ここまでみんなを引っ張ってこられたし、いろいろな重圧にも耐えられているんですよね。アネモネにとって、エウレカの存在は支えであり、大きくて。
劇場版3部作を演じて思ったことは、お互いにおばあちゃんになるまで一緒に生活していく未来をどこかで思っていたんじゃないかなと。意識してそう思うのではなく、漠然とイメージできるほどの関係性だった気がします。どちらが一方的に背負わされているのではなく、お互いが寄り添い合うような。
新キャラのアイリスは思春期で思ったことを素直に言うピュアな子。お二人にとって羨ましさも?
──今作に登場する新キャラのアイリスの印象をお聞かせください。
名塚:等身大の少女で、思春期で扱うのが難しいお年頃かなと(笑)。完全に子どもではなく、でも大人でもないところが魅力的ですね。
大人になりたいし、自分は何でもできると思っているけど、大人からすれば、まだ危なかっしいし、支えたり、助けてあげないといけない存在で。演じる遠藤(璃菜)さんもすごく素敵だったので、一緒の収録でも掛け合いするのが楽しかったです。
また私の子どもがアイリスと同じくらいの年齢だったので、我が子を見ている感覚もあって。いい意味で、自分の子どもに対してイライラしたり、愛らしく思ったり、逆に私が接し方で反省してみたりする感覚で収録させてもらいました。
小清水:アネモネ目線で見るアイリスは、どこか自分の子どもの頃と重なるところを感じていた気がします。思ったことを素直に口に出すところはかわいいし、何よりも笑顔にしてあげたいという想いが強かったんじゃないかなと。
自分たちと同じようなつらい想いはさせたくないとか、いろいろな想いが彼女に対して向けられているのかなと思いながら演じていました。
あと個人的にはあの年頃で思ったことを率直に出せることに憧れもあって。私の子どもの頃はしつけが厳しかったんですよね。
「人に迷惑をかけてはいけません」とか「こんな言葉を言ってはいけません」と禁止事項が多かったので、「あれ、素敵だな。いいな」と思っても口に出すことに尻込みしてしまって。「あの時言えばよかったな」と後悔することが結構あったので、いいなって。
名塚:嫌なことはハッキリ嫌だと言うからね。
小清水:嫌だと言えることって素敵だし、子どもの特権じゃない? 子どもの頃にそう言えるっていいなって。
名塚:ふてくされる態度もね。大人になったらなかなかできないし。アイリスは随所にふてくされるんですよね。
──たぶんお二人は子どもの頃からお仕事をされていたからでしょうね。
名塚:そうですね。「こうしてはいけない」と言われながら育ったので(笑)。
小清水:「早く大人になりなさい」と言われ続けてきて。
名塚:家族以外の方たちに対しての態度について厳しくしつけられたので、大人の振りをして歩んできた10代で。
小清水:私たち、頑張っていたよね?
名塚:うん(笑)。だからアイリスがすごく素直に見えるんだろうね。
小清水:裏表がないからピュアなんだよね。
3部作でお互いのキャラへの想いがより深く、かけがえのない存在に
──この3部作でご自身のキャラ以外で好きなキャラを挙げるとすれば?
小清水:難しいですね。でもこの3部作で、エウレカへの想いがすごく変わりました。今までは、自分を捨ててまで大人たちの期待に応えようとしてもできず、デューイにも見捨てられて、「何で私はあの子になれないの?」という嫉妬の対象でしかなくて。
『ANEMONE』でも始まりは彼女への憎しみだったけど、そのうちに放っておけなくなり、親友、そしてかけがえのない存在になっていました。エウレカは特別な存在になってしまったので、もうドミニクを超えてしまったかも(笑)。
名塚:私もそうかも。今作のエウレカは、レントンよりもアネモネに頼ったり、甘えていて。彼女がいるから頑張れているし、そばにいてくれなければきっと闇にどっぷりつかって、きっと取り返しのつかないことになっていたと思うんです。アネモネに救われたし、初めての親友でもあって。
小清水:姉妹みたいな感じもあるよね。
名塚:アネモネはお姉ちゃんみたいなところもあるけど、エウレカも素直に甘えるのには抵抗があるのか、少し背伸びしてみたり。明らかにエウレカのほうが子どもだけど、双子のように対等な立場に立とうとしている部分もあって。そんな態度を出せる相手はアネモネしかいないんじゃないかなと。
お互いにとってかけがえのない存在であり、女同士の友情を超えた強い絆があるのかなという気がします。
──今作ではいろいろな「想い」や「絆」が描かれているように思いました。
名塚:アネモネとエウレカ、エウレカとアイリスだけではなく、ホランドとタルホ、ホランドとデューイなどいろいろな関係性が描かれています。しっかりつながっている絆もあれば、アネモネとエウレカのように危うい絆が交差していて。
アネモネやエウレカはつらい想いをしながらも、自分たちを支えてくれるチームや一緒に戦ってくれるメンバーもいる中で、デューイは孤独だなと。ホランドにも助けを求めず、常に単身で乗り込んでいくからボロボロで。
デューイの立場は、一見私たちの目的を妨害する、排除する対象になってしまうけど、彼がやりたかったことや思い描く未来をのぞいてみると悲しくて。突き詰めるほど、どんどん1人になっていく過程も私たちの日常生活にもリンクしている部分があるのかなと。
1人で思い詰めても決していい結末は生まず、周りの人を頼ることで手を差し伸べてくれることもあるんじゃないかと思うし、他の人を助けることで自分自身が救われる人もいるんじゃないかと。
お互いに頼り合い、助け合うことは生きていく上では大切なことじゃないかと、今作で学んだ気がします。
小清水:「絆」の形もまた1つではなくて、例えばしょっちゅう顔を合わせて仲が良いというものだけではなく、必要な時以外は頻繁に連絡をとらなくても信頼関係は強い場合もあるんですよね。各キャラに共感できる絆を見つけていただけるのでは、と。
またデューイはこんな状況になる前に救ってあげる方法はなかったのかなとも思えて。大きく振り切ってしまう分岐点で、エウレカやアネモネが寄り添うことができたのなら何かできたんじゃないかとも考えてしまうんですよね。
ほんの少し、生まれる時代や出会うタイミングが違うだけで大きく変わるものなんだなと。だから自分の人生の中でも、1つひとつの時間やご縁を大切にしようと改めて思いました。