役者ならではの音楽に気づいた『おれパラ』――羽多野渉さん音楽活動10周年記念連載企画『Wataru’s Music Cafe』Part,1「NOW&NEW」編
複雑で繊細なメロディで歌い入れに5時間。歌詞のイメージはある外国ドラマ?
――カップリング「Heart to Heart」はガラっと雰囲気が変わって、軽快でポップなダンスチューンですね。
羽多野:思い返してみると、1曲目がタイアップの場合は、カップリングの1曲に、2曲分くらい自分がやりたいことを詰めこんでしまうんですよね。「Breakers」がしっとりとした、ピアノの旋律が美しいバラードなので、2曲目はパーティ感や聴いてくれる人に元気を与えられるような楽曲がいいんじゃないかなと思って、コンペを行いましたが、この曲のイントロを聴いた瞬間に即決しました。
そしてデモが上がってきて、フルサイズで聴いたら解析できないくらい複雑で。本筋の旋律を上下ハモで挟みながらも、オクターブの上も下もあるというミルフィーユみたいなのに加えて、急に上に行ってファルセットになったり、下に行ったりして、自分で聴いてもどれが本線なのか、わかりませんでした。
だからこそ、「これはチャレンジしがいがあるぞ」とメラメラ燃えてきました。作詞(岩城さんと共作)・作曲・編曲をしてくださった堤 博明さんとは初めましてでしたが、レコーディングでも優しくアドバイスしていただきました。「全部のパートを自分の声でやりたいんです」とお願いしたら「えっ、いいんですか!」と。
これも10年やってきた中のどこかで気付いたことだと思いますが、僕は主となるメロディを歌う強烈なボーカルという属性ではなく、自分のいろいろな声質が重なって、ハーモニーになった時に魅力の最大値を表現できるのかなと。それに気付いて以来、自分の曲は全パートを自分で歌うことにしましたが、その中でも一番幅が広くて、「3オクターブ出るのは素晴らしいですよ」と堤さんがほめてくれました。
――軽快に聴けるのに、歌う側はかなり緻密にやられていたんですね。
羽多野:かなり繊細なレコーディングだったと思います。僕はおしゃべりなので、3時間くらいレコーディング時間をとってもらうと、1時間半はおしゃべりタイムになってしまうんですよね。(笑)。1時間半あれば、自分の曲もキャラクターソングもだいたいは録れてしまうんですけど、この曲は5時間歌いっぱなしで。おしゃべりを封印してもそれだけかかったということはパート数が多かったのだと思います。
――歌詞も自分の道を進んでいこうよというチアソングにも聴こえるし、「好きなものを集めて」など自分賛歌にも思えて。
羽多野:受け取ってくださる方に好きに解釈していただくのが正解だと思いますが、僕がこの曲を作る上でテーマにしたのが「多様性を認めること」で。Netflixで配信されている『クィア・アイ』という番組は料理や美容、ファッションなど各分野のエキスパートの5人、ファブ5が依頼人を心身ともにキレイに変えていく内容で、依頼人たちは人種問題やLGBT、家族関係など様々な悩みを抱えているけど、今の自分を自分自身が愛してあげることが幸せにつながるんだよという境地にたどり着くんです。
その番組を見ていると毎回、自然と涙が出てきて、音楽でもそういうメッセージを伝えられたらいいなと。「社会人たるものこうでなくてはいけない」とか「男性たるもの」「女性たるもの」みたいな固定概念ではなく、「自分がどうありたいか」や「自分を愛してあげること」を大切にしてほしくて。そして「自分が愛している自分は誰にも否定できないものだから自信を持って自分の好きなものと一緒に生きていきましょう」というメッセージを伝えたいですとお願いしたら、岩城さんがおしゃれで美しい歌詞に綴ってくださって、僕も気持ちよく歌えました。
新曲は自身が出演するアニメ『オリエント』のED曲。声優として出演し、役者冥利に尽きる役に
――11月にシングルをリリースしたばかりなのに、2022年2月に早くも新曲が発売されます。1月から放送されるTVアニメ『オリエント』のED曲ですが、作品の印象をお聞かせください。
