この記事をかいた人
- タイラ
- 99年生まれ、沖縄県出身。コロナ禍で大学に通えない間「100日間毎日映画レビュー」を個人ブログで行いライターに。
田舎者あるあるだと思うんですが、音楽と触れ合う機会が多いと思うんです。家庭によりますが、田舎だと移動手段が車なので、親や親戚と出かける時は、必ず社内に音楽が流れていました。
なので小さい頃から音楽聞くのが大好きで、色んなジャンルを聞いていました。また2000年代のアニメの主題歌ってロックバンドのタイアップが多かったですよね。
特に『銀魂』や『BLEACH』はおしゃれでかっこいい曲が多く、アニメ好きな僕はそのような純粋なアニメソングとはちょっと違うけど、アニソンに含まれる楽曲を好んで聞いていました。
しかし「Don't say "lazy" 」はアニメオリジナルのまごうことなき「アニソン」です。僕が知っているアニメの中の人が歌うアニソンは『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』のような親しみ深いもの、というイメージだったので衝撃でした。
この楽曲を学園祭で聞いたor弾いたという人も多いと思います。実際僕は後にこの曲のためだけに親にエレキギターをねだります。
それからというもの僕はEDテーマの「Don't say "lazy" 」やOPの「Cagayake!GIRLS」を聞くために『けいおん!』を見始めてその魅力にハマっていきます。
そして、鑑賞していくうちに様々な名曲たちと出会っていきます。『けいおん!』の楽曲の多くは、大森祥子さん、Tom-H@ckさん、前澤寛之さん、小森茂生さんなど名だたる作曲家、プロデューサー、編曲家さんたちが参加しており「アニメソング」というジャンルに縛られない楽曲作製で多くの人を魅了しました。実際にCD売上ランキングや音楽番組での紹介などメディアの露出も多かったようです。
僕はそんな事などつゆ知らず、純粋に「世の中にはこんなかっこいい曲があるのか!」と興奮していたのを覚えています。僕が現在女性シンガーやガールズバンド好きな事にも大きく影響しています。
全曲レビューしたいくらい最高の曲たちがひしめいているのですが、今回はその中でも珠玉の楽曲を紹介したいと思います。
聞くと毎回必ず泣いてしまうのが、ライブイベントを収めたCD『けいおん!! ライブイベント ~Come with Me!!~』LIVE CD! より「ときめきシュガー」です。
この曲はアニメ本編に登場する劇中歌で、OP・EDと違って主人公たちけいおん部が製作した楽曲という設定になっています。女子高生が作った曲、ということで歌詞がポップで可愛らしいものになっており、主題歌たちとはまた違った楽しみ方ができるようになっています。
ではなぜ、僕は通常版ではなくてライブ版を推しているのかという話です。
『けいおん!』の楽曲はキャラクターソングを除いて