【美食殿】のみんなに本当の笑顔を取り戻してあげたかった第2期――アニメ『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』金崎貴臣総監督×いわもとやすお監督×上内健太さん(アニメーションプロデューサー)×守屋竜史さん(プロデューサー)インタビュー【連載第14回】
手描きの力と3Dの没入感を活かしたライブシーン
──第2話では【カルミナ】のライブシーンもすごかったです。アイドルアニメにも負けていなくて。
金崎:【カルミナ】のライブシーンは、ラフ原(ラフに描いた原画)も描きましたねー。
──え? そうなのですか!?
金崎:3Dでモーションキャプチャーを使って歌って踊ってもらうのが、今は主流だと思うんですけど、僕は手描きのアニメの力がものすごく好きで。ダンサーさんに曲に合わせた振り付けをしてもらうと、カメラワークを意識したダンスではないので、どうしても画面映えやキャラクター映えしないアクションが入ってしまうんですよ。
じゃあ、どうするかといえば、「このキャラクターのこういうダンスをこの部分で欲しい」といったものは頭の中にあるので、もう自分で描いた方が早いんじゃないかと(笑)。コンテだけ出しても、原画さんのイメージはバラけてしまうし、それならばと思ってラフ原をロングショット以外全部描きました。
──それでなくても、金崎さんはいろいろやられているのに。
金崎:ラフ原を描く時間を作れたのも、いわもとさんに現場を見てもらったおかげです。本当に感謝しています。
いわもと:ライブシーンは本当に良かったですよね。金崎さんのラフ原に合わせて、CGの方たちが細かいカメラワークをつけてくれて。
金崎:そうなんです。ステージは3Dで作っています。目指したのはライブの没入感。平面な動きよりも対象物(キャラ)に対して回り込むような動きが欲しいとなると、どうしても3Dモデリングが必要になってくるので、担当と相談してステージを全部3D化してもらいました。観客も全部3Dにしてくれて、ペンライトを振ってもらったことで、よりリッチな画面になりましたね。
──手描きと3Dの組み合わせであのライブシーンが生まれたのですね。では次に、キャラクターのこともお聞きします。先ほどペコリーヌは難しかったとありましたが、ほかに描く上で難しかった、逆に楽しかったキャラクターはいますか?
金崎:【なかよし部】(正式名称は【聖テレサ女学院(なかよし部)】)のユニは、ほかのキャラクターと違う感じがして面白かったですね。もともと原作ゲームで王(雀孫)さんが作ったキャラクターなんですけど、言い回しもかなりクセが強くて。資料を見ても、描いていても楽しかったです。
難しかったのはラビリスタですね。アニメのラビリスタは、ゲームと結構違うんですよ。アニメの場合はどうしてもストーリーを俯瞰して見られるキャラクターが限られてしまうので、ラビリスタにはいろいろなものを担っていただき、だいぶ大人目線になっています。アフレコでは、沢城(みゆき)さんと「ゲームとの差異はこういうところで、なぜこの言い回しやテンションになっているのか」などとディスカッションしながら作り上げました。
最終話で、手錠をかけられたカイザーインサイト(以下、カイザー)を寂しげに見つめるラビリスタがふっと微笑み、「みんなでおにぎりを食べるってのはどうかな?」と気軽な感じの言い方に切り替わるシーンがありましたよね。あそこでようやくゲームでの飄々としたラビリスタに戻れた感じにしたくて。アニメでは尺の関係で寄り道ができなかったので、どうしても本音で喋っていかないとドラマが組めない状態でしたからね。そういったところを、沢城さんがバランス良く演じてくださいました。
──さすが沢城さんですね。いわもとさんはキャラクターで印象的な子はいますか?
