冬アニメ『東京24区』津田尚克(監督)インタビュー|『ループものへのカウンター』や『群像劇』をやってみて、今思うこととは?【連載 第13回】
衝撃的な結末を迎えたトロッコ問題は、別の構成案もありました
――物語の中で、何度もアスミからヴィジョン(トロッコ問題)が提示されました。カバちゃん(白樺広樹)やクナイなど衝撃的なことも多かったですが、脚本の下倉さんと話し合いをする中でこのヴィジョンは結構悩んだ、監督の方から提案した、といったものはありましたか?
津田:基本的には、構成は下倉さんにお願いしています。ただ、自分がやりたい事を下倉さんが噛み砕いて構成に落とし込んでいって下さった形です。
トロッコ問題はひたすら悩みました。どう物語とキャラに寄り添わせるか、という。カバちゃんが死んでしまう展開は、諸々協議した結果、下倉さんが提示してきたものです。はじめはカバ半身不随~母発狂~後半復活という、構成案もあったと思います。
クナイが死ぬのは、構成出た時点で始めから決まってましたね。話の順番が、トロッコ問題をどう構成するかが先でした。その中で「罪を犯す仲間か、無実の人々か」という二択をするために出てきたキャラでした。
自分から何か提案した、というものは、あったようなそうでもなかったような。RGBのキャラバランスは逐一何か言っていた気がします。シュウタが普通すぎて、どう人格の立った2人に対抗させるかが難しかった。
選択も2択+1、キャラも3人、という比喩構造なので、どう噛み合わせるか、という部分に下倉さんが心を砕いていたな、という印象が強いです。
――RGBの最終的な判断、物語の結末に関してはすんなり決まったのでしょうか? 紆余曲折あったとしたらどんな案があったのかお聞かせください。
津田:物語の終わり方は大筋は決まっていました。ただ、やはりどこをメインに描くのか、が中々決まりませんでした。
この物語は、世の中のシステムに言及したいのか、若者の青春群像劇に言及したいのか、そのバランスですね。ラストに行くまでがひたすらかかったので、ラストはもう決まった状態でシナリオに入っていたので、紆余曲折はなかったです。
RGBが青春の心残りにバイバイをして、ほんの少し大人になった、そんな物語です。
セリフの感情に注意すると、物語の不可解な部分も見えてくると思います
――キャラクターについてもお聞きします。RGBの3人やアスミといったメインキャラクターのキャラ作りや、物語の中での見せ方、演出などでこだわった部分、苦労した部分などありましたらお聞かせください。
津田:RGBのキャラ付けは、意外とすんなりいきました。シュウタを筋トレバカにして欲しいとお願いした記憶があります。
コウキは、しっかりしてる部分と、脆い部分のギャップを狙いたかった。でも終わってみれば終始不安定なやつでしたね。
ランは自走キャラです。勝手に行動していってくれた。こういうキャラばかりだと楽なんですが。
アスミはとにかく露出が少ないので、いかにインパクトある存在にするかで悩みました。それはキャラを造形してくれたFiFSさんや岸田(隆宏)さんも同様だったと思います。結果、あんなアイドルみたいな見てくれで街を闊歩するカリスマ妹キャラになりました。
――上記以外で、描いていて楽しかったキャラクター、難しかったキャラクター、遊ばせることができたキャラクターなどはいますか?
津田:きなこ。きなこは服装も多くて、素直で描いていて楽しかったです。ランへのほのかな想いとか切なほっこりって感じでした。
蒼生夫妻。桐子はコミックリリーフ的に使えて便利でした。いるだけで重たい空気を飛ばしてくれる、そんな母ちゃんでした。
留衣は、黙っているけどちゃんと見ている良い父親。見た目インパクト強すぎて絶対に一度見たら忘れないですしね。もっと描きたかったです。
豪理が難しかったです。役者の(楠)大典さんも悩まれたんじゃないかなぁ。とにかく今どういう感情なんだろう?ということを終始悩まされました。
終わった今、結果としてきっと「形のないものへの怒りを抑えている」っていう感じがベースだったのかな、という感想です。
――今後もサブスクリプションの配信で見ることができますし、Blu-rayの発売もあります。本作を見返す際には、こういう細かな部分にも注目して欲しい、といったことはありますか?
