『東京24区』榎木淳弥さん×内田雄馬さん×石川界人さん 最終回後インタビュー|RGBを演じた3人がネタバレありで全12話の物語を振り返る【連載 第14回】
津田尚克×下倉バイオ(ニトロプラス)×CloverWorksが贈る新作オリジナルアニメ『東京24区』。2022年1月から放送されてきた本作が、先日ついに最終話(第12話)を迎えました。
『東京24区』は、東京湾に浮かぶ人工島「極東法令外特別地区」――通称“24区”を舞台に、蒼生シュウタ、朱城ラン、翠堂コウキ、まとめて“RGB”と呼ばれる3人を中心に描かれた物語。死んだはずのアスミからかかってきた電話、それによって目覚める超人的な能力、提示される“トロッコ問題”――3人の大切な人たちも巻き込んだヴィジョンにそれぞれが悩み、行動し、街のシステムの謎も明かされる中で最終的に3人が下した選択は、見ていて考えるところも多かったのではないでしょうか?
そんな『東京24区』について、アニメイトタイムズでは毎週スタッフやキャストにインタビューを実施。最終回となる今回は、RGBの3人を演じた榎木淳弥さん(蒼生シュウタ役)、内田雄馬さん(朱城ラン役)、石川界人さん(翠堂コウキ役)の鼎談をお届けします。
クナイのエピソードでRGBの3人の関係が大きく変わりました
――まずは、全話収録を終えた今の感想からお聞かせください。
蒼生シュウタ役 榎木淳弥さん(以下、榎木):疲れました。出すところはすごく出すシーンが多くてエネルギーの必要な作品でしたし、複雑なお話もありましたから。でも、最終的には全ての謎も解決しましたので、大変でしたけどやり切った感があります。すごく気持ちよく終われました。
朱城ラン役 内田雄馬さん(以下、内田):収録は結構長い期間をかけてやっていて、この3人は一緒に収録することも多かったですが、ほかの方はブースの入れ違いに「どうも、何々役の何々です」と挨拶する感じだったんです。そういった中でも、重要なシーンでは掛け合うキャラクターを一緒に収録するなどコミュニケーションを大切にしてくれて。作品的にもコミュニケーションは大事なことでしたので、みんなで協力して走りきった感じがします。
翠堂コウキ役 石川界人さん(以下、石川):榎木さんもおっしゃったように、頭を使わないとなかなか整理するのが難しい情報がありつつも、理屈だけじゃなくて感情面も大事にしなくてはいけない作品でした。感情面を大事にしたまま物語を終えることができましたし、難しいシステムの話や政治の話も解決できましたので、いいハッピーエンドだったんじゃないかなと思います。
――オリジナル作品ですし、頭で整理するのが難しい情報もあったとのことですが、ストーリー展開については最初にどの程度知っていたのでしょうか?
内田:何も知らなかったですね。基本的には毎週もらう台本のことしか情報はなかったです。
石川:そうですね。キャラ絵しかもらっていない状態でした。
榎木:毎回、台本を読んでその話その話で理解していきました。だから、あまり先読みをしなくて済む部分もありましたね。
――そうすると、台本をもらうたびに驚きや衝撃もあったのではと思います。全話通して、特に印象的だった話数やシーンを挙げるならどこでしょうか?
石川:僕はクナイのところ(第5話、第6話)です。3人共通の身近な人間であるカバちゃん(白樺先生)が亡くなって(第3話)、そのあとにランの親しい人を自分の関わりで殺してしまったところでしたから、すごく印象的でした。3人の関係が大きく変わる話だったと思います。
内田:人によって正義の持ち場所が違うことが明確になったところですね。しかも、ここから収録が別個になり始めたので、分裂感がすごくて(笑)。
榎木:仲違いさせようと(笑)。シュウタに至っては、クナイの件は途中まで何があったのかよくわかっていないからね。それよりも一人悶々としている感じで。
石川:外野だったもんね。
内田:でも、ここはトロッコ問題のきつい部分でしたね。
石川:「全員救えばいいじゃん」「クナイを殺してみんなを救う」「みんなが犠牲になってもいいからクナイを救う」と3択になっていて。この作品ではトロッコ問題を押しているんですけど、それが打破された瞬間だったのかなと思います。
――友達を犠牲にする選択はどうなんだろう、って思いますからね。
石川:その言葉を聞いて、ラン目線だなとわかりました(笑)。第一声で、どのキャラクターの主観で見ているのかがわかるのも、この作品の面白いところですよね。
――確かに、本作の内容や提示されたトロッコ問題ついて話し合う際は、誰目線なのか考えるのも面白そうです。そして、この話数では“ドラッグD”も興味深かったですが、実際にこういったものがあったらどうしますか?
