映画『ブルーサーマル』島﨑信長さん&榎木淳弥さんインタビュー|空に魅せられるーー声優ふたりが感じる空のイメージは?
2022年3月4日(金)に公開される映画『ブルーサーマル』。原作は小沢かなによる『ブルーサーマル ―青凪大学体育会航空部―』。青空の下で発生する上昇気流である“ブルーサーマル”。グライダーはこの風をつかまえてより高くへ飛んでいくーー。
グライダーに青春をかけた空に恋をした体育会航空部の大学生たちを描いた本作について、倉持潤役の島﨑信長さん、空知大介の榎木淳弥さんに話を聞いた。
大学での青春が描かれた本作。島﨑さんがやってみたい意外なこととは?
ーー本作は、大学生の青春を描いた作品ですが、原作を読んだ印象を教えてください。また、自分の学生時代を思い出したりはしましたか?
榎木:こんなにきれいな学生生活は送ってこなかったので、理想の大学生活が描かれているなと思いました。僕は剣道部だったので男性のほうが多かったし、あまり爽やかな感じではなかったんですよね。先輩たちと「よーし、飯食いに行くか!」みたいな暑苦しい体育会の雰囲気だったので。
それと、描かれている三角関係も、女性のほうがあまり気にしていないみたいな構図も、ちょっと面白いなと思いました。ただ、全体的に青春がつまっているなと感じました。
島﨑:グライダーとか、体育会航空部とか。そもそもそういう部活動やサークルがあること自体知らなかったんです。本当に主人公のつるたま(※サークルに入った1年生・都留たまきのあだ名)と同じで、鳥人間コンテストくらいの知識しかなかったので、ここにこんなに青春をかけて、精一杯頑張っている人たちがいるんだな!って思いました。
グライダーもエンジンとかで飛ぶのではなく、本当に風の力だけで飛ぶんだとか。その風を捕まえるのに、操縦者の技術や感性が必要で、本当に競技なんだなと思って、すごいと思いました。
あと、一見キラキラした青春とか前向きなものがあるんですけど、原作だと特に、それぞれの登場人物の抱えている事情が重いんですよね。みんながトラウマとか、いろんな重いものを抱えているからこそ、つるたまの前向きさや頑張る姿がより輝くし、よりキラキラしているのかなと思いました。
ーー島﨑さんは学生時代の思い出というと?
島﨑:僕は大学に行ってないので、行ってみたい!って思いました。全部に憧れがあります。高校だと、せいぜい理系か文系かしか選んでいないし、講義を選ぶとか、単位とかコマ数とか、あと代返とかね(笑)。創作物ではよく出てくるけど、実際にしてみたい、代返!みたいな。
榎木:あったね、代返。
島﨑:あれ、良いシステムだよね。助け合いみたいな。
榎木:ホントはダメだけどね(笑)。
島﨑:あと、サークルとかもいいですよね。新入生歓迎コンパ!みたいな。旅行も、高校で友達と行ったりはしたけど、経済力もないし未成年だから、ドラマで見るようなガッツリと海へ行こうよ!とかではないんですよ。だから憧れしかない! しかも、高校も男子校だったからなぁ(笑)。
ーーリアルな合宿所とか、大学の雰囲気は作品で体験できる感じがしますね。では、お互いのキャラクターに対して、どんな印象を持ったのかを伺いたいのですが。
榎木:倉持は天才タイプというか。すごく才能があって優秀でイケメンで、持っていないものはないのではないかというくらいの人なんです。劇中で、空知とつるたまに、お前ら付き合えと言ってみたり、ちょっと変なところもあったりするんですけど、すごく魅力的でモテそうなキャラクターだなと思いました。しかも声が信長くんですから完璧ですよ! もうやばいんじゃないですかね。サークルクラッシャーになるんじゃないかな(笑)。
島﨑:こじれるかもねぇ(笑)。空知は同じ目線で物事を見てくれる人だなと思いました。倉持はミステリアスなところがあって、ちょっと周りの人が見上げがちなんですけど、空知は、(つるたまに対して)最初はツンツンしているところもあったけど、仲が良くなっていくと面倒見が良いだけではなくて、気がつくと同じ目線で同じように話しているんですよ。つるたまと対等にワチャワチャとケンカをしていたりするところは、人としてすごく良いんじゃないかなって思います。
また榎木くんの飾らない真っ直ぐな声が乗ると、余計に彼の真っ直ぐさ、素直さが出てきてかわいいなと思うんですよね。
それに映画を観て勝手に感じたのは、つるたまにとって、空での理解者が倉持で、飛んでいない陸での理解者は空知なのかなってことで。地上にいるときは空知と通じるものがあるけど、つるたまと倉持は空に出た瞬間、2人にしかわからない共有を急にやり出すんです。で、これも勝手な想像ですけど、空知も倉持もお互いの陸での姿、空での姿を見て、どこか一歩引いてしまうというか。自分には……って思っている感じがするんですよねぇ。
榎木:確かにそれはあるかも。
ーー自分はつるたまにふさわしくはない、もしくは合わないのではないか、みたいな感じですかね。今回、映画を観させていただいたのですが、密度がすごく濃くて、しかもぎゅっと内容も詰め込まれている印象だったのですが、それがダイジェストになっていないところが素晴らしかったんです。それは構成の素晴らしさであり、演技や絵のお芝居でそれを埋めてくれていたからだと思うのですが、お芝居をする上でどんなことを大切にしていましたか? 監督からのディレクションなどはありましたか?
榎木:監督は自由にやらせてくれたんですよ。アフレコ前に本読みがあったんですけど、そこでキャラクターをすり合わせたくらいで、メインの3人は、そこから大きな変化はなかったんです。
島﨑:オーディションで選んでいただいた時点で、そこに適合する人を選んでもらえているということもあるんだろうけど、結構倉持のオーディションは難航していたようです。テープをもう一度出すみたいな感じだったので。
榎木:合う人が見つかるまでやっていたんだ。
島﨑:そうそう。
榎木:意識していることは何かあった?
島﨑:これは『ブルーサーマル』に限った話ではないけど、同じ地平にいるというか、同じ世界に生きている人だなって思えることはすごく大事だと思っているので、そういう意味では良いバランスだったんじゃないのかなって思います。
それができる人たちが集まっていたというか。また、(都留たまき役の)堀田真由さんがすごく良くて、僕たちがそこにちゃんと付いていかなきゃっていう。
榎木:確かに。自分がどうというよりは、堀田さんに付いてく感じでした。
島﨑:それが大事だったかもね。
榎木:それぞれに合わせるというか。
島﨑:この座組のみんなで、どうしていくんだろうっていう気持ちをはあった気がします。
ーーつるたまについて紹介をすると、青凪大学航空部に入ってきた1年生で、グライダーに関してはすごく才能があるキャラクターです。彼女を演じる堀田さんのお芝居も魅力的で、つるたまの魅力がグンとアップしている感じがしました。
榎木:もともと映像でやられている方なので、自然さみたいなものは、この作品にすごく合っていると思いました。ご本人は、つるたまとは逆で、おっとりとした方なんですけど、つるたまの芯の強さみたいなものが感じられて、良かったなと思いました。
島﨑:つるたまって、いろんなことがあってもくじけずに前向きに頑張っていく主人公だから、そこがやっぱり良いんですよね。王道というか。観ていてもすごく元気づけられるんです。そうやって観た人が頑張ろうと思えるのはすごく素敵で、それは、堀田さんの、芯の強さや真っ直ぐさがストレートに伝わってくるお芝居があったからで、だからこそ良いものになったんだろうなと思います。