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on BLUE/from REDの裏側|BLってどうやって作られているの?【BL塾】

そもそもBLってどうやって作られているの?多くの読者を惹きつけて止まないon BLUE/from REDの裏側【BL塾】

新レーベル「from RED」オススメ作品紹介

阿部:続いては2020年に新しく創刊されたレーベル「from RED」の作品もご紹介いただきたいと思います。とはいえ、「from RED」をご存じない生徒さんもいらっしゃると思いますので、まずはレーベルのご紹介からお願いします!

鹿:「on BLUE」が自分たちのやり方で11年続けてこれたレーベルなので、もう一つ同じ存在感を出せるくらい輝いた家を建てたいと創刊したのが「from RED」です。

実は「on BLUE」「from RED」にすみわけはなくて、どちらも「BL読者が楽しめるかどうか」だけにこだわってつくっています。作家さんや担当編集の自由な発想からくる「偶然」や「ミラクル」を失いたくないので、コンセプトも決めていません。

一方で「from RED」は電子書籍配信をしているため、1話から引きのある構成にした方が連載開始時点から人気になりやすいとは思っています。ただこれも作家さんごとに描きたい構成は異なるので、必ずしも最初からドラマが動きまくるようなことは必須と思っていません。一つ意識しているのは、単行本としてまとまった時の読み味を大事にしています。

阿部:すみわけしていないのは少し意外でした。「from RED」が創刊された時、ファンタジーや歴史ジャンルの作品が話題になっていたので、そういう作品群を中心に扱っていくのかと思っていたので。

ももんが:創刊当初にたまたまファンタジー作品が多かっただけなんですよ(笑)。たまたま「from RED」で描いていただく作家さんたちがファンタジーだとより映えそうと思い、創刊当初はああいったラインナップになりました。だからファンタジーだけやっていこうとは思っていないですよ!

阿部:今後の展開が楽しみです!

それでは「from RED」の作品紹介もお願いします。先ほどと同じく担当編集から見る先生方の作品の魅力を教えてください。ももんがさんはユノイチカ先生を担当されているそうですね。

ももんが:ユノ先生はすでに二次創作で多数の漫画作品をお描きになっていて、実力を感じていた作家さんですね。オリジナルの作品が描けそう…ということでお話を伺ってみたら、それがあまりにも壮大なスケールの物語=『夜明けの唄(※16)』でした。お話の構想が出た段階で1冊におさまらないなと思ったのですが、先に述べたとおり、同人誌で既に数百ページも描き積み重ねてきたユノ先生なら、描き上げられる十分な実力がある、と感じていました。

商業BL作品としてはデビューコミックスであり新人の枠組みでしたが、最初から通巻のつもりで描いていただいています。恋愛以外の要素も盛り込んだ、ゆっくり進むタイプの物語ですが、この作品がBL漫画ジャンルに新しい流れを起こせたらいいなと思っています!


※16:夜明けの唄

 
ユノイチカ先生の作品。健気に恋する忠犬年下ワンコと、海の化け物と闘う無愛想な巫女子が紡ぐファンタジー・救済ロマンス。


石橋:BL漫画ジャンルの新しい流れ、というのは?

ももんが:『夜明けの唄』は先ほどお話した長尺の物語を重視した作品の先駆になるのではと考えています。本作は読者のみなさんからいただくお褒めの言葉としてよく「BLを超えた」「BLにしておくのがもったいない」といったワードを使ってもらうのですが、それは現状、BLに対する印象が「エロ必須」「恋愛事だけで進むお話」の認知が高いからなのかなと思っていて。

これからは、端的に言えば「エロくないもの」でも「恋愛要素メイン」でなくても、「BL(=男性同士の恋愛が描かれている作品)」にカテゴライズされるような物語の時代が来る気配を感じています。

だからこそ、今後「BL漫画」ジャンルで描かれる作風が広がって、恋愛軸だけではないドラマが盛り込まれた「新世代のBL」がどんどん生まれてほしいし、単純にたくさんの人に読んでもらって楽しんでもらいたいと個人的に思っていて。BLのイメージや認知をもっとアップデートしていく、そんな先駆者として『夜明けの唄』が機能してくれたらいいなと思っています。

石橋:めちゃめちゃ気になる作品だ……!

