アニメ
秋アニメ『ブルーピリオド』峯田大夢&花守ゆみり対談インタビュー

秋アニメ『ブルーピリオド』後半の見どころは“八虎の生き様”。矢口八虎役の峯田大夢さん、鮎川龍二役の花守ゆみりさんインタビュー「彼の苦しみの表情を見届けて欲しい」

八虎と龍二、ターニングポイントは「9話、10話」

──最初は犬猿の仲だったふたりの関係性が後半に進むにつれて変化していきます。おふたりが感じるターニングポイントを教えてください。

峯田:もともと八虎と龍二は共通点が10個あるとしたら、9個違うと思うんですよ。1個だけ、根っこの部分が一緒なのかなと思っていて。だからこそ、お互いの状況や心境を確認しあえて、共感できたり、助け合えたりするのかなって。

最初のターニングポイントは龍二が八虎を美術部に誘ったところかなと思います。きっかけは森先輩だったんですけど美術部に招いてくれたのは龍二だったので。美術部に入ったことで、龍二という人間の難しさ、言葉にできないものを八虎が感じ取っていった気がしますね。ほっとけないけど踏み切れない。そんな関係性だったのが、9話、10話で、龍二の懐に飛び込みにいって。

その直前、橋田が八虎に「溺れているときの息苦しさとか海の暗さは溺れた人同士でしか共有できない」と言う場面があるんですが、まさにその通りだなと。その根っこの部分だけはずっとあるんだろうなと思いました。

花守:ユカちゃんの立場から見ても、やっぱり9話、10話がターニングポイントになったのかなと思います。あそこから、八虎に対する捉え方が変わったんじゃないかなと思っていて。ユカちゃんから八虎がなにかを得ることはあったかもしれないんですが……あくまで自分の視界に入るなかで、面白い反応をしてくれる悪友のような、切っても切れない関係性だったと思うんです。

八虎が本当に美術を本格的にはじめたときは「まさかはじめると思わなかった」という感じでしたし。何をしていても、心の中では「関係ないや」って思いながら接しているところがあったのかなと思います。大好きな森先輩という共通点ができて、一緒に行動することはあったけど「高校を卒業したら会うことはないだろうな」って存在だったんじゃないかなって。

でも9話、10話で、踏み越えられはしないけど、一緒に海を見る仲になって。ユカちゃんは頭が良いので自分が孤独であることを分かっているんですよね。他の人にその孤独を強要することはないんですが、逆に自分だけが抱えている孤独だと思っていたら、自分にも理解できない孤独を八虎が持っていて。それを知ることができたから、誰かに助けを求めるのではなく、同じ海を抱える者同士がこうやって生きてるんだ……ということを知られたのが、小田原の海のお話だと思っています。

それまでは「同じ悩みを抱いている存在はきっと世界にはいるんだろうけど、自分の世界には自分しかいない」と思っていて。だから「絶対にお前には理解できないけど、救えるモンなら救ってみなよ」っていう体で、ずっと八虎に突っかかってるんですよ。本当は救って欲しいので。でも、話してみたら「こいつにも孤独があって、そこに自分は踏み込めない」と分かってしまったゆえに、ある意味自分のいちばん恥ずかしい部分をさらけ出すことができたんじゃないかなと個人的には思っています。

さらけ出してもなお理解されることはなくて。でも、知ってて欲しいと。ある意味、エゴではあるんですけど。でもそんなところにユカちゃんの変化を感じました。視界が広くなったんだと思います。

峯田:うんうん。

──八虎の「俺は溺れないよ。溺れないよう泳ぐから」という言葉も印象的でした。

花守:そうなんですよね。個人的には、心の柔らかい部分を突かれた気分になって、吐露してしまう10話より、9話で罵倒するシーンのほうがグッとくるものがありました。ここにいちばん、ユカちゃんの黒いものやエネルギーを詰めこまなきゃいけないって思いながら作っていて。暗唱できるくらい、頭に詰め込もうって思いながら台本を読んでいました。

