映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』花江夏樹インタビュー|声優を目指していた頃に言われた「絶対無理」で奮起!人生を変えた言葉とは
「ちゃんとしすぎない」を意識 自身の学生時代を掘り起こした演技
――オーディション時から絵が付いた状態だったとお聞きしました。アニメのオーディションですでに絵があるというのはかなり珍しいことだそうですが、絵があった分、感情移入しやすかったのではないでしょうか?
花江:本当に珍しいことで、オーディションで演じる場面以外も最初から全て見せてもらえました。作品全体の流れや雰囲気はバッチリ掴むことができたので、オーディション時からすんなり感情移入して演じることができました。しかし、相当下準備をして丁寧に作られた作品ということも同時に伝わってきたので、その分緊張感も大きかったです。
――オーディションではロウマ役のみ受けたのですか?
花江:いえ。ロウマ、トト、ドロップのメインキャラクターはすべて受けました。3人を演じてみて、自分では「ロウマかな」と思ったので、実際ロウマ役に決まってとても嬉しかったです。
――「ロウマかな」と思った理由はなんだったのですか?
花江:声をあまり作らずに出せるキャラがロウマでした。僕自身が持っている地声のイメージが、ロウマとピッタリ合っているような気がしたんです。地声に近い分、自分がやりたい表現を出せるキャラクターだと感じました。
――オーディションでは絵が表現の手助けとなりましたが、いざ本番のアフレコでは絵があったからこそ難しかった部分もあったのでは?
花江:映像にあまり修正を加えられないと言われたので、口パクを映像通りに合わせなければいけなかったことですね。自分が気持ち良いと思う“間”があったとしても、映像にピッタリ合わせなければいけないというのが、少し気を遣わなければいけないポイントではありました。
――役が決定した際、アフレコに入る前にはどのような準備をされたのでしょうか?
花江:彼らは学生なので、自分が学生時代にどういう風にしゃべってたかを思い出す作業をしました。大人になってもそんなにハキハキしゃべる人ってあまりいないじゃないですか。自分が日常でどんな風に人としゃべってるのかを思い出し、そこに記憶から掘り起こしてきた若さやニュアンスを足して、まずベーシックなところを作りました。そこに細かい喜怒哀楽を付けたしていった感じです。
――今作に限らず、少年役を演じることが多い花江さん。学生時代の思い出は、仕事をする上で必要な要素になっているのですね。
花江:その通りです。声優を目指している人には、学生時代の思い出を大切にしてほしいと伝えたい。人生に1度しかない時間だし、この仕事をしていると何度も学生の役を演じる機会が来るので。ありえない設定を演じることも多いですが、この作品に関しては冒険する中で滝に落ちたり、星を見たりと、自分が経験してきたことと似たシチュエーションがたくさんあったため、演技に反映する作業が楽しかったです。
――監督からはどのようなディレクションがあったのでしょうか?
花江:自身の役作りと共通して、やはり「リアルな日常会話のしゃべり方を心掛けて」ということと、「ちゃんとしすぎない演技で」と言われました。ロウマは人の話を聞いているようで聞いておらず、空返事をすることが多いんです。僕だったら「お前本当にそれ興味あるのか?」と聞き返したくなるくらい(笑)、かなり失礼な態度を取っているんですよ。でも、友達と話している時に違うこと考えたり、携帯をいじったり、別のゲームで遊んだり、仲良いからこそのやり取りってあるじゃないですか。そういう“ちゃんとしない”関係性を意識しました。
――ロウマ自身が抱える悩みや葛藤については、花江さん自身と重なる部分はありましたか?
花江:おそらくこれくらいの年齢の子はみんなあると思うのですが、「これから先、何しようかな~」と将来について不安に思うこともありましたし、人に言われて自分の考えを変えることもたくさんありました。しかし、ロウマは「好きなことをやり続けて良いのかな?」と悩む一方、僕は「好きなことをどんどんやっていこう!」タイプだったので、重なるようで少し考え方は違っているかもしれないです。
声優を目指していた頃の「絶対無理」で奮起
――ドロップの言葉をきっかけに、生き方が一変していくのが本作の醍醐味。花江さんの人生を変えた「言葉」「出来事」があれば教えてください。
花江:う~ん、そんな格言めいたことを言われたことはないのですが、バイトをしている時に「声優になりたいんです」と店長に言ったら、「絶対無理」と返されたことがあって。それにめちゃくちゃムカついて「絶対なってやる!」と思った記憶があります(笑)。
――人生を変えたものでなくとも、花江さんが誰かに言われた言葉で大切にしているものはありますか?