阿部:それでは、はむはむさんご紹介をお願いします。先ほどもお話に出てきたakabeko先生、あとは汀えいじ先生のご担当をされているとのことですが、いかがでしょう?

はむはむ:先ほど少しご紹介した『落果』の一編として風俗店店長攻めとノンケホスト受けのスピンオフカップリングが収録されているのですが、せっかく風俗店が舞台のお話をakabeko先生に描いていただくなら、性技が巧みな攻めキャラを絶対に描いてもらいたい!と強く思ったことがスタートだったんです(笑)。攻めが「店長」という愛称(?)で親しまれているのは、「落果」では名前すらないモブだったなごりなんですよ。

そこでこのカップリングをメインに据えて作品を展開させていきませんか?と誕生したのが現在大ヒット中の『蜜果(※17)』です。『落果』では短編集だったのもあり切なくちょっと尖ったお話たちを描いていただいたのですが、人気作のカップル続編として必要なボリュームや読み手のハードルも考えてくださり『蜜果』では広いユーザーの方に届くように、ストーリーはあえてライトなときめき感で描いていただいています。ただ、エロについては「自由にやっていただいて大丈夫です!」とお伝えしていて(笑)。キャラのテンションやコンディションにぴったりな、この瞬間このふたりでしか絶対に起こり得ないラブシーンが切り取られているんです。こんなエロ描写や体位は見たことがない…と感動のお声が多く新鮮でした。


※17:蜜果

 
akabeko先生の作品。『落果』のスピンオフ作品。元タチ専ボーイ・現風俗店長とノンケのホストのラブストーリー。


はむはむ:汀先生は商業デビュー前の同人時代にお声がけをした作家さんです。同人時代からすでにすごく人気のあった方で、絶対にお仕事をしたい!と思っていたので、ビッグサイトで開場と同時に長蛇の列に並んで同人誌を買い、その場で読んでいざと思ったものの、列が途切れる気配がまったくなかったのでもう一度長蛇の列に並んでお声がけをするという…。実は汀先生は、海外在住の作家さんなので、「すごく好きなんです…!」と通訳の方に思いを伝えてもらったのですが、興奮して熱々と感想をしゃべってしまい、今思えば編集者を名乗るあやしい人物でしかなかったような(笑)。

それからご一緒した作品が『嫉妬は愛を曇らせる(※18)』です。情緒不安定な攻めと信者体質な受けの機微が、汀先生の描く独特な作り込みすぎない生っぽい表情といいますか、そこにキャラの感情が滲み出してしまったようなリアルさがあって胸に迫るのですが、物語の巧みさ、画力の高さどちらもがハイレベルだと感じています。漫画という複雑な表現手段を使って、汀先生が海外でオリジナルの漫画を描こうと思った意志は本当に素晴らしいと思いますね。


※18:嫉妬は愛を曇らせる

 
汀えいじ先生の作品。自分の才能に限界を感じる音大生と天真爛漫で誰からも愛され、才能を開花させていく後輩の嫉妬と依存を描いた恋物語。


石橋:わ~、どれも気になる作品……。

阿部:選ぶのが大変ですね(笑)。

「on BLUE」「from RED」編集者が語るBLの魅力とは

阿部:最後にみなさんの考えるBLの魅力をお聞かせください!