いわもと:僕もユニは面白いキャラだなと思いました。彼女はストーリーラインの重要な部分に関わっていたのもありますし、単純にキャラクター自体が面白いなと。あと、モニカや【ヴァイスフリューゲル ランドソル支部】の子たちは一風変わっているところが可愛らしくて面白いなと思いましたね。
みんなの熱意が相乗効果となって生まれたバトルシーン
──キャラクターの魅力とともに話題となったのがバトルシーンです。特に第4話はそのクオリティや、原画の人数の多さなどに騒然となりました。ここはどういう形で制作されたのかお聞かせください。
金崎:第4話は坂詰(嵩仁)さんに絵コンテ・演出・作画監督を担当してもらえるとシナリオに入る前に聞けたので、「えらいことになったぞ。これはやるしかねぇ!」と思いました。それぐらい信頼できる方が入ってくれるのであれば、シナリオもそれに応えるものにしたいと。
そして、いったんシナリオを書いた後に坂詰さんとディスカッションをしたら、「最後のところ、もっとアクションをしてもいい」と答えが返ってきたので、じゃあこういう風にしようとシナリオをリファインしたんです。もともと“巨大な対象物に対して、キャラクターたちのスケール感のあるアクションを見せたい”と思っていたので。やっぱり、「こういうお祭り回をやりたい!」「やります!!」といった熱意ですよね。制作デスクも担当した溝口(侃)くんは「僕が制作進行もやります! お祭り回をやります!」と言うぐらい熱量がありましたし。そういったことを受けて、僕もシナリオを頑張りました。
──話を聞くだけでもすごいですね。
金崎:あがってきたコンテがまたすごくて。カッティングをしてダビングする頃には絵が迫ってくるんですが、本当にすごいことになっていました。音をつけていても楽しいんですよ。音響効果の小山(恭正)さんが普段言わないような細かいところまで注文を出してきたりして、みんなが作品を面白くするために足し算をしていく感じでした。「作りたいものがある」って熱意は、アニメを作る上ですごく大切だと改めて実感しましたね。作りたいものの明確なビジョンがあり、みんながアイディアを出して作っていく。そういう幸せな相乗効果があったと思います。
上内:僕らとしても、絵コンテがあがってきた段階で、これはすごい!と思いました。それをいかに形にするかが大変だと思いつつ、ちゃんと完成すればすごい回になるのはその時点でわかっていて。デスクの溝口たちと一緒に、誰にお願いできるか相談してなんとかやっていった感じです。
──この話数ではカスミのシャドウであるキーリも印象的でした。ゲームのキャラクターストーリーではシャドウそのままというか、特徴のある姿ではなかったですよね。それがアニメでは、1人のキャラクターとしてめちゃくちゃ可愛くて。
金崎:第1期ではシオリのシャドウが出ましたけど(第6話、第7話)、あっちはいわゆるオーソドックスなシャドウ。壊れた時計のように、ずっと同じことを繰り返して喋る状態でした。でも、キーリは原作でもわずかに反応があって、ちょっと違うニュアンスを感じたんです。
そこで、キャラクターデザインの渡辺舞さんに相談して、髪型や服のバリエーションのアイディアを出していただき、アニメのキーリ像が出来上がりました。可愛くなればなるほどいなくなった時の喪失感は重くなってしまいますが、視聴者に“存在している”と思ってもらうのが重要でしたし、キーリに感情移入してもらいたくてあのような容姿になったんです。アニメの短い話数で表現するにあたり、カスミと差別化もしたかったですからね。
いわもと:制作的には大変だったと思いますけど、キーリの無垢な感じや(普通の人と)ちょっと違う感じをアニメーターさんがみんな丁寧に出そうとしてくださって、あのような感じになりましたね。
──そういった皆さんのお力があって、中盤にしてすごく胸に響く2話でした。
いわもと:そうですね。いろんなところで「これが最終話」と言われていましたから(笑)。
──「いい最終話だった」は褒め言葉として使われますからね(笑)。そんなシリアス展開があった直後に【ヴァイスフリューゲル ランドソル支部】が登場したのも、ギャップがあって面白かったです。
金崎:彼女たちはどのタイミングで出せばいいのか結構悩みました。クセが強いからどうしようと。でも、結果として、菊田(幸一)さんという長い付き合いのクリエイターさんに絵コンテを描いてもらえたおかげで、楽しい話数になりました。原画さんもすごくノリノリでやってくれて、穴を掘るあたりも動きまくっていましたね。
いわもと:やっぱり原画さんが楽しそうに動かしているところは、実際に(映像を)見ても面白かったです。