榎木:現実に起こりうるかどうかわからないですけど、そんなことがあったら僕は携帯(スマホ)を捨てます(笑)。
内田:そんな悪いことに音楽を使わないで欲しいです!(笑)
榎木:内田雄馬のCDしか買わなくなる“ドラッグユウマ”とかだったら?
内田:それはぜひ(笑)。
榎木:ぜひ、じゃないよ。
石川:(笑)
内田:でも、クナイだってもともと悪いことに使おうとしていたわけじゃないですから。人の気持ち次第ですよね。
榎木:医療とかにも使えるわけだからね。
喧嘩をしてやっと友達に戻れた部分もあったのかなと
――物語の後半になると、“KANAEシステム”など24区の謎がどんどん明らかになっていきました。後半で印象だったのは、どういったところでしょうか?
石川:僕は、第11話の3人の殴り合いですね。
榎木:あれは台本を読んだ時に、どうやろうかなと。
内田:難しかったよね。
石川:最初に殴りかかったのはコウキなんですけど、殴りかかるきっかけの発声が「あああああ!!」だったんですよ。そんなコウキ見たことないと思って。だからと言って、その後のセリフが感情的かと言われるとそうではなかったので、どういう感情で「あああああ!!」って言いながら殴っているんだろうと自分なりに整理するのが難しかったです。ここはかなり榎木さんと雄馬くんに相談した記憶があって、印象に残っていますね。
榎木:相談というか勝手に口出ししました(笑)。「こうなんじゃない?」って。
石川:「わっかんねーんだよな」ってずっと言っていたら、「こうなんじゃない?」って。雄馬くんは、あはははは! って笑っていて(笑)。
内田:いやいやいや(笑)。
榎木:みんな理屈じゃないからね。3人とも何かのワードをトリガーにして、各々の中の心象風景がいきなりガッと変わるんです。台本を読んだだけではどういうことかわからなかったのですが、実際にアフレコをやることで意図がわかったというか、3人揃って収録できたことでシーンが立ったと感じました。
内田:ある意味、このシーンはランとコウキとシュウタがシンクロする感覚もありました。普段の彼ららしくはないけど、引っ張られて感情が出てきたというか。昔の友達同士の喧嘩って、「あああっ!」って言ってきたら「あああっ!」って言い返すじゃないですか。
石川:猿じゃん(笑)。
内田:(笑)。そんな感じでどんどんヒートアップしていくみたいな。このシーンはどうしても一緒に録るのが難しかったので、テストは一緒にやって、本番は1人ずつ録ったんです。テストで一緒にやった時に、喧嘩をしてやっと友達に戻れた部分もあったのかなと感じたのを覚えています。
――そして最終話となる第12話では、3人が共通の結論を出すわけです。その結論も含め、第12話の感想をお聞かせください。
内田:やっぱり人間は話し合った方がいいんだよ(笑)。
榎木:そうだね。自分たちで責任を持って選択をするのはすごく怖いですけど、そうしなきゃいけないんだろうなって感じます。例えば、政治とかもそうじゃないですか。勝手にやってくれるでしょ、と思ってしまう部分もありますけど、そうじゃなくて。自分たちで選んで掴みに行かないとダメなんだと感じました。
内田:身近でできる自分の選択はそうだよね。選択肢がいっぱいあるからこそ、考えることが大事なんだなって思います。
石川:僕が第12話を見て思ったのは、(提示されていたのは)ディストピアにするかユートピアにするかの2択だったところに、第3の選択肢が生まれた。というより、そこに気づいていなかったのを、シュウタがいたことによって気づけたのかなと。
――性格的なこともあるかもしれませんが、シュウタは一貫して第3の選択肢を探ろう、そのためにあがこう、AとBのどっちも助けたい、といった感じでしたからね。
石川:1人だけずっと論点が違っていて。でも、論点が違うと思われていたシュウタの論点が実は正しかったよね、という話だったのかなと思いました。