この記事をかいた人
- 阿部裕華
- アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター
阿部:今回の講義はいかがでしたか?
石橋:去年からずっとBL塾でいろいろ勉強してきましたけど、全く予想がつかない進化を遂げているなと。特に個人的に嬉しかったのは、「ファンタジーBL」の流行ですね。これをキッカケにポロロッカ現象的な感じで、ほかのファンタジー作品に注目が集まったらもっと嬉しいなと思いました! 例えば、ファンタジー系のゲームに触れてみるとか、ファンタジー映画を見てみるとか。
阿部:新しい興味の起点にBLがなり得るということか……面白い!
石橋:そんな感じで新しい趣味の扉を広げてくれるジャンルだから、話題には事欠かない。その話題を追っているだけでも面白いし、「BLは沼である」とようやく分かりました。スッゴイ沼ですよ、これは……(笑)。
阿部:(笑)。石橋さんには、これまでいろんな作品を読んでいただきましたけど、たぶん全部色が違ったと思うんですよ。
石橋:たしかに全部違う! しかも幅広くいろんな作品をオススメしてくれているじゃないですか。雑食でいろんなものを食べさせてもらっているので、抱く感情が毎回違う。「BLって男性同士の恋愛作品でしょ?」と思っている方は侮るなかれ。全部違うぞ!と言いたいですね。「人の数だけドラマがある」ということが如実に反映されているなと思いました。
だから、2022年はさらに衝撃的な出来事が起こるかもしれないなと。
阿部:思いもよらない作品やジャンルが流行るかもしれないとか?
石橋:そうそう。アニメやマンガの業界をひっくり返すようなBL作品が登場するかも。それくらいの土壌ができている気がしました。2021年の総決算、とても勉強になりました!
阿部センセイ、今日の講義はいかがでしたか?
阿部:今のお話と通じますけど、BLって正解のないジャンルだなと思いました。いろんな作品を読んでいますけど、毎回新鮮な気持ちになれるんですよ。BLという枠の中には、あまりにも多くの要素が含まれているなって。
何でもありだからこそ、個人的には「アクション×BL」なんかも増えてほしいなと思っています。今のところあまりないので……。
石橋:面白そう! 少し話しは逸れますけど、「百合」ではアクション作品が増えているんですよ。百合姫で連載されている『セメルパルス(※26)』が、「エロアクション百合」で。
※25:セメルパルス
「百合姫」にて連載中の荻野純先生の漫画作品。異世界からの侵略者”壊獣”による侵攻を食い止めるため、戦いを続ける”防壁師”の一員になるべく訓練の日々を送る新更命乃と親友の永。予想外の襲撃によりそんな日常が奪われてしまう。
阿部:へぇ!
石橋:その背景の一つにはおそらく百合に男性読者が増えたから。とはいえ、女性もアクション作品が好きな方は多いですし、男性キャラクターとアクションは相性がいいですしね。日本の考えるファンタジー世界が舞台のアクション作品とか面白そう!
阿部:そういう作品が出てくるのが楽しみです!
また、もともとは性描写のあるエロの作品が多かった領域なので、それがここまで世の中に浸透するのも驚きで。今回の講義資料をつくるにあたって、すごく特殊なジャンルであると感じました。
石橋:本当にここまで何でもありなジャンルはなかなかないような気がしますね。だからこそ今までにないような作品が生まれていくんだろうな……。本当に今後が楽しみです!
阿部:ですね! ということで、今年もありがとうございました!
石橋:ありがとうございました!
来年もBL塾の企画をいろいろ考えているので、読者のみなさん今後ともよろしくお願いします!
ついに2021年も終わりを迎えようとしています。「BL塾」もみなさんの支えのおかげで無事に連載を続けてこられております。いつもいつもありがとうございます!
さて、読者のみなさんの2021年のBLライフはいかがだったでしょうか? 今年も様々なトピックスが巻き起こったので、なかなか飽きることがなかったように思います。
掘れば掘るほど(深い意味はないです……!)魅力が増していくBL。2022年もどんな作品に出会えるのか楽しみですね!
