アニメ『ULTRAMAN』SEASON2 神山健治&荒牧伸志監督インタビュー|原作のエッセンスを残しつつ物語を構築するために『ウルトラセブン』から取り入れられたアイディアとは!?
2019年4月より配信されたアニメ『ULTRAMAN』(以下、本作)。本作は、『鉄のラインバレル』で知られる清水栄一さん×下口智裕さんのタッグよる漫画を原作としており、日本が世界に誇る特撮ヒーローである初代『ウルトラマン』の世界観と地続きの物語が描かれます。
本作の続編となる『ULTRAMAN』SEASON2が、2022年4月14日(木)よりNetflix(ネットフリックス)で全世界同時配信となります。
アニメイトタイムズではいよいよ直前に迫った配信開始を前に、本作の監督を務める神山健治&荒牧伸志へのインタビューを行いました。
原作とアニメの変更点についてのアレコレや、本作の魅力のひとつであるフルCGでの制作面についてを中心にファンのみなさんが気になる話題を掘り下げていますので、ぜひともご一読ください。
原作のエッセンスを活かすシナリオ作りと細やかなCG制作へのこだわり
――今回の取材にあたり全6話を先に視聴させていただきました。SEASON1以上に原作コミックからの変更点が明確だった印象なのですが、この意図を教えていただけますか。
荒牧伸志監督(以下、荒牧):SEASON2の制作をスタートさせるにあたり、全6話構成である事と新たなウルトラマンスーツ3体を登場させる事、2つの条件が出ていました。それをこなしつつ物語をある程度は完結させる必要があったので、その条件下でどう原作コミックのエッセンスを入れられるのか考えていきました。
神山健治監督(以下、神山):SEASON1で原作コミックから使わなかった部分に東光太郎編にある程度大きく関わる部分があり、光太郎がどうして超人になるのかというエピソードもそこにベースがありました。ですが制作時の条件である6話でそこをセットアップし直すには限界があり、割愛してしまった部分を使わず光太郎がウルトラマンとなるエピソードを最速で描くにはどうするかを考えました。
そこから、光太郎が逆に帰国してきた形にして舞台を日本に変更したり、原作コミックで使われていた薬の描写を割愛したり。光太郎の事情と巻き込まれる事件の変更については、特撮『ウルトラセブン』に登場するキャラクターであるワイルド星人と、その武器であった生命カメラからアイディアを貰いました。
ただ、炎態になるきっかけはどうしても必要だったので、光太郎の恋人であるイズミや謎のメイドたち(新キャラクターであるワドラン星人の姫・マーヤ等、その仲間たち)が生まれました。
荒牧:原作コミックだと友人を失ったという流れなのですが、尺が限られた中でインパクトが欲しかったんです。
神山:そうやって進次郎たちと敵対するキャラクターたちのドラマも立ってきたので、これで最速で光太郎が炎態になるまでの物語を描けると確信しました。そこにジャックをうまく絡めることで、原作コミックでかなりのエピソードを積み上げた光太郎がウルトラマンスーツを着る部分を一気に駆け抜けられたんじゃないかなと。
――本作はフルCGアニメであることも魅力のひとつだと思いますが、SEASON1から進化させた部分などはあったのでしょうか?
荒牧:具体的に何か新しいことをやった、新しい技術を取り入れた、みたいなことは無かったです。ただ、SEASON1以降何作も同じチームで作品制作を続けているので、もしクオリティが上がったとかSEASON1より見やすくなった部分があるとするなら、トゥーンシェーディングのフルCGアニメーションにおける、見え方の最適化をしてきた結果なんじゃないかな。そういう積み重ねが何かを生んだと思っていただけたら嬉しいです。
神山:CGアニメのどういうところが作画のアニメと比べて嫌なのか、人によってそれぞれあると思うのですが、僕としてはアニメの背景の上に実写のキャラクターが合成されているかのような、人形を動かしているように見えてしまう部分が気になっていました。
荒牧:ケースバイケースではあるのですが、僕らが自分で出来上がった映像を見て、ぎこちないなと思ったり、違和感があるところをつぶしていく作業をしましたね。
神山:僕らが感じるということは、見る人もそう思うだろうなと思ったんです。そこをどうするかと考えた時に、背景の質感とウルトラマンの質感とキャラクターの質感が浮かないようにしていこうと積み重ねをしてきました。技術的な面では試行錯誤が続いているのですが、少しずつそういう部分を改善してくれたと思っています。
SEASON1の頃は正直言うと、爆発のエフェクトとウルトラマンが別の世界にいるようだなっていう部分が少しありました。細かい部分ではあるのですが、粒子感やウルトラマンの質感のテクスチャやエフェクトの細かさ、サイズ感が違っていたり。背景があまりない部分をレンズの被写界深度でとりあえずぼかしていたりもしたのですが、そのせいで逆にその部分が無いことが余計に強調されていたりもして。
CGを作り込む部分ってお金があればあるだけ作れるけれど、逆にお金が限られていると作れるものが決まってしまう。手書きのアニメと違って描き手の汗と涙でクオリティが上がるものではないという難しさがあって、その差を埋めて同じに見えてくるようにするには、何をやっておけばいいのかも見えてきました。
一番はライティングが進化したところが大きいかなと。このおかげでキャラクターと背景の浮き具合がかなり直ったんじゃないかな。
荒牧:ひとつの世界観として成立させられたよね。
神山:それと同時に、この作品の良さのひとつとして特撮っぽい部分、少し実写のように見えても大丈夫な部分があって、そのあたりもさらに上手くチューニングされたはずです。違和感の消し方はひとつではないので、難しいところではあるのですが。