『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』山口 晋監督インタビュー|ミニチュアの実写を2Dと合成しているのが注目ポイントの1つ、そしてゲスト声優の香川照之さんに送った手紙とは?
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』が1年の公開延期を経て、遂に3月4日から全国公開!
本作は1985年に公開された『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争』がリメイク&アップデートされています。地球にやってきたピリカ星の大統領のパピを救うため、のび太やドラえもんたちが地球を飛び出して宇宙へ。スケールの大きな物語の中で、友情や勇気の大切さを教えてくれる感動作です。今作では朴 璐美さん、梶 裕貴さん、諏訪部順一さんという豪華声優陣に加え、香川照之さん、松岡茉優さん、ミルクボーイさんなどのゲストも話題になっています。
今作を手掛けるのは山口 晋監督で、これまで長く『ドラえもん』のTVシリーズや映画に携わってきた方で、映画では初の監督を担当されています。そんな山口監督に、『ドラえもん』への想いや今作の見どころなど語っていただきました。
監督は、二度目のアニメ化からの盛り上がりをリアルタイムで体験。監督が欲しかった道具とは?
――『ドラえもん』のアニメ制作に関わる前に、『ドラえもん』のアニメや原作をご覧になっていましたか?
山口 晋監督(以下、山口):小学生時代のすべてと言ってもいいほど、のめり込んでいました。兄がオタクのハシリのような人だったので、その影響もありましたが、F先生(藤子・F・不二雄先生)の原作の魅力にひかれたのが一番だと思います。
僕が小学生の頃、原作が掲載された『コロコロコミック』(小学館刊)が創刊されて、そこからどんどん人気が上がって、1979年に二度目のTVアニメ化、そして翌年から映画化という盛り上がりをリアルタイムで体験していたので、想い入れの深い作品です。
また僕はアニメーターを志すくらいなので、子供の時からよく絵を描いていましたが、小学6年生まではずっとF先生っぽいタッチで描いていたため、中学生になってリアルでカッコいいタッチの絵を描こうと思っても、F先生のタッチが抜けなかったことを覚えています(笑)。
――国民的な作品で、誰でも一度は幼少期に「ドラえもんの道具を1つもらえるとしたら何がいい?」と考えたり、話したことがあるでしょうね。
山口:それは定番ですね(笑)。子供の夢ですよね。
――ちなみに監督が欲しかったドラえもんの道具を教えてください。
山口:基本はやっぱり「タケコプター」や「どこでもドア」ですね。あと今回『のび太の宇宙小戦争 2021』を制作したからではありませんが、「スモールライト」を使い、小さくなって箱庭の中で遊べるというのは憧れましたし、イマジネーションを喚起されました。
僕自身、ごっこ遊びが大好きでしたし、誰でも砂場で地形を作ってジオラマに見立てて遊んだと思うんです。『ドラえもん』の中でもよく『スモールライト』を使ったエピソードが出てきましたし、夢の道具の1つじゃないかなと思います。
『ドラえもん』のアニメ制作に関わり、おもしろさを維持することの難しさと藤子・F・不二雄先生の偉大さを再確認
――そして実際にお仕事で『ドラえもん』に関わることになった時の感想と、関わられてから発見したことや印象が変わった点などあれば教えてください。
山口:当たり前のおもしろさを維持する難しさを実感して、F先生のすごさを再認識しました。またTVアニメやマンガを映画化する際は文法が違うし、マンガのコマをそのまま拡大すればアニメになるわけではないので、違和感なく、原作そのままという印象を感じてもらえるように意識しつつ、アニメならではのプラスアルファを加えるのがアニメのプロとしての自分たちの仕事かなと思いながら制作していました。
――マンガやTVアニメが日常的にあるものだとすれば、劇場版はご褒美やプレゼントのような特別感があって。いつも劇場公開が楽しみでしたが、その期待に毎回応えるのも大変そうですね。
山口:TVシリーズと映画では世界観にも違いがあって、それは一番最初の映画『のび太の恐竜』の白亜紀の恐竜時代を冒険するエピソードを膨らませるところから始まっています。原作のお話でも日常プラスアルファはありますが、最終的に元の世界に帰ってくるというところは変わらないけど、映画では更にもう一歩踏み込んでいます。
ゲームで例えると、レースゲームの背景ですごい山並みや砂浜が見えたりすると「ちょっと道をはみ出して行けたら楽しいのにな」と思ったりするのと同じように、シリーズで描かれていたことを少し拡大して、より一層の楽しさを提供するのが大長編であり、映画なのかなと思っています。