でも「終わったらこれはすぐに忘れなきゃいけないものだ」という気持ちもありました。試験の前日のような気持ちで一週間を過ごしていましたね(笑)。

峯田:9話のとき、お腹を空かせながら現場にきたもんね。

花守:そうなんです。ごはんが食べられなくて。『ブルーピリオド』をやっているとき、辛い回だと食べ物がお腹に入らないんです(苦笑)。まるで受験前のような感じ。受験って誰もが一度は経験するものだと思うんです。それこそ、私たちも毎クール、受験しているようなものだけど……。

峯田:受験しかないよね(笑)。

花守:うんうん(笑)。例えば大学受験では行きたいところがあって苦しむ人もいれば、どこに行けばいいのか分からなくて苦しむ人もいて。大小、いろいろな色の悩みがあるというのは、この美大受験も同じだと思うんです。藝大に行きたいと決まってるけど、他の子たちは絵が描ければ良かったり、学部を変えてでも何がなんでも藝大に行きたい子もいるわけで。

そういう苦しみを煮詰めたような環境で、ずっと絵を描き続ける予備校があって。キャスト陣も台本を読みながら「今日はこのシーンか……」と思いながら演じられていた方もいらっしゃるんじゃないかなと。

峯田:確かに。

花守:でも逆にそういうシーンって燃えるんです。「絶対やるぞ、作り込むぞ、苦しめるぞ!」って(笑)。その緊張感と苦しみもあって「すごく良いものになるんだろうな」ってアフレコのたびに思っていました。

命がけのアフレコ だからこそ「二度は難しい」

──収録前、収録後、ご自身の中で変化した作品の印象・魅力というのはありましたか?

峯田:漫画とアニメ、技法が変わっただけで、作品の本質は変わらないのかなと思っています。原作は原作の良さがあって、アニメはアニメの印象があって。時間軸などの切り取り方が変わったり、音や声で印象が変わったりすることもあるとは思うんですが、作品全体の印象・魅力は僕自身は変わってないですね。

花守:役者として関わったからだと思うんですけど、漫画を読んでいるときには「共感できる」「逆に苦しい」「面白い!」って思っていた部分があって。きっと漫画を読んでくださっている方もそうだと思うんです。限りなくリアルに近いフィクションというのが、楽しめる秘訣だと思っていて。

共感できる部分が50パーセントくらいだと純粋に楽しめるんですが……その生々しさに、中には目をあてられない方もいらっしゃるんじゃないかなと。実際に「(リアリティがありすぎて)見られない」という美大受験生がいらっしゃると聞いたことがあります。それって作品としてすごいことだなって。

峯田:実際、僕も友だちにも言われたことがあります。

──私のまわりにも藝大受験に苦労した友だちがいるので、そういう話をしますね。

花守:最初は「美大生にも絶対楽しんでもらえる作品だ!」と思っていたんです。でもやればやるほど「こんなに苦しい時間を過ごしていたんだ……! これは見たくなくなるかもしれない」と(笑)。それでも絵が描きたいから、一生この海にいるんだろうなって。

見る側とキャラクターのシンクロ率が高ければ高いほど、本当に苦しい作品なんだなと改めて演じていて思います。これがほんとにリアルになってしまった人たちの苦しみまで含めて作り込まれていて、本当に繊細な作品だなって。私自身も「もう一度同じシーンを演じて」とお願いされても「絶対無理!」と言ってしまうと思います(苦笑)。

──役者側も、命がけでのアフレコだったんですね。

峯田:そのときの感情でしか表現できない作品だよね。

花守:(うなずきながら)だからこそ、楽しんでもらえる、苦しんでもらえる作品になったのかなと思います。

峯田:好きなことっていつでも楽しいわけじゃない。本当にそうだなと思います。

花守:見るのを躊躇してしまうのも、この作品に込められた熱を受け取ってもらえたからなんだろうなって、アニメでも、漫画でも感じてますね。

(C)山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会
おすすめタグ
あわせて読みたい

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2025年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2025年春アニメ一覧 4月放送開始
2025年夏アニメ一覧 7月放送開始
2025冬アニメ何観る
2025冬アニメ最速放送日
2025冬アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング