孤独とは、暴力とは、生きるとは──近藤玲奈が自身に内包してきたテーマを次元が交差する世界観で紡ぐコンセプトアルバム『11次元のLena』インタビュー│聴き手の魂に訴えかける「私だからこそできるもの」
衝撃的な曲からのスタート
──それぞれの曲についてもネタバレしない範囲で教えてください。1曲目は「僕だけが消える世界」。<僕だけが消えちゃう世界 あるいは僕以外が消える世界 どちらを選んだとしても後悔はない>という衝撃的な言葉からはじまります。
近藤:冒頭の歌詞から「どうした!?」って思うくらい衝撃的な内容だと思います。その歌詞は大事なフレーズで、5曲目の「ライカ」でそれを回収します。同じフレーズでも違った変化が見られるんじゃないかなと。この5曲の中で一番ビックリしたのがこの曲です。
──それはサウンド的に?
近藤:そうです。静かに入ってきたので「こっち系なんだ」って思っていたら急にテンポがあがって一瞬ポカンとしてしまって。聴き終わったときに「hisakuniさんすごい。私がまさに求めていた世界」だなと、ものすごくテンションが上りました。
──<さよなら>というセリフがあえて歌詞に入っていないのも考察ポイントですか?
近藤:書いてしまうと変な意味を持たせてしまうからかな。この<さよなら>は「綾波レイのような感じでお願いします」というディレクションを受けました(笑)。
──感情がない感じ?
近藤:そうですね。この曲の主人公は「僕」なんですけど、「僕」はいじめにあっていて先が見えない。そんな怒りや苦しみから虚無になっていて。屋上に駆け上がって死を選択している場面なので、自分にはもうなにもないという感じを<さよなら>に込めました。
──重みのある言葉が続きますね。<「夢は大きく」「他人の気持ちに立って」 そちらサイドはさぞやいい眺めでしょう?>の“そちらサイド”という表現もすごく分かるなって。
近藤:サビの歌詞はちょっと皮肉っぽさも入っていて。誰しも一度は思ったことがあるんじゃないかなって心情も入っています。どの曲もそうなんですけど、歌い方にもかなりこだわっています。私からの発想というよりかはディレクターのMiyazawaさん(Tak Miyazawa)がいろいろなアイデアをくださったんです。
例えばAメロの<孤独の最果てで出会う選択肢にいまだに応えられないままでいる>の“ない”の言い方にもこだわっています。私はもうちょっとつなげ気味で歌っていたんですけど、「1回切って、消えかかる感じで歌ってみてください」って。私が普段やらない歌い方にも挑戦しました。フレーズによっては何回も録っています。
──レコーディングには時間を要したのでは?
近藤:そうですね。こだわって録った分、時間がかかりました。この曲と2曲目の「Erase Me」に関してはプリプロもしているので比較的スムーズではありました。でもプリプロの段階では遠慮していた部分もあったんです。hisakuniさんはリモートで参加されていたんですが、すごく褒めてくださって「こっちまで闇のパワー届きました!」と(笑)。
──あははは。いちばんの誉め言葉。すごく優しい方ですね。
近藤:そうなんです。私がここまで挑戦できたのも皆さんが優しくて、受け入れてくださったからだと思います。「この環境なら遠慮なく自分を出せるな」って安心しました。迎えた本番当日には(自分を)出しまくってしまって(笑)。「練習のときより格段に良くなりました!」と言っていただき、安心しました。
この曲の要になる、ラストの<その場限り 優しさが鼻につく 本性が>のところは最初は滑らかに歌っていて。「1サビと同じように歌ってください」と言われたんですけど、自分から「静かと強めと交互に歌ってみてもいいですか?」と提案したら、Miyazawaさんが「いいですね!」と言ってくださって。楽曲ではそのテイクが使われているのでぜひ聴いてほしいです。
「玲奈」と11次元の「Lena」が葛藤
──MVにもなっている「Erase Me」は激しいドラミングからはじまります。
近藤:衝撃を受けました! 「リズムが難しいぞ!」って。何度も音源を聴きました。特に<憂鬱のトリガー>がかなり難しかったですね。サビのつき跳ねる感じがすごく好きです。
1曲目は「僕」が主人公なんですけど、「Erase Me」は「玲奈」、そして11次元の「Lena」の葛藤の曲で。「玲奈」自身の曲ではあるんですけど……「玲奈」という人物は一見普通の女の子ですが、周りとの差に苦しんで悩んでいて。そこに11次元の「玲奈」の本体の「Lena」が出てきます。
「Lena」は「そんな苦しい思いなんてする必要ないじゃないか」っていう少し上から目線の考えかたの登場人物で、たまに「Lena」が「玲奈」のなかに憑依してきて、じゃあ「自分がこんなにも苦しんでいたのはなぜ? 意味がなかったんだ」って。
──それで私、ワタシというふたつの表記になっているんですね。
近藤:そうなんです。漢字の私が「玲奈」でカタカナが「Lena」なんです。あとこの曲のポイントとして、歌が終わったあとに意味深なサウンドが入っていて……。
──すごく気になっていました。
近藤:hisakuniさんに「どんな意図があるんですか?」って聞いたところ、「海外映画でよくある“続きあるかも”と匂わせるものになっています」ということでした。<銃声が響いた>という歌詞があるんですけど、そこで「玲奈」が「「Lena」を撃って、「玲奈」は一体どうなったのか……気になるところだと思います。それがこのサウンドにつながるのかなと。
──後半のコーラスも気になるところですね。
近藤:ある意味少し不気味な感じがありますよね。
──ところで<「○×@#%^たい」がわめく>のところの表記がぼやかされているのはあえてなんでしょうか?
近藤:あ、確かに! どうなんだろう(笑)。当たり前のように普通に読んでいました(笑)。後日聞いてみます。私も新たな発見ができました。
──実際に曲を聴いて、この言葉の読み方も確かめて欲しいですね。