それではラストはいつものブックレビューをお届けします。年末年始のBL納め&BLはじめにぜひご活用ください!
2022年も読者のみなさんによきBLライフが訪れますように! それではよいお年を〜!
以前、阿部センセイに紹介されてドハマリした『REVERSE』を描いたゆいつ先生の『甘えた獣』。はじめて読む「ギャップ受け」ですが、果たして……?
良い〜〜〜〜〜!!! めっちゃ良いです!!! 果てしなく受けがかわいい!
『甘えたい獣』は警察もの&裏社会ものの『REVERSE』とは違って、大学生の新(あらた、攻め)と高校生の潤太(じゅんた、受け)のピュアなラブストーリーが繰り広げられます。
新は大学生をしながら、年上のお兄さんに甘えたい女性とデートをしたりする「レンタルお兄さん」のバイト(健全なやつ)をやっており、周囲からも好かれるタイプの好青年です。
そんな新のもとに潤太から連絡が……。男性のお相手をするのがはじめての新は、少しドキドキしながらも待ち合わせ場所に向かいます。レンタルお兄さんをお願いするということもあり、ワンコっぽい子を想像していましたが、なんとそこにやってきたのはバイクにまたがりライダースジャケットでキメた強面系イケメン!
新手の恐喝かとも思いましたが、そんな潤太からお願いされたのは「頭をなでてほしい」というお願いなのでした。
か、かわいい……! 潤太かわいすぎるぞ! しかも潤太、そのルックスのせいで不良にからまれたりしがちなのですが、随所にかわいいギャップが潜んでおり、『甘えた獣』を読み進めていくたびに「か、かわええ……」と言ってしまうこと受け合いです。
対する新はわりと正統派な好青年。しかし、潤太との出会いによって少しずつかわいいポイントが見えてくるのでこちらも非常に見ていてニヤけてしまいます。
さらにさらに、二人の友人もイケメン揃いだし、上下巻にわかれていることもあってかエッチシーンも濃密かつ大ボリュームで描かれていまして、イケメンがくんずほぐれつなっているのを見ているのがお好きな方でしたら最高に楽しめる作品になっております。
カラオケ屋で……はじめて行った家で……浴衣姿で……。どうです? 妄想が膨らむでしょう?
おすすめは下巻の小冊子です! 新が学生服を着て潤太と夜の学校に行くというシチュエーションが描かれるのですが……いい、ですよ……!
ぜひ上下巻セットで買ってみてください! おすすめ!
やはり黒髪メガネを手にとってしまいますね……。といっても、今回の『CALL』は少し趣が違った作品です。
フリーターのハルヒコは、どんなバイトも長続きせず、「金が無い」が口癖になっているような、いわゆる“どうしようもない人”です。そんなハルヒコは友人から“ウリ専は儲かる”という話を聞き、興味本位で立ち寄った風俗店の前で店員と間違われ、中年サラリーマンのアキヤマに声をかけられます。
これはチャンス!と思い、店員のフリをしてアキヤマとのデートを重ねるハルヒコ。アキヤマはお金は持っているようですが、平日の昼間からハルヒコと会ったり、服にはこだわりがない感じだし、どこか無気力なところがあったりと、なにか訳ありな様子。
ハルヒコからしてみればアキヤマの人となりなどはどうでもよく、軽いデートくらいで大金がもらえるならラッキー。
しかし、デートを重ねるたびにアキヤマのことが気になり始めてしまい、デートの内容もエスカレートしていくのでした……。
といった感じで、少し社会の闇のようなものが垣間見える『CALL』。単純に面白いと言うのとはちょっと違うような作品ではありますが、とても考えさせられる内容な上に、ラストはしっかりと着地しているので、モヤモヤしながらも読者的にひとつ答えを見つけられる作品になっているんじゃないかなと思います。
これはなんと形容したら良いのか……。僕も未だに判断に迷っている作品です。2度3度と読むことでこの答えは見つかるのでしょうか。
逆に言えば、BLだからこそ生まれるドラマを上手く描いた作品であることは間違いありません。あなたも僕と一緒にこのモヤモヤを解決してみませんか?
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。