アニメ『ムント』シリーズイッキ見上映会・舞台挨拶レポート|日高ユメミ役の相沢舞さん、ムント役の小野大輔さん、グリドリ役の白石稔さん、音響監督の鶴岡陽太氏が明かした当時のアフレコのエピソードとは?
『ムント』シリーズは2003年に京都アニメーションのOVAとして誕生したアニメ作品です。その後2009年にTVアニメ『空を見上げる少女の瞳に映る世界』、劇場版『天上人とアクト人最後の戦い』が公開されました。
2021年12月22日(水)にBlu-ray BOXが発売されたのを記念して、2022年1月23日(日)にアニメ『ムント』シリーズイッキ見上映会が新宿ピカデリーにて行われました。舞台挨拶には日高ユメミ役の相沢舞さん、ムント役の小野大輔さん、音響監督の鶴岡陽太氏が登壇し、MCはグリドリ役の白石稔さんが担当しました。
当時のアフレコやイベントのエピソードなどをファンとともに振り返った舞台挨拶の模様をお届けします。
にぎやかなアフレコ現場、当時の思い出は面白いアドリブ!
最初の挨拶では相沢さんは「日高ユメミ役ですと名乗れることが本当に幸せです」、小野さん「皆さんと同じ気持ちで楽しんでいきたいと思います」、鶴岡氏「映画の意義とか意味とかを述べたいと思います」と話しました。
『ムント』シリーズのイベントで今回の4名が登壇するのは初めて。『ムント』の歴史を振り返りながら話を司会の白石さんが進めます。
小野さん、白石さん、高橋伸也さん(高森カズヤ役)はほぼ同い年で、現場で盛り上がっていたことを振り返ります。鶴岡さんは意識的に集めたわけではないけれど、自然と同世代が集まっていたと語りました。
相沢さんは堀川千華さん(小野イチコ役)と今野宏美さん(今村スズメ役)の3人といつも一緒にいたことを振り返りました。また相沢さんはキャスト陣がアドリブなどで笑いを取りにいっていたことが印象的だと話し、白石さんは思い出して大爆笑。特に稲田徹さん(ガス役)がアフレコ時に笑わせていたようで、小野さんはかっこいいガス役と稲田さんの笑わせていた行動のギャップに当時驚いたとコメントしました。
ユメミが遊園地にておにぎりを食べないシーンでは、堀川さんからおにぎりを食べてと言われていたと話す相沢さん。思い起こして相沢さんは「すごく楽しいアフレコでした」と話しました。女性3人のほんわかとした雰囲気がすごく好きでしたと小野さんは言います。
さらに遊園地のシーンで小野さんが実はもんたろうの声を担当していたという意外な裏話も飛び出しました。
アフレコ現場に絵がしっかりと完成していること、主で話していないキャラクターも動いていることに4名は改めて京都アニメーションの凄さを語ります。鶴岡氏はとにかく描かれていることを細かく拾っていたと話しました。
ひょうきんな高橋さんに高森カズヤ役を担当させるキャスティングがすごいと語る小野さん。しかし鶴岡氏はアフレコ当時、高橋さんはひょうきんではなかった、徐々に変化したのだと話します。
鶴岡氏は小野さんのムントの1人語りが約1.5倍速でも尺に入りきらなかった思い出も話しました。さらに小野さんは当時、鶴岡氏に「(王として)背負って立て」と言われ悩んでいたことを明かします。1人語り以外の場面では(王として)もっと引いていいんだ(余裕を持って良い)とわかったようです。一方当時の相沢さんに鶴岡氏は「フレッシュに」と言っていました。
TVアニメシリーズから劇場版へ、長い台詞はより長くなり…
鶴岡氏は木上益治監督のほとばしる熱量が作品に入りきらないことが苦戦したことを明かします。TVアニメシリーズで収まらなかった台詞を劇場版に修正してもらうよう木上監督に交渉した鶴岡氏。交渉の過程の話を聞き、小野さんは「もっと長くなった」と言いました。一方、相沢さんは人生を語るシーンなどはなかったので、他キャストよりも台詞は長くなく、「受けていた(会話の受け身であった)」と話します。
戦闘シーンの音の複雑さを白石さんが話すと、鶴岡氏はTVアニメシリーズよりも劇場版の方の手数が増えていることを明かします。
そして思い悩む日高のキャラクターが好きだと話す相沢さん。相沢さんは自分と日高と似ているため演じているのかがわからなくなって、客観視できず不思議な感覚だったと振り返ります。小野さんも「ユメミ感あるもん」と同感していました。
修学旅行のような京都の舞台挨拶と当時の初々しいラジオトーク
『ムント』Blu-ray BOXの特典に収録されている2019年に京都で行われた再上映舞台挨拶とWEBラジオの思い出も振り返りました。白石さんと小野さんは若本さんがご機嫌だったのが印象的だと話しました。さらに若本さんがもっと男前にグンタールを描いてくれと言っていたことを白石さんが明かしました。
京都イベントを振り返り、「楽しかったね、修学旅行みたいだった」と話す小野さんに一同共感します。ユメミの雰囲気とマッチした雨が降る中、伏見稲荷へ行った思い出などを語りました。「青春だった」と振り返りました。
DVDに収録されている京都イベントの様子を見た白石さんは若いと驚いていました。
相沢さん、白石さん、内田彩さん(日高チカラ役)で行っていたラジオ。相沢さんはラジオの内容を忘れていたので改めて聞いて驚いたことはノーカットで収録されていたことだと話します。白石さんは若い時のラジオは恥ずかしいと照れていました。
木上監督がラジオで話しているところが聞けることに感動したと語る小野さん。さらに鶴岡氏は口数の少ない木上監督の表情でニュアンスを拾っていたことを明かしました。木上監督は語りたいことをたくさん持っていたことを知る鶴岡氏。小野さんは「語らない人だけど全部仕事でみせてくれる人だった」と木上監督の印象を話しました。
白石さんが感じる木上監督らしさは2カットが流れたまま台詞の区切りがないという構成。しかし台詞終わりが合わず白石さんは難しさを感じていたようです。
今見ても京アニの最新作と感じられる、手書きで描いているとは思えない作画の出来栄えに登壇者一同は感動していました。
『ムント』シリーズの資料集の発売決定!
