春アニメ『サマータイムレンダ』ヒロインの妹である小舟澪役・白砂沙帆さんインタビュー|「私も和歌山県出身なので作品に思い入れがあります。澪役に受かったと聞いて号泣してしまいました。 “声優になって良かった”と思いました」
「潮が死んだ―――」。紀淡海峡に浮かぶ夏の小さな離島で、時をかけるSFサスペンス『サマータイムレンダ』(原作:田中靖規/集英社ジャンプコミックス刊)。文化放送インターネットラジオ『超!A&G+』で新番組「サマータイムレンダ Radio」がはじまったり、スマートフォン向け無料アプリ「サマータイムレンダ公式アプリ Powered by和歌山」がリリースされたりと、新情報が続々と届いている中、アニメ放送が4月より放送中です。
今回はヒロイン・潮の妹、小舟澪を演じる白砂沙帆さんに意気込みなどをうかがいました。
白砂さんは作品の舞台となる和歌山県出身。原作をいちファンとして読まれていたこともあって、作品に特別な思い入れがあったそうです。また、単独取材ははじめてとのことで「緊張気味」と明かされていましたが、堂々と、作品に掛けるまっすぐな思いを言葉にしてくれました。
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和歌山のどこかに“影”っているんじゃないかな
――澪役が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
白砂沙帆さん(以下、白砂):すごく受かりたかった作品で。実は潮、澪の2役を受けさせていただいていたんです。事務所のデスクさんから「澪役で決まりました!」という連絡を受けて、嬉しすぎて号泣してしまいました。「決まった」ということを知ってあまりにも号泣してしまったので、実は役名をちゃんと聞き取れなかったんです。だから泣きながら「ど、どっちでしょうか……?」って後から聞いて(笑)。
――(笑)いいエピソードですね。澪はオーディションで演じられたとき、手応えのようなものは感じられていましたか。
白砂:手応えはまったくなかったです。ただ、私は澪が自分の中でつかみやすいところがあって、演じやすいな、共感できるなと思っていました。オーディションで先に演じた潮は、何度もリテイクをいただいたのですが、澪はそれに比べるとかなりさらっと終わりました。できれば澪をやりたいという気持ちがあったので、澪で決まったということが本当に嬉しかったんです。「やったー!」って(笑)。
――白砂さんは和歌山出身ということもあって、作品に思い入れも強かったでしょうね。
白砂:そうなんです。地元が舞台の作品で、言葉も和歌山弁。実はオーディションのお話を頂く前から原作を読んでいたんです。友人が「めちゃくちゃおもしろい作品があって、舞台が和歌山だから読んでみて!」って。そしたら、アニメ化が発表されて。「アニメ化するんだ、オーディションもう終わっちゃったかな……」なんて思っていたら、その後すぐ事務所の方からオーディションの話を聞いて。何かしらで参加したい!という思いがありました。
――原作を読まれたときの印象はいかがでしたか?
白砂:普段作品を読むときはオーディションなどを意識しながら読むことも多いんですが、今回はただただファンとして読んでいました。「まずは1巻を」と思って読んでいたところ、スピード感がすごいので、次が気になって気になって。その時は最終巻が出ていない段階だったので、最新巻まで一気に読みました。
私自身が和歌山の地方出身なので言葉がリアルなんですよね。私が通っていた学校は全校生徒20人くらいの小さなところで。島ではないんですけど、人が少なくて、田舎で……作品の舞台ともぴったり当てはまっていて、私が見てきた和歌山独特の景色が読んでいて思い浮かぶんです。住んだことがない人も、潮風、山や土の匂い、音……そういったものを感じられるんじゃないかなと思います。和歌山のどこかに“影”っているんじゃないかなって思ってしまうくらい、その世界に引き込まれる作品だなと感じました。
――SF要素もありますけど、すごくリアルですもんね。もしかしたら自分の家族も入れ替わっているんじゃないかと思うくらい(笑)。
白砂:本当にそうなんです! 近所のおじいちゃん、もしかしたら!?って(笑)。知ってる場所・モノが出てきたのもテンションが上がりました!
――知っている場所・モノというのは例えば?
白砂:例えばガーデンパーク和歌山(和歌山市松江にあるショッピングセンター)。それが“ガデパ”と略されて、会話に出てきていて。主人公が好きなグリーンソフトは、私の実家の冷凍庫に常に常備されているアイスです。県民がみんなよく食べているもので。こんなにリアルな和歌山の要素が入っている作品があるんだ!って。
――私もグリーンソフトの飴をお土産でもらったことがあるのですが、すごく美味しいですよね!