鹿:私はもともと「目つきが悪いやつはみんな受け!」という単純なギャン受け嗜好くらいしかなかったのですが、BL誌をつくり始めて感じたのは、“BLはほかのジャンルにはないすごく不思議なジャンル”だということです。少女漫画が進化した“少女漫画の輪”に入っている作品もあれば、性的なことをストーリーの軸に置いた“エロティックラブの輪”の作品もある。それがすべてBLという一つのジャンルに入っていて、面白い・萌える作品ならどんなことでも挑戦できるのが私にとってのBLの魅力です。

石橋:“少女漫画の輪”と“エロティックラブの輪”どちらもひとまとめでBLというジャンルってたしかに不思議ですし特殊なジャンルですね。なるほどなぁ。

鹿:また、その中でも私は現実の感性が入り交じりながら、ときめきが生まれる瞬間がすごく好きなんですよ。例えば『25時、赤坂で』は出てくる超人気俳優も後輩俳優も漫画っぽいオーバーリアクションなんかは少なめで、「本当にいそう」な感じがするというか。「仕事で成果を出したい」とか「好きな人の気持ちがわからない」などの感情表現もとても細やか。その丁寧さが作るリアル感だからこそ、「売れたのにまだ安いアパートに住んでる」とか、ちょっとしたことでもときめいてしまうんですよね。

『エトランゼ』も同性愛者であると傷つけられてきた駿が、太陽みたいな救い手である実央と出会った「ハッピーなときめき」を描く一方で、「頑張りすぎたら人は疲れます」ってことで、駿は作中で何年もニートをやっているところが描かれています。恋だけじゃなくて、人間の本質的な部分も描かれているんです。作品の中にある現実性が私たちの過ごす現実社会と繋がっている感じがしますし、だからこそ、駿と実央の言葉に胸を打たれる。そこがこの作品の魅力で、読者の心を掴んでいるのではないかと思っています。

ももんが:私は、BLを読みたい時って「エロを読みたい」「エロとは少しベクトルの違う男性同士の特別な感情が読みたい」という真っ二つの感情を持ち合わせていて。それが一つのジャンルの中で同居していて、どちらの読みごたえも高い!というのが、BLの魅力だと感じます。

異性だったら恋愛に発展しそうなことでも、同性だからすぐに恋愛になるとは限らない…。そんな、同性同士だから抱くモダモダした複雑な感情に強くときめきますね。

阿部:現在連載中の作品で「エロを読みたい時」「男性同士の特別な感情が読みたい時」に読むならコレ!という作品はありますか?

ももんが:「エロを読みたい時」にオススメな、かわいくてエッチで読んでいてワ〜〜!となる物語だと、最近私は志木見ビビ先生を絶賛しています! 志木見先生は『服従と甘噛み(※19)』という主従ケモミミの作品でデビューを飾りました。現在は新たに『からまり片結び(※20)』(2022年2月25日発売予定)という触手が登場するお話を描いています。志木見先生はフェチを楽しむ作品に特化しているので、今後ぜひ読んでもらいたいです。


※19:服従と甘噛み

 
志木見ビビ先生のデビュー作品。小さな町の獣医さんと、満月の日に狼に変身してしまう青年の主従ケモミミ・ラブストーリー。

※20:からまり片結び(連載時タイトル「蔓科の惚れ薬」から改題)

志木見ビビ先生の作品。触手と恋が絡み合う、幼馴染ラブコメディ。


ももんが:「男性同士だからこその恋愛」を楽しむ物語だと、2022年2月にコミックスが発売される丸木戸先生の最新作『僕らのミクロな終末(※21)』をオススメします。残り10日で地球に隕石がぶつかり滅んでしまう世界の中、元カレと再会した主人公がその10日間をどう過ごすか描いた物語です。エロとはまた別次元の、男性同士の特別な感情や強い関係性を追っていくような、ヒューマンドラマ的な要素もある物語なので、こちらもぜひ読んでもらいたいと思います。


※21:僕らのミクロな終末

 
丸木戸マキ先生の作品。残り10日で巨大隕石の衝突により地球が滅亡する状況でつまらない人生を送ってきた男が絶対会いたくなかった人物(元カレ)と再会してしまう終末SF・BL。


石橋:またまた気になる作品が増えてしまった……!

