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『空色ユーティリティ』斉藤健吾監督インタビュー

『空色ユーティリティ』斉藤健吾監督インタビュー|年齢も学校も違う“3人”の関係性を想像して欲しいーーゆるくてかわいいゴルフアニメが、ここにあります!

“好き”から始まった『空色ユーティリティ』

ーーそれでは作品のお話も。『空色ユーティリティ』で描きたかったテーマはどのようなものでしょうか?

斉藤:ゴルフをしているんだけど、登場する3人のキャラクターの関係性を描きたかったんです。3人は年齢もバラバラで学校も違うんですよ。

先輩と後輩という間柄じゃなくて、「年の離れた友達」。つまり学校っていう小さな社会以外でのコミュニティを描きたかったんです。

僕自身が自転車のコミュニティの人たちと付き合っていて、会社以外での繋がりがあったんですよね。それってすごく大事で。大人になってからできた友達って距離感も良くて、気が楽なんですよね。

だから、自分が生きる社会以外のコミュニティの大事さを描きたかったんです。

ーー確かに大人になるとなかなか友達できないけど、共通の趣味で知り合った人とは不思議なつながりがあると思います。

斉藤:自転車界隈の人たちの年齢とかも聞いたことも無いですし、不思議ですよね。他業種の人には自分の仕事に繋がる質問とかすることも少しはありますけど、一緒に遊んで楽しく過ごせるのはいいですね。

ーーそのお話で言うと、キャラクターが一緒の学校だと「先輩後輩」という関係が強くなりそうです。

斉藤:そうなんです。部活モノにはしたくなかった理由として、ちょっと競技寄りのゴルフになってしまう懸念があったんです。

今までのゴルフの作品って『プロゴルファー猿』とか競技ゴルフの作品が多いと思うんです。でも観てる視聴者はアマチュアゴルファーの方が多いわけで。アマチュアゴルファーだからこその楽しみ方を作品で表現してみたいと思っていました。

ーー作品内でも「指導する」というシーンはありませんでした。競技系の作品になると「こうしなきゃダメだ!」みたいな勝つための指導が入ると思います。

斉藤:そこもゆるく描きたかったんです。僕が両親とゴルフに行く場合は多少ありますが、友人と行くと「教える」なんて無いですからね。

ゴルフの楽しみってスコアだけじゃないんですよ。「玉を上手に打てれば良い」っていう方もいますし、僕なんかはゴルフウェアを着てゴルフに行くっていうのが楽しみだったりします。アマチュアゴルファーならではの楽しみ方ってほんとにたくさんあると思っています。

ーーゴルフウェアでいうと、今回のキャラクターたちはみんなかわいいですよね。

斉藤:今回も時間を決めて制作していたのでその関係もあったんですが、もうちょっとデザイン的に凝りたかったなという思いはあります。4ヶ月ほどで制作したのかな。

ーー普通のアニメだと考えられないようなスピードです。

斉藤:監督の仕事も別にあったので、デザインにも限界まで尽くしたんですが、心残りもありという感じです。

ーーそれでも「ゴルフをやっている人の目線」を感じました。

斉藤:黄色のウェアを着てる遥(CV:天海由梨奈)とかは子供の頃からゴルフをやっててプロゴルファーを目指している設定なので、太ももなど比較的に太く、筋肉質に描いたりしています。日焼けしない様にアームウォーマーをつけたりとか。

ーーなるほど。これはTシャツを着ているんじゃなくて、腕だけのものなんですね。

斉藤:そうなんです。日焼けすると体温が上がってパフォーマンスに影響を及ぼすこともあるので。

ーー面白いですね! デザイン面からも経験者の視点が伝わってきます。他にもゴルフカートに乗って話しているシーンなどを観ると、「きっとゴルフってこういう瞬間が楽しいんだろうな」と思いました。

斉藤:みんなでカートに乗ってプレーの話をしたり、それ以外の雑談をしたりするのもゴルフの楽しみ方になります。歩きながらも話したりするし。

ーーそのあたりはすごく感じていて。1クールの作品になると最初はゴルフのルールを説明するエピソードが入ったりすると思いますが、『空色ユーティリティ』では「ゴルフの楽しい所」にフォーカスされていて、見ている僕も「ゴルフがしてみたい」という気持ちになりました。

斉藤:僕らが最初に打ち合わせしたのが4月で、その直後に色々声をかけてもらって始まった企画なんですけど(笑)、尺も15分ということで構成をどうするのかという話になったんです。

そこで「ゴルフのハウツーを入れるのを止めよう」というのをまず決めました。

やっぱりゴルフのハウツーやルール説明をやってしまったら、典型的な1話のテンプレートになってしまうんです。それはやりたくないということで、ゴルフの説明とか無しで、まずは3人の関係性を見ていただきたいと。なので全体的に説明とか入れていません。

ーーそこは企画の段階で決めていたものだったんですね。

斉藤:そうです。説明とかがなくても見れるような作品になっていれば良いんですけど……!

