人気スパイ・アクションシリーズの最新作『キングスマン:ファースト・エージェント』公開記念──吹替版で主役の親子役を演じる小澤征悦さんと梶 裕貴さんにインタビュー!小澤さんが梶さんにした無茶振りとは!?
英国紳士のイメージは「探偵」と「カフスボタン」?
――ちなみにスパイ映画でお好きな作品はありますか?
梶:スパイ映画といったら、やはり『007』シリーズや『ミッション: インポッシブル』シリーズを連想しますね。それまで自分の中でのスパイ映画のイメージは、どこか渋くてノスタルジックな印象があったので、この『キングスマン』シリーズは新鮮でした。
小澤:僕は『ジェイソン・ボーン』シリーズですね。この『キングスマン』シリーズとは真逆のアメリカのスパイ映画です。痛快アクション活劇として純粋に楽しいし、ボーンは人間臭いし、彼の走っているお芝居がすごく好きです。焦っていないように見せているつもりでも焦りが垣間見えるところに緊張感があるので。
――お二人が思う「英国紳士」のイメージとは?
小澤:今回の劇中で英国製の紳士服を着るシーンがあったんですけど、カフスボタンをとめる仕草がアップになっていて。
昨年公開された『007 スペクター』でもボンド役のダニエル・クレイグさんが壮絶な格闘後に立ち上がって最初にしたことがカフスボタンをとめることで。それが英国紳士の典型的な仕草だと思うので、英国紳士のイメージとして最初に浮かんできます。
梶:なるほど、確かに。どんな時でも身なりをきちんと整えられる心の余裕、というか。
小澤:それで自分の気持ちをもう一度締め直す感じで。実は僕もドラマでやったことあって。
梶:カッコいい! でも、すごくイメージわきます。僕は、前作の『キングスマン: ゴールデン・サークル』でスーツを新調するシーンが印象的でした。
あと英国紳士といえば、「探偵」というイメージもありますね。シャーロックホームズとか、ゲームのレイトン教授とか。それぞれの作品の世界観、空気感やテンポ感が、お洒落で優雅で好きですね。登場人物の人間味だったり。それが、この作品にもしっかりと演出されていると思います。
――「キングスマン」は秘密結社ですが、秘密結社と聞いて思い浮かぶものは?
小澤:『必殺仕事人』?
梶:なるほど(笑)。僕は"表向きには活躍できない何らかの理由がある集団"というイメージがあるので…どこかオカルト的な要素を連想してしまいます。善なのか悪なのかは、それぞれの見方や考え方次第だとは思いますが。そのミステリアスな雰囲気に少し憧れる部分もありますね。言ってしまえば、戦隊モノも秘密結社みたいなものだと思いますし。
小澤:国などがバックアップしてくれるわけではないけど、リスクをすべて自分たちで背負いながら人を助けるという印象があります。
梶:そうですね。「キングスマン」も、シンプルにいえばボランティアみたいな存在。平和のために自分たちに何ができるのかを考え、いろいろなものを犠牲にしながらも、勇敢に戦いに望む精神は本当に素晴らしいなと思います。器の大きさを強く感じますね。
小澤さんにとって初の吹き替え&梶さん初の長尺映画の吹き替えをしたことで得たもの
――もしご自身がスパイにならないかと誘われた時のアピールポイントは?
小澤:トークと言うかもしれません。「トークで人を惑わせます」と。
梶:それってすごいスキルですよね。小澤さんにお会いするのは、実はこの取材で2回目なんですが、本当にトークがお上手で。現場の空気を盛り上げてくださいますし、今こうして作品の見どころを話されている時も「なるほどな」といった視点で魅力を伝えられているので。尊敬します。
僕には、特技といえるほど特技はないので…『はじめてのおつかい』のスタッフさんとして、変装して子供を見守ってみたいです。大好きなんですよね、あの番組(笑)。
小澤:工事現場の人とかに変装して「絶対にバレるだろ」と思うけど、意外にバレないんだよね。
梶:そうなんです。変装に応じたお芝居をしながらも、きちんと見守り、フォローもしつつ、カメラマンとしての役割もこなさなくてはいけないし。あ、交通整理もですね。スパイってある種、役者みたいな側面もあるじゃないですか。…まあでも、とにかく番組が好きなので(笑)。
小澤:それはスパイではなく、『はじめてのおつかい』のスタッフだよね。
梶:でも子供たちからしたら、気づかないうちに潜入されている感じじゃないですか?
――それだと世界では活躍できなそうですね。
梶:近所のスパイでいいです(笑)。
――小澤さんが今回吹き替えのお仕事をしてみた感想や今後に活かせるなと思われたことはありますか?
小澤:マイク前であまり動かずに声の芝居をするということで、いろいろ勉強になりました。それが実際に体を使って芝居をする時に活かされるかどうかはこれからだと思います。ただ声のトーンを変えてお芝居してみたことで、今後自分が年齢を重ねた時に役に立つかもしれないなと思いました。
また壮大なアクションシーンがたくさんあるんですけど、アクションをする時には息遣いや声も出るんですよね。作品によっては、アクションシーンは別の方がやるケースもあるとお聞きしましたが、今回は僕がそのままやることになって。
空から落ちるシーンや大男に殴られた時の声もすべて自分でやったので、体を使わずに声だけで表現することの難しさを経験できたこともよかったです。
今後あまり動いていないけど、声だけ激しいという芝居……本当は体にあった声を出さないといけないんですけど(笑)、それもできるかもしれないなと思いました。
――梶さんは今回初の長尺映画の吹き替えを担当されたことで、新たに発見されたことや気づいたことはありましたか?
梶:小澤さんとは逆に、ふだん声のみを使った表現を専門的にやっている分、実際に肉体を使ったお芝居をする際に、どうしても視覚的な動きが小さくなりがちだなと自分で感じていて。声優としての引き出しはもちろんキープしつつ…実際に動ける体を身につけておくことで生まれる表現もあるんだろうなとは感じていたので、今のお話をお聞きして、すごく納得しましたね。
本作では、声を発する上での"空間の大小"を特に意識しました。"静かな屋敷内での少人数の会話"と"銃声と悲鳴が飛び交う戦地でのアクションシーン"では、環境が何もかも違いますからね。自分と相手の関係性…敵なのか味方なのか、周りが開けている場所なのか狭い場所なのか、昼なのか夜なのか。そういった点に関して、いつも以上に気を配りながらお芝居しました。