次世代ボードゲームプロジェクト「ヨフカシプロジェクト」第3弾『キルタイム・キラーズ 絶泉館の殺人』が7月に発売! ディレクター兼本作のゲームデザイナーも担当した渡辺範明氏、ディレクターの春木場將道氏、ゲームデザイナーの篠田築氏にインタビュー!
メインキャラ5人全員が殺人鬼で、それぞれに殺意も!? トリッキーな設定とポップなキャラデザインが魅力
――キャラクターはどのように構築されたのでしょうか?
渡辺:まず斜線堂先生からキャラクター候補の案をかなり多めに出していただけて、その中から今回のゲームに合いそうなキャラクターを相談しながら選んでいきました。どのキャラも斜線堂先生らしくクセがあり、そこが魅力的でした(笑)。
斜線堂先生の作家性はもちろん反映されていると思いますが、常に「ロールプレイして楽しいキャラにしたい」とおっしゃっていました。「自称魔法少女殺人鬼」や「高校生探偵殺人鬼」などはまさにロールプレイしてみたくなる設定ですよね。ゲームを作るのは初めてのはずなのに、あくまでプレイヤー目線で考えてらっしゃってすごいなと思いました。
篠田:なりきれたらきっと楽しいですよね。
――TSCR先生が描くキャラもポップで、ボードゲームファンだけでなく、流行感度の高い人や、サブカル好きにも刺さりそうですね。
渡辺:殺人鬼がいっぱいいるし、たくさん人が死ぬゲームで、普通に描いたら陰惨な世界になってしまうところを、むしろ笑いさえ感じるくらいのポップさや「軽さ」を出したかったんです。ちなみにタイトルも「キルタイム」は「ひまつぶし」という意味で、遊戯的な感覚の殺人者たち、というイメージを込めています。
斜線堂先生の出してくださったキャラクター案は今回登場しているキャラ以外にも沢山いるので、続編を作ろうと思えば作れなくもないようにはなっています。皆さんの評判や反響が良ければ、第2弾、第3弾…と続きが作れるかもしれませんね。
――メインキャラ5人全員が殺人鬼というのはかなり斬新なのでは?
渡辺:こんな設定のゲームは斜線堂さんがいなければ絶対作れなかったと思います(笑)。斜線堂先生は小説の中でも特にトリッキーな舞台設定のミステリー……「特殊設定ミステリー」とも呼ばれていますが……それも得意にしている方なので。さすがです。
本作は伝統的なミステリーのフォーマット通りに「古びた洋館で殺人事件が起きる」ところから始まりますが、なんとそこに居合わせた全プレイヤーが殺人鬼なので、まさに誰が犯人でもおかしくないし、しかもそれとは別に全員が内心で誰かの殺害計画を進めているという、設定のカオスさはまさに斜線堂先生ならではだと思います。
篠田:だから今までのゲーム制作とは勝手が違うことだらけで(笑)。全員が殺人鬼というのを成立させつつ、おもしろくするのが難しかったです。
渡辺:基本的なマーダーミステリーは、最初に殺人事件が起きて、犯人探しをするわけですが、このゲームではそれもしつつ、各自が殺人鬼でそれぞれ殺したい相手がいる上に、全員が記憶を失った状態で始まります。
自分の記憶を取り戻し、誰を殺しに来たのかを思い出しながら、犯人探しもするという二重のゲームが同時進行していくので、複雑でかなりやり応えがあるゲームになっていると思います。だから制作する我々も大変で。
篠田:あちらを立てれば、こちらが立たず、みたいな(笑)。
渡辺:もしまた別のマーダーミステリーを作るとしたらもっとシンプルなものにしようと思っています(笑)。
独自システムの「キラーポイントチップ」はゲームで最重要なアイテム!?
