「ただいま」。ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2021 "These Days"ファイナル公演レポート「顔を見て、同じ空間でお届けする“一対一”。お歌の世界に、ゆっくり、じっくり、浸っていただけますように」
絶望系アニソンシンガー・ReoNaの久々のライブハウス&ホールツアー「ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2021 "These Days"」。11月22日(月)、中野サンプラザで行われたツアーファイナル。しっとりとした秋雨がこの日を祝福していた。
特筆すべきことはいろいろとあるが、あえて挙げるのならばこの3点。2年振りの全国ツアーのファイナル公演であること、総じて舞台演出が素晴らしかったこと、そして全国ツアーを経てReoNaのお歌とバンドメンバーによるパフォーマンスがまた一段と進化を遂げたことである。筆者は初日の横浜公演も目撃しているが、“These Days"を重ね、それはさらに強度を増していた。
ライブ前・後に繰り返し流れた「These Days」
今回のツアータイトルの"These Days"(直訳すると“最近”や“このごろ”)は、ボン・ジョヴィの楽曲から準えたであろうものだということが、ライブ前・後に繰り返し流されているBGMから想像される。余談だが、ポール・マッカートニーにも「One Of These Days」という曲が、Rudimental にも「These days」という曲があり全部名曲だ。その中でボン・ジョヴィの「These Days」を選んだ理由は、豊かなメロディと、“それでも”生きていくんだという歌詞の内容にあるだろう(検索すると和訳したサイトがいくつか出てくるので、気になった方はぜひ調べて欲しい)。
「These Days」がフェードアウトすると、バンドメンバーの比田井修(ドラム)、二村 学(ベース)、高慶"CO-K"卓史(ギター)、山口隆志(ギター)、荒幡亮平(キーボード/バンマス)、そしてReoNaが独立した高台のステージにゆっくりと登っていく。コツコツ……と歩く音が最後尾の席まで響くような静寂を破ったのは、ReoNaにとって大切なはじまりのうた、神崎エルザの「ピルグリム」の“ReoNa ver.”。サビではミラーボールが明るく、眩しいほどにReoNaを照らす。観客を歓迎するかのように、客席にまっしろな光が注いだのが、次の「forget-me-not」。今ではすっかり”ソードアート・オンライン ファミリー”の一員となった彼女が、はじめてReoNaとしてTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』のエンディングテーマを飾った曲である。“はじめて”が続いたあとに短いMC。
「ようこそ、ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2021 "These Days"中野サンプラザ。こんばんは、ReoNaです。2年振りの全国ツアー。全国6都市を巡って、今日ここがツアーファイナル。ただいま。顔を見て、同じ空間でお届けする“一対一”。最後までお歌の世界に、ゆっくり、じっくり、浸っていただけますように──」
前半はさまざまな作品を彩った主題歌が続いた。3曲目はTVアニメ『シャドーハウス』エンディングテーマ「ないない」を妖しげに微笑みながら歌う。ウッドベースの音色、ガラスや陶器が割れる瞬間を表した様な“パリン”という音の瞬間の演出もカッコいい。
続く「Scar/let」(家庭用ゲーム『ソードアート・オンライン アリシゼーション リコリス』オープニングテーマ)と「ANIMA」(TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』2ndクールのオープニングテーマ)のバンドサウンドと歌声はこのツアーでより一層洗練されたように思う。また、高慶"CO-K"卓史は「ANIMA」のMVやTHE FIRST TAKEに、比田井修と二村学は両曲のレコーディング、荒幡亮平は「Scar/let」のレコーディングに参加しており、このメンバーによる”最新ライブアレンジ”を聴けたことは個人的にも大きな収穫だった。きっと、まだまだ変化を遂げていくのだろう。
「それはあなたのせいじゃない」
「私らしくいたくてもそうあれない。心の中では違うって言ってるのに笑顔で頷いて。自分の心に蓋をしてしまったこと、ありませんか? いつでも本音を話すのには、少しだけ勇気が必要で。分かってもらえなかったらどうしようとか、笑われちゃったらどうしようとか。本当はそんな人だと思ってなかったとか言われてしまったら、いまよりずっと、ずっと深いところに落とされてしまう。そんな優しさや、不器用さや、葛藤が、いつの日がきっと報われて、ありのままの自分でも息ができるようになりますように。そしてそんな、名もなき季節を名もなきお歌で寄り添えますように」
そんな言葉から導かれたのは、傘村トータ(LIVE LAB.)が手掛けた、名もなき絶望を歌った「unknown」。前半はピアノ伴奏でじっくりと、途中からギター・リズム隊の音が加わり壮大に。心を満たすような優しい歌声で<あなたらしく生きられないとしたら それは優しいあなたのせいじゃない>とメッセージを贈った。
「長い、長い歴史を誇る『Fateシリーズ』。私もアニメを観たり、『FGO』をプレイしたりして、作品の世界を楽しんでいます。そんな長い歴史を彩る数々の楽曲から1曲、カバーさせていただいています。ひとつ、そこの路地裏を曲がったら、そこには非現実が広がる世界。日常と隣合わせの非日常。お歌の世界、お楽しみいただけますように」
『Fate/stay night[Realta Nua]』テーマソングであり、毛蟹(LIVE LAB.)がアレンジした「黄金の輝き」でエモーショナルに駆け抜けると“新生・月姫”ブロックへ。主題歌の「生命線」からはじまり、『月姫 -A piece of blue glass moon-』に収録されたそれぞれのテーマ曲「Believer」、「Lost」、「ジュブナイル」と続けさまに披露。激しく飛び交うレーザーや月が映される演出がエモーショナルかつミステリアスなお歌の世界をより盛り立てる。まるで“ここ”には自分とReoNaしかいないかのような、“一対一”の世界に没入した。