白砂:そうなんです! 1話のアフレコの時、和歌山の名物をスタッフさんがたくさん用意してくださっていたんですよ! その中にはグリーンソフトの飴も。帰り際にはひと袋まるまる持って帰っていいよと言ってくださったり (笑)。皆さん本当に優しいんです。
――いまこうやってお話していると方言は出ていませんが、標準語はかなり練習されたのでしょうか。
白砂:普段いただくお仕事がほぼ標準語なのですが、上京して4年経つので、だいぶ慣れました! でもちょこちょこ出ちゃうことがあります。だから、家で(標準語の)イントネーションを常に確認しているんですが、そういう意味ではこの作品では思うがままにできて。実際に、自分の学生時代に使っていた言い回しも出てきているのでとても楽しいです。
――方言指導の役者さんがいらっしゃるとうかがっていますが、白砂さんも方言指導は受けられているんでしょうか?
白砂:私の場合は「自由にやってください」と言われているんですが、和歌山の中でも、場所によってイントネーションがちょっと違うんですよね。例えば「浴衣」ひとつとっても違う発音があるので、「これはどっちの言い方ですか?」と聞くことも。方言指導の方と、原作者の田中(靖規)先生とが、すごく丁寧にチェックしてくださっているので、安心してアフレコしています。躓いてしまったときは「もう一回お願いします」とお願いして。この作品は言葉もとても大事になってくるので、一切妥協することなく、監修してくださっています。
――田中先生は最初にスタジオに来られたあと、リモートで参加されているそうですね。実際どのようなやりとりをされているんでしょうか?
白砂:田中先生のお言葉を直接私たちが音声で聞くことはほとんどないんですけど、間に入ってくださる方言指導の方やスタッフさんがつないでくれて、私たちが気になることを聞いてくださっています。方言指導の方がこの作品を読み込んでいて、本当に力を入れてくださっていて! 私たちが台本を読んでいて、「ここ気になるな」ってところを、だいたい田中先生に先に聞いてくださってくれているんです。愛を持って、制作に携わってくれているので「このシーンは田中先生に聞いたところ……」という感じでアナウンスしてくれます。スタッフさんも皆さん、その場で田中先生とすり合わせをしながら言葉一つひとつ丁寧に作っているんです。
――愛のある現場ですね。それだけ言葉に力が入っていることも伝わってきます。
白砂:方言自体の魅力もありますし、キャラクターの言葉も生き生きしていて。それぞれのキャラクターが発する言葉にハッとさせられることもあります。特に、ひづるさん、朱鷺子ちゃん(CV.河瀬茉希)がそうですけど、それぞれの背負っているものがあるからこそ……彼女たちが言うことによって泣きそうになってしまう。一回最後まで見た後に、もう一回見るとまた違う楽しみ方ができると思います。だから作品自体もタイムリープしながら見て欲しいです!
――視聴者側もタイムリープしながら。
白砂:慎平と謎解きというか、頭を使いながら見るのも楽しいと思います!
――話が少し戻ってしまいますが、自分の生まれ育った言葉で演技できるというのは、なかなかない特別な機会ですよね。
白砂:そうですね。ただ、方言でセリフを喋るというのははじめての経験だったので、最初は不安もありました。「どうやったら魅力的に聞こえるんだろう?」って。でも「あまり気にしないで思い切りやってください」って言葉をいただけたので、今は生き生きとやっています。
――現段階でアフレコはどれくらいまで進んでいるんでしょうか?
白砂:(3月下旬の段階では)今は8話まで。ちょっと慣れてきたなというところです。最初は緊張していたんですが、今は“難しいけど楽しい”という気持ちがあります。澪として喋る時間が本当に好きで、毎週「早くアフレコの日来てほしい!」って(笑)。最近は自分から「こういうふうに演じるのはどうでしょうか?」と提案させていただくこともあります。現場の雰囲気がとてもいいですし、私もできることは最大限やりたいなと。昨日、菱形 青銅役の大塚明夫さんと事務所でお会いしたんですが、「この作品すごく好きなんだよ!」と仰っていて。先輩方も好きな作品ということで、頑張らなきゃ!って改めて思いました。