冬アニメ『東京24区』津田尚克(監督)インタビュー|『ループものへのカウンター』や『群像劇』をやってみて、今思うこととは?【連載 第13回】
津田尚克×下倉バイオ(ニトロプラス)×CloverWorksが贈る新作オリジナルアニメ『東京24区』。2022年1月から放送されてきた本作が、先日ついに最終話(第12話)を迎えました。
『東京24区』は、東京湾に浮かぶ人工島「極東法令外特別地区」――通称“24区”を舞台に、蒼生シュウタ、朱城ラン、翠堂コウキ、まとめて“RGB”と呼ばれる3人を中心に描かれた物語。死んだはずのアスミからかかってきた電話、それによって目覚める超人的な能力、提示される“トロッコ問題”――3人の大切な人たちも巻き込んだヴィジョンにそれぞれが悩み、行動し、街のシステムの謎も明かされる中で最終的に3人が下した選択は、見ていて考えるところも多かったのではないでしょうか?
そんな『東京24区』について、アニメイトタイムズでは毎週スタッフやキャストにインタビューを実施。第13回は、本作で監督を務めた津田尚克さんのメールインタビューをお届けします。
『ループものへのカウンター』や『群像劇』をやってみて、今思うこととは?
――TVアニメ全12話の制作を終えた、今の率直なお気持ちをお聞かせ下さい。
津田尚克さん(以下、津田):色々と挑戦した分、揺れ戻しのように反省がいっぱいあって、次回以降に上手く生かしていきたい、という感じです。
思った通りになった部分や、ならなかった部分、伝わったな、という部分とそうじゃない部分、本当に色々頂ける作品でした。なんとか完走出来て、スタッフの皆に感謝です。
――放送前のインタビューで『ループものへのカウンター』や『群像劇』に興味があったと話していましたが、実際にやってみていかがでしたか? 面白かった点や、逆に苦労した点などあれば教えて下さい。
津田:群像劇に関しては、僕らが生きている世界って、色々な要素が複雑に絡み合って成立している世界だから、拾える要素は拾っていきたい、って思っていました。
とにかく尺との戦いでした。拾えるキャラが多くなかったから、描けなかった脳内エピソードがいっぱいあります。ラッキーとかきなことかもっと描きたかった。
ターキーなんかも、あいつらどうなったんだ?因果応報な報いは受けないの?と思っている視聴者少なからずいると思います。
でも、世の中、悪人が罰されずにしれっと存在しているって気持ちが結構強くて。
ターキーはあえて描かない方が自分の中でリアリティがあった、という感じです。
色々苦労もしましたが、多くの人が、生きていて生活していて、それぞれの事情があって、という状態にすごく惹かれるのは変わらないです。
「ループもの」へのカウンターという意味では、もっと酷い選択を迫っても良かったかもしれない、という気持ちが未だにちょっとあります。
ただ、生活の中で知らずにしてる選択が未来を決定している、という事を抽象化できないかなって思っていたので、そういう意味では目的達成だと思います。
ヒロインとは結ばれない。ちょっと切ないですが、人生はご都合ではなくて、その辛い経験がその後の人生を豊かにする、という感じで描けていれば良いのですが。
――本作は現在のRGBの3人を描きつつ、過去のシーンや回想も頻繁に登場します。そのような構成・演出をする上で気をつけたことはありますか?
津田:回想に関しては、誰目線の回想なのか、という点は気をつけました。回想って撮影時にフィルターで色が変わったりするのですが、『東京24区』では、RGB、紫、ノーマルと数種類のフィルターをシーンで使い分けています。
回想って、過去何があったかを説明する、思い出させる意味もあるのですが、誰が体験した、誰目線の解釈なのか、も実は重要で。推理小説などでよくある信用ならない語り手的な、視聴者を騙すことも容易に出来てしまいます。
ただ、青春群像劇なので、今回は出来るだけ、ストレートになるように心がけました。
あと、ヒロインが過去にしかいないタイトルなので、そこも大いに絡んでます。