阿部:単行本、絶対に買います!!

はむはむ:私は読者時代から変わらず、どんなときでも没入できるエンタメがBLだと思っています。

BLって男性の最高にカッコいい姿がたくさん見れるんですよ! なので、制作側としては「男が惚れるような男って究極なのでは!?」という感情を抱きながら作品をつくっているところがあります(笑)。作家さんの数だけ魅力的だと思う姿や萌えがあるので、様々な職業や性格の男性の思い思いのカッコいいに萌えさせてもらえることがBLにしかない魅力だと本当に思います。極端な例ですが「王道なスパダリ」だけじゃなくて、「クズなヒモ男」だって誰かにとっては救いになり得る。そんな物語ってBLじゃないと描けない魅力なんじゃないでしょうか。

阿部:攻め厨を豪語するはむはむさんならではの見解ですね! ちなみに「攻めがとにかく魅力的」な作品をぜひオススメいただきたいなと。

はむはむ:紫能了先生の『絶望に啼け(※22)』ですね。発売前に先生がツイートしたお試し読みが「シチューBL」というワードでTwitterトレンドにも入るほどの話題を呼び、発売前重版に次ぐ重版また重版…と異例の対応をしたものの、一時期はどこにも本が売っていないという状態になってしまいました。「攻め×攻め」という攻め同士のカップリングで、スーツを纏ったリーマンたちの様々なカッコいい仕草や、プライドのぶつかり合い、カラダと精神のマウンティングが楽しめる作品なのでオススメです!『悪人の躾方』などもいいですね。


※22:絶望に啼け

 
紫能了先生の作品。失恋に苦しむ上司を部下が慰める、男の因縁と確執を描いた物語。


ももんが:せっかくなので石橋さんと阿部さんのBLの魅力や好きなところも聞きたいです!

石橋:な、なんと……!緊張します。僕ははむはむさんと同じで、男性のカッコいいところが見れるのが魅力だなと現時点では感じています。男性の僕でもカッコいい!と感じるような男らしいキャラクターとまつ毛バサバサのキレイ目なキャラクターが好きなので、それを見れるのは楽しいです。あとは普通に恋愛物語として面白いですね。

とはいえ僕はまだ生徒の身ゆえ、明確な「これが好き」が決まっていない状態なんですよ。模索中なので、今日はいろいろ学びがありました!

ももんが:今度はぜひ「〇〇攻めが好き」とか聞かせてください! ぜひ宿題で…(笑)。

石橋:わかりました! 僕はこうやってみんなに調教されていくんですね……(笑)。

一同:(笑)。

阿部:私はももんがさんと近いのですが、友情・対抗心・尊敬・羨望など、男同士だからこその恋愛以外の感情や関係性が見られることですね。一つのお話の中にいろんな感情・関係性を楽しめるのがBLの最大の魅力だと思っています。

あともう一つは大好きな「黒髪眼鏡」が一番輝くのがBLというジャンルだと思っていて……。

ももんが:面白い!(笑) 「BLに限らず黒髪メガネが好きだが……」ってことですか?

阿部:そうですそうです。黒髪メガネの中でも一番輝いて見えるのが、「ボーイズラブ」というジャンルの「受け」というポジションだと思っているんですよ。そこがBLの魅力ですね(笑)。

鹿:わかる!!!絶対そうだよ!!

ももんが:そんな着眼点もあるんですね……すごくいい意見を聞けました! お二人ともありがとうございます!

阿部:こちらこそ本日はありがとうございました! 非常に勉強になったと同時に、みなさんのBLへの愛を強く感じました。今後も「on BLUE」「from RED」作品を追い続けていきます!

シュークリーム一同:ありがとうございました!

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