羽多野:自分たちが子供の時に読んでいた、少年が仲間たちと冒険していく作品とも少し違って、リアルな描写が多いんですよね。大高(忍)先生の原作のアニメでは『マギ』にも出演させていただきましたが、リアルな社会問題や人間関係をファンタジーの中に落とし込むのが上手で。今の年齢の自分でも引き込まれてしまう、大人の目線で読めるんですよね。特に武蔵と小次郎のやり取りを見ていても、ギャグシーンもあってゲラゲラ笑えるけど、深いところは深くて。
――小雨田 英雄役でも出演されていますね。
羽多野:最初に原作を読んだ時、「すごいキャラが濃いやつきたな。誰がやるんだろう?」と思っていたら、僕だと知らされて(笑)。序盤に出てくるキャラの中では相当クセが強くて、見た目はシュッとしているイケメンで、優しそうな顔だちだけど、それだけじゃなくて。個性的な役で作品に携わることができるのは役者冥利に尽きるので、こういう役を任せていただけて嬉しかったです。
収録の時は、掛け合いをするメンバー、内田雄馬くん(武蔵役)、斉藤壮馬くん(鐘巻小次郎役)、高橋李依ちゃん(服部つぐみ役)と同じスタジオでやりました。収録後に壮馬くんから「羽多野さん、強烈でした。今、取材を受けたら小雨田の話しかできないです」と言われて。「何かしらの爪痕を残せたのならよかったよ」と話したら「爪痕がエグいですよ」と(笑)。楽しみながら、めいっぱいやらせていただいたので、ぜひ見ていただきたいです。
少年たちがどんな色に成長していくのかを見守りながら一緒に冒険していただきたい
――ED曲「ナニイロ」の歌詞の内容を教えてください。
羽多野:『オリエント』の作中では武蔵と小次郎に、仲間が増えていく中での絆や、自分たちが目指すべき道を探していく姿を描いています。とにかく進んでいく、成長していくお話なので、少年たちがどんな色に成長していくのかを見守りながら一緒に冒険していただきたいという想いと、聴いてくださる方への力強いメッセージが歌詞に込められています。
――OP曲みたいな明るさや元気さ、さわやかさがある楽曲ですよね。バラードの「Breakers」からかなりサウンドの高低差があるので、「Heart to Heart」はその間のクッションとして作られたのかなと思ったくらい(笑)。
羽多野:そんなことはないんですけど(笑)、そう思うくらい差が激しいですよね。その差も含めて楽しんでいただけたら。
応援してくださる皆さんも、次はどんな楽曲になるのか、ワクワクしながら待ってくださる方が多いみたいで。これまで自分の声を大幅に加工するようなダンスナンバーがあったり、しっとりしたバラードやロックだったり、いろいろ挑戦させていただいてきました。
実は役者としての自分と通じるものもあって、強すぎる個性は他者にも影響を及ぼしてしまうし、その個性からはずれた役は来なくなってしまうので、固まったイメージを持ってほしくなくて。例えば、今日中性的で繊細な役を演じたら、明日は大柄でがっしりした男性を演じたり、見た目から体格や性格が違う様々な役を表現したいという欲求があるので、「こういう役しかやりたくありません」と言ったことはないですし、音楽に関してもどんな楽曲にも挑戦したいです。そしてこれからも羽多野渉がどんな音楽をお届けするのか、楽しみにしていただけたら嬉しいです。
(Part.2へ続く)
あなたにとって10年あるいは10という数字から連想するものは?
イベント情報
羽多野渉「アーティストデビュー10周年記念LINE LIVE」
日時:12/21(火)20:00~
視聴URL:https://bit.ly/3rWWxqE
10周年の振り返りや新情報もあるかも…?
音楽情報
羽多野 渉「Breakers」
発売中
発売:エイベックス・ピクチャーズ
★アニメイト特典:アーティストブロマイド
※特典は無くなり次第、終了とさせて頂きます。ご了承下さい。
【アーティスト盤(CD+BD) 2,530円(税込)】
【アニメ盤(CD) 1,320円(税込)】
ライブ情報
『Wataru Hatano Live 2022(仮)』
2022年3月13日(日)中野サンプラザ
14:00開場/14:45開演
18:00開場/18:45開演
全席指定9,800円(税込)
◆チケット先行販売中!詳しくは公式サイトをチェック!