津田:話が複雑なので、繰り返し見る際は、セリフの感情に注意してもらうと良いと思います。誰が誰に対して、どの程度の感情を持っているのか、を読み取れると、物語の不可解な部分も見えてくると思います。
日常では通り過ぎてしまう部分ですが、エンタメ作品はそこを再確認出来るのが良いですよね。
連載バックナンバー
画像をクリックすると、関連記事にとびます。TVアニメ「東京24区」作品概要
【イントロダクション】
東京湾に浮かぶ人工島「極東法令外特別地区」――通称“24区”。
そこで生まれ育ったシュウタ、ラン、コウキは、家柄も趣味も性格も違うが、いつもつるんでいる幼馴染だった。しかし彼らの関係は、とある事件をきっかけに大きく変わってしまう。
事件の一周年追悼ミサで、偶然再会を果たした3人の電話が突如一斉に鳴る。それは死んだはずの仲間からの着信で、彼らに“未来の選択”を迫るものであった。3人は、自分の信じるやり方で、愛する24区(マチ)と人々の未来を守ろうとするが―――
脚本にアニメ初挑戦の下倉バイオ(ニトロプラス)を迎え、キャラクター原案は多くの女性から人気を集めるFiFSが担当。「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」、「ダーリン・イン・ザ・フランキス」などハイクオリティな作品を手掛けてきたCloverWorksと、「ジョジョの奇妙な冒険」のシリーズ監督を務める津田尚克が初タッグを組んだオリジナルTVアニメーションが誕生!
【放送情報】
TOKYO MX・とちぎテレビ・群馬テレビ・BS11にて2022年1月5日(水)24:00~ 初回1時間スペシャル放送
TOKYO MX:1月5日(水)より毎週水曜 24:30~ ※初回1時間SPは24:00~
とちぎテレビ:1月5日(水)より毎週水曜 24:30~ ※初回1時間SPは24:00~
群馬テレビ:1月5日(水)より毎週水曜 24:30~ ※初回1時間SPは24:00~
BS11:1月5日(水)より毎週水曜 24:30~ ※初回1時間SPは24:00~
ABCテレビ:1月5日(水)より毎週水曜 26:14~ ※初回1時間SP
メ~テレ:1月5日(水)より毎週水曜 26:11~ ※初回1時間SP
【配信情報】
ABEMA:2022年1月5日(水)24:00~
※初回1時間スペシャル
※第2話より毎週水曜24:30~
dアニメストア:2022年1月8日(土)12:00~
dアニメストア ニコニコ支店:2022年1月8日(土)12:00~
dアニメストア for Prime Video:2022年1月8日(土)12:00~
ニコニコチャンネル:2022年1月8日(土)12:00~
GYAO!:2022年1月8日(土)12:00~
バンダイチャンネル:2022年1月8日(土)12:00~
Hulu:2022年1月8日(土)12:00~
J:COMオンデマンド:2022年1月8日(土)12:00~
TELASA:2022年1月8日(土)12:00~
milplus:2022年1月8日(土)12:00~
ひかりTV:2022年1月8日(土)12:00~
FOD:2022年1月8日(土)12:00~
U-NEXT:2022年1月8日(土)12:00~
アニメ放題:2022年1月8日(土)12:00~
Amazon Prime Video:2022年1月8日(土)12:00~
TVer:2022年1月8日(土)12:00~
ニコニコ生放送:2022年1月8日(土)23:30~
【STAFF】
原作:Team 24
監督:津田尚克
ストーリー構成・脚本:下倉バイオ(ニトロプラス)
キャラクター原案:FiFS(曽我部修司・ののかなこ)
キャラクターデザイン:岸田隆宏
総作画監督:髙田 晃・伊藤公規・まじろ
副監督:髙橋英俊
プロップデザイン:髙田 晃
グラフィティデザイン:河原秀樹、添野 恵
美術設定:塩澤良憲
美術監督:春日美波
色彩設計:中島和子
2Dデザイン:久保田彩
特殊効果:清水彩香
CGディレクター:宮地克明
撮影監督:佐久間悠也
編集:三嶋章紀
音響監督:岩浪美和
音楽:深澤秀行
制作:CloverWorks
【CAST】
蒼生シュウタ:榎木淳弥
朱城ラン:内田雄馬
翠堂コウキ:石川界人
翠堂アスミ:石見舞菜香
櫻木まり:牧野由依
きなこ:兎丸七海
黒葛川早紀子:生天目仁美
翠堂豪理:楠 大典
翠堂香苗:大原さやか
クナイ:斉藤壮馬
ヤマモリ:伊丸岡 篤
ラッキー:喜多村英梨
白樺広樹:上田燿司
白樺 梢:日高里菜
筑紫 渉:中村悠一
宍戸花奈:花守ゆみり
進藤 薫:江頭宏哉