この記事をかいた人
- 篭法
- 内向的で口下手、典型的な陰の者。テーマやメッセージ、登場人物の心情を考えさせられるアニメが好み。小説も好き。
――“記憶喪失”という設定はアニメや漫画などでは、比較的なじみ深い設定だと思いますが、実際に演じるとなると、やはり難しいポイントになってくるんでしょうか?
梅田:難しいですね。記憶がどれだけ残っているかによっても演技が変わってくると思います。
序盤のセービルを演じるうえでは、(思い出せないでいる)過去は意識せず、「自分が誰なのか?」「なんで生きているんだろう?」「なんでこういう風に伝えられないんだろう?」「僕は何がしたいんだろう?」といった思いからくる“無力感”を意識しました。
その状態からスタートして、仲間と触れあっていくうちに、自分にできることや自分の本当の能力に気付き、やっと葛藤が始まるキャラクターだと思っています。
――“無力感”からスタートし、徐々に葛藤や焦りが出てくるんですね。
梅田:仲間とともにいろんな敵やできごとに直面していく中で、自然と感じました。かといって、それがすぐに全部声に乗るキャラクターではないんです。初めて強い感情が芽生えたシーンでは、テストの段階で思い切りやらせていただき、そこから「まだそこまで上手には出せないよね」とスタッフの方と擦り合わせ、形にしていきました。
――ここまで伺ってきたセービルの演じ方というのは、オーディションの段階ですでに固まっていたのでしょうか?
梅田:オーディションの段階では、ひたすら難しいキャラクターだと思いながらやっていました(笑)。
ただ、「感情が死んでいるわけではなく、出すことができないだけ」ということは分かっていたので、とにかくセービルらしさを声に乗せられるよう試行錯誤していました。
――アフレコの中でようやく固まってきたということですね。
梅田:セービル自身の印象や捉え方は最初からそこまで変わっていませんが、「セービルの感じたことを大事にしよう」というのは、収録を通してより意識するようになった部分ですね。
スタジオに向かう前に準備したものと、スタジオの中で彼と向き合ったときで感じるものも違いましたし、ロス先生やホルト、クドーと掛け合う中で気付くことも多かったです。
毎週マイクの前に立ち、ひとつの役に向き合うという経験がこれまでほぼなかったので、毎回得るものがありました。
――セービルと一番掛け合いが多い、ロス先生の印象や魅力、掛け合いの中で感じたことなどをお聞かせください。
梅田:“セービルが一番できないことを一番大事にしている”のがロス先生の魅力ですね。ロス先生は「楽しいことかどうか」を大事にしているので、誰の前でも「これがやりたい! これは嫌だ!」と思った通りに言い、表現するんです。
セービルとして隣にいると「なんでこういうことを言ったり、実行できるんだろう?」と思ったり気圧されたりと、とにかくダイレクトに感情を感じられるので、ロス先生との掛け合いは、僕の中のセービルを育ててくれている気がします。
ロス先生の息遣いや動き、大きな声、優しい声など、すべてがセービルに影響を与えているんだ、と収録のたびに感じますね。
――さまざまな出会いや経験を通して変化していくセービルにぜひ注目したいと思います。本日はありがとうございました。
[取材・文・撮影/篭法]
中学までは運動部だったが、だんだんインドア趣味になり、今では完全に陰の者。小説が好き。ライターを志すきっかけになったアニメは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。その他に好きな作品は『91Days』『SSSS.GRIDMAN』『ワンダーエッグ・プライオリティ』など。アイドル系の作品にはあまり触れてこなかったが、1年ほど前から『シャニマス』にハマり、ライブにも足を運ぶようになった。