ーーかなりのスピード感で制作されているので今後の展開も楽しみです。しかし、よくこの速度で作れましたね……。

斉藤:「Yostar Pictures」自体の社風のおかげかもしれません。先日、社長と話す機会があって。今年はどういう企画をするのかみたいな話をしていて、「ゴルフアニメをやってみたいです!」って話をしたら「良いよ! やりなよ!」ってなって。

ーー(爆笑)。

斉藤:そしたらいろんなスタッフが協力してくれたんです。

スタッフ:アニメにしては珍しく斉藤が、今年の4月頃には企画書をしっかり作っていたんです。そして斉藤がTwitterで「ゴルフのアニメやりたい!」って呟いていて。それを見つけたんですけど、その際に「これはウチでやらないと、他のオファーで斉藤さん作っちゃうのでは?」と思って、急いで「やりましょう!」ってDMしました(笑)。

企画書もすごく良かったんですけど、アニメはやはりどうやってビジネスとつなげていくか、という点が重要でそこを考えなければならないんです。なのでその仕組みを考えているうちに斉藤さんがうちの社長に声をかけたら「良いよ!」って(笑)。

僕たちは「えっ!」って(笑)。そこから「予算がおりました!」ということになり、気づいたらここまで来ていました……(笑)。

ーー(笑)。

スタッフ:社長も、「しっかりと仕事として面白いと思って、やりたいことがあるなら会社はそれをバックアップするべきだろう」という事をおっしゃっていて、その勢いのまま制作していったという感じです。

ーーそれはすごすぎます!

斉藤:(笑)。僕もゴルフをやりながら色々リサーチしていて、ゴルフのアニメって近年あまりなかったので挑戦してみたかったんです。

ちょうど僕がゴルフをやりはじめた時期は、松山英樹さんがマスターズ・トーナメント(ゴルフの祭典とも言われるアメリカのトーナメント)で優勝したり、渋野日向子さんが全英女子オープン(ゴルフの4大メジャー大会のひとつ)で優勝していたんですよね。コロナ禍であってもゴルフブームが来ていたような気がしていて。市場規模も大きいのでゴルフもありだなと思ったんです。

スタッフ:通常のアニメだと、セールスになり得るかという調査を進めて少しづつ形にしていく事が多いんですが、本作は完全に斉藤の「好き」から始まっていて。そこがまた魅力になっているのではないかと思います。

ーー言ってしまえば、公式同人アニメのような。

スタッフ:極論、そうですね(笑)。商売の前に「やりたい」が先行しています。

斉藤:やっぱりゴルフ業界の助けになれたら良いなという気持ちがあります。ゴルフ業界自体が若い人たちが少なくなっている部分もやはりあって。

でも「これを観てゴルフを始めよう!」というわけではなく、スポーツや趣味として「ゴルフ」という存在があることを知ってもらう事を大切にしたいと思っています。ゴルフを始めよう! と呼びかけるのは他のコンテンツに任せようと思って(笑)。まずは知ってもらうことが大切かなと思っています。

ーーその感覚はすごくわかります。競技人口を増やすのも大事ですが、それを応援するファンが増えることも大事です。

斉藤:そうなんです。実際にすごく人口も増えていると思います。ゴルフ場の予約もなかなか取れない事が多いんですよ。

ーーゴルフ自体のイメージも随分変わったような印象があります。ゴルフをしない人からするとサラリーマンの接待で使われるようなイメージだったのが、女性ゴルファーの方の活躍で女性が増えたり、ウェアもオシャレになってきていると思います。

斉藤:トレンドもありますがゴルフウェアもおしゃれで面白いですよ。ゴルフ場自体のゴルフウェアに対する許容範囲が広がったこともあると思います。

昔は、襟付きシャツで、シャツインして……という感じで厳格なのがルールだったんです。今はパーカーでゴルフしたりもありますからね。海外なんか行くとTシャツに半パン、サンダルでゴルフする人もいます(笑)。

だから日本はちょっと固い感じがありますね。バブル時代のときはやっぱりお金持ちのスポーツという感じだったんですけど、今では中古でクラブもフルセットで買えたりして、全然そのイメージは無いんですよね。

毎年新しいクラブをメーカーさんが発売してくれるので、型落ちしたものが安く手に入ったりします。

ーーそうなんですね! すごく始めやすそうです。

斉藤:始められると思いますよ。後はひとりで「打ちっぱなし(ゴルフ練習場)」に行けるかどうか。

この作品をきっかけにしてイベントなどを開催して、一緒にそのハードルを越えるお手伝いができたら面白いですよね。初心者応援イベントみたいな! あったら良いなと思うし、やりたいなとも思います。

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