花江:これは色んなインタビューで言っているので知っている人もいるとは思うのですが、20歳になったばかりの頃、同じ事務所に所属していた先輩声優の浪川大輔さんに色々と相談に乗ってもらっていたんです。そこで「30代の役や悪役、マスコットなどもっと幅広い役を演じたいのに、自分と同じような年齢の少年~青年役しか受からない」と相談した時、浪川さんは「俺が高校生役をやっても実際の年齢と離れすぎていて、どんなに技術があったとしてもリアリティーでは君に勝てない。色々な役を演じたいなら、今君ができる等身大の演技という強みを活かしなさい」と言ってくれました。それが自分の中ですごくしっくり来て、今でも大切にしています。
――この作品に出演して、またロウマを演じてみて、何か影響を受けたことがあれば教えてください。
花江:歳を重ねる度、積極的に行動するということをしなくなったなと気が付きました。ロウマ、トト、ドロップのように、冒険に繰り出すといったパワーある行動が大事だなと、作品を通じて実感しましたね。また、そういうバカをできる友達はかけがえのないもので。自分にそんな存在がいること自体ステキなことなんだと改めて思いました。
――最後に、公開を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
花江:ロウマの印象が、最初と最後でまったく違うものになると思います。精神的に大きく成長していく様子に、ぜひ注目していただきたいですね。また、かなりのこだわりを持って映像が作られていて、僕はすでにパソコンで観たのですが、早く大画面で観たくなりました。観たすべての方の共感を得られる内容になっていると思いますので、ぜひ幅広い世代の方に観に来ていただきたいです。
――ありがとうございました!
オリジナル劇場アニメーション『グッバイ、ドン・グリーズ!』作品情報
2022年2月18日 全国ロードショー
イントロダクション
その感動は世界へ――。
日本を飛び越え、世界中で絶賛された大ヒット作『宇宙よりも遠い場所』を手掛けたいしづかあつことMADHOUSEによる劇場アニメーション『グッバイ、ドン・グリーズ!』の公開が決定した。
本作で描かれるのは、少年たちの奇跡のような出逢いの物語。本作の舞台もまた南極大陸を目指した『宇宙よりも遠い場所』と同じく日本だけにとどまらない。いつもと違う夏休みから始まる冒険の果てに、少年たちがたどり着くのは、炎と氷の国・アイスランド。自らを見つめ、世界を超えて、少年たちが手にしたものとは……。
2022年、あなたの“LIFE(生き方)”を変える新たなアニメーションが誕生する。
あらすじ
東京から少し離れた田舎町に暮らす少年・ロウマ。周囲と上手く馴染むことができないロウマは、同じように浮いた存在であったトトと二人だけのチーム“ドン・グリーズ”を結成する。
その関係はトトが東京の高校に進学して、離れ離れになっても変わらないはずだった。
「ねえ、世界を見下ろしてみたいと思わない?」
高校1年生の夏休み。それは新たに“ドン・グリーズ”に加わったドロップの何気ない一言から始まった。
ドロップの言葉にのせられた結果、山火事の犯人に仕立て上げられてしまったロウマたちは、無実の証拠を求めて、空の彼方へと消えていったドローンを探しに行く羽目に。
ひと夏の小さな冒険は、やがて少年たちの“LIFE”(ルビ:生き方)を一変させる大冒険へと発展していく。
キャスト
花江夏樹
梶裕貴
村瀬歩
花澤香菜
田村淳(ロンドンブーツ1号2号)
指原莉乃
スタッフ
監督・脚本:いしづかあつこ
キャラクターデザイン:吉松孝博
美術監督:岡本綾乃
美術ボード制作協力:山根左帆
美術設定:綱頭瑛子、平澤晃弘
色彩設計:大野春恵
撮影監督:川下裕樹
3D監督:廣住茂徳、今垣佳奈
編集:木村佳史子
音楽:藤澤慶昌
音響監督:明田川仁
音響効果:上野励
アニメーション制作:MADHOUSE
主題歌:「Rock The World」[Alexandros]