2022年6月10日(ムント)に『ムント』シリーズの資料集が発売されることを発表しました。『ムント』Blu-ray BOXの特典に入りきらなかった初期設定なども盛り込まれている資料集です。
そこでムントキャット(猫のムント)のデザインなどが紹介され、小野さんが「ムントではない、ムント様だにゃ」とムントの声で当てました。すると相沢さんはムントキャットで出てきてくれたら「もうちょっと友好的な態度……」になれていたと話し、一同笑い和やかな雰囲気でした。
最後のご挨拶
鶴岡氏は当時の映画がフィルムからデジタルに変化する時期だったことや3年前にデジタル版が完成したことを話します。「(劇場版は)京都アニメーションの原点として非常に意味のあるものなのでぜひご堪能いただければと思います」と語りました。
小野さんはまた作品を見てもらえることへの感謝を伝え、コロナ禍の状況で観ることの意味を話します。ムントと日高が「未来」という言葉をたくさん投げかけ未来へ進んでいく力を与えてくれる、希望溢れる宝物のような作品とコメント。「皆さんにとっても(希望溢れる)宝物のような作品になってくれたら嬉しいです」と語りました。
相沢さんは劇場版をみかえし、時を超えて木上監督の心をすごく感じたと語ります。「木上監督の伝えたかったもの、唯一無二の思いみたいなものってこれからもずっと生き続けるんだな」と思ったことを話しました。また音の迫力もすごいので楽しんでくださいとコメントされました。
そして暖かい拍手の中、舞台挨拶は終了しました。
【文/杉村美奈】
『ムント』シリーズ Blu-ray BOX 商品情報
2021年12月22日(水)リリース
Blu-ray BOX:30,800円(税込)
発売元:京都アニメーション
販売元:松竹
収録内容
◆DISC①
【本編】『空を見上げる少女の瞳に映る世界』(1話~5話)
【特典】
・OP絵コンテギャラリー※初収録
・DVD発売時CM
・デジタルギャラリー
・第1話~第5話オーディオコメンタリー
◆DISC②
【本編】『空を見上げる少女の瞳に映る世界』(6話~9話)
【特典】
・WEBラジオセレクション※初収録
・第6話~第9話オーディオコメンタリー
◆DISC③
【本編】『天上人とアクト人 最後の戦い』
【特典】
・劇場用予告、上映時TV-CM
・2019年再上映時予告映像
・舞台挨拶映像
・ドラマCD
・劇場版オーディオコメンタリー
外装特典
・新規描き下ろし三方背ボックス
封入特典
・復刻&新規ブックレット
・特製原画ブック
作品情報
スタッフ
企画:八田陽子
シリーズ構成・脚本:木上益治とユメミる仲間たち
チーフプロデューサー:安田 猛
プロデューサー:八田英明・伊藤 敦
監督:木上益治
キャラクターデザイン・作画監督:荒谷朋恵
美術・ボード:田村せいき
設定:髙橋博行
色彩設計:高木理恵
撮影監督:中上竜太
編集:重村建吾
音響監督:鶴岡陽太
音響制作:楽音舎
音楽:神前 暁・monaca
音楽プロデューサー:斎藤 滋
音楽制作:ランティス
アニメーション制作:京都アニメーション
製作協力:角川書店・角川メディアハウス・クロックワークス
製作:京都アニメーション
キャスト
日高ユメミ:相沢舞
ムント:小野大輔
小野イチコ:堀川千華
今村スズメ:今野宏美
高森カズヤ:高橋伸也
戸部タカシ:水原薫
日高シゲル:平松宏和
日高ノゾミ:井上喜久子
日高チカラ:内田彩
ガス:稲田徹
グンタール:若本規夫
グリドリ:白石稔
リュエリ:田中涼子
トーチェ:松元惠
イリータ:土谷麻貴
ライカ:斎藤楓子
ルイ:遠藤広之