――人狼ゲームのように自分が犯人側なのか、探る側なのか、わかった上でプレイするのではなく、プレイヤー全員が最初は立場がわからないまま、プレイするのはおもしろそうですね。
渡辺:全員、記憶を失ったところから始まるので、犯人自身も自分が犯人とはわかっていないという(笑)。
篠田:自分が犯人かどうかはゲームがある程度進むまで分からないので、終盤まで気を抜けません。
――独自システムとして取り入れられている「キラーポイントチップ」についてご説明をお願いします。
篠田:各ラウンドごとに配られるチップです。事件の情報を得るために使ったり、そして誰かを殺したい時のアドバンテージになるものです。ポイントを貯めたいけど、ポイントを使わないと自分の殺したい相手や事件の真相にたどりつけないというジレンマがあります。
渡辺:プレイ中に証拠品を得たり、自分の記憶を取り戻す時に「情報カード」を引いていくのですが、オークション方式で、キラーポイントチップを多く消費すれば優先的に欲しいカードが引けるんです。さらに、「そのカードを見せて」とか「カードをちょうだい」といった他のプレイヤーとの交渉にも使えます。
このように、「キラーポイントチップ」はお金みたいにプレイヤー間を流通する仕組みになっていて、そこがいわゆるマーダーミステリーのアクションポイントとは異なります。
チップをいっぱい貯めていれば最後の殺人フェイズでも優先的に殺人アクションができるので有利ですし、逆にチップの枚数が少ないと殺人アクションが遅い順番になってしまうので、自分が殺すより先に他人に殺されてしまうかもしれません。
しかし、情報集めにもチップを使わなくてはいけないし、情報がないと自分が殺すべき相手がわからないし……と悩ましいところです。
篠田:「キラーポイントチップ」にはいろいろな用途があり、ゲームの中心になっているところが新しいかな、と。
渡辺:オークションゲームの要素や交渉ゲームの要素が入っているので、マーダーミステリーの中ではかなりボードゲームっぽくなっていると思います。マーダーミステリーの中には物語に寄っているものもありますが、本作は凝ったシナリオやイラストに加えて、挑戦的なシステムが構築されているので、全体的に濃いゲームになっています。
篠田:マーダーミステリーの中には、さらっと遊べることがセールスポイントのゲームもありますが、このゲームは大作感があり、じっくり腰を据えてプレイしてほしいです。
自分も含めて全員が殺人鬼なので、「誰が殺していてもおかしくない」という疑念から始まって、キラーポイントチップのやり取りも「悪者同士ならでは」の交渉感があります。そこが逆にコミカルでもあるし、見ていてもおもしろいと思います。
イメージソング「そして惨劇は灰色に踊る」のMVも公開中。プレイ前に必見!
――『キルタイム・キラーズ 絶泉館の殺人』はボードゲームにとどまらず、幅広い展開もできそうですね。
春木場:そうですね。『まっぷたツートンソウル』と『魔警オルトロス』は缶バッジやアクリルスタンドなどグッズ化もされています。
ヨフカシプロジェクトのゲームは、元々、アニメやラノベ好きの方々などで普段ボードゲームをプレイされない方にも、興味を持ってもらえたらと思って作っています。作品を知って、好きになっていただいて、グッズ化だけでなく、アニメやデジタルゲーム化など世界が広がっていけばいいなと思っています。
――現在、イメージソング「そして惨劇は灰色に踊る」のMVも公開中ですが、今のボードゲーム界ではよくあることなのですか?
春木場:珍しいと思います(笑)。歌唱はWaMiさん、音楽制作を烏屋茶房さんと篠崎あやとさん、MVの制作は亡霊工房さんというすばらしいクリエイターが集結して、ゲーム以外でも力が入っていることがわかっていただけると思います。
渡辺:MVを見ていただくと、「アニメ化したらこんな感じになるのかな?」というビジョンも想像しやすいですし、見て気に入ってくださったらゲームをプレイしていただきたいです。
――ミステリーものはとっつきにくい印象もありますが、本作はMVがあって、ゲームのOPにマンガがあったりすることで、イメージしやすく、わかりやすいのがいいですね。
渡辺:マーダーミステリーは性質上、ネタバレできないため、プレイ前には何も見られない、中にはキャラクターさえ見られないこともありますが、このゲームはMVでキャラの紹介や雰囲気もわかるので、その点も新しいことに挑戦できたかなと思っています。
篠田:かなり掟破りですよね。「その秘密も明かしちゃうんだ!?」というところから始まって、このボリュームですから。
渡辺:僕ら欲張りすぎましたね(笑)。普通のゲームの数本分の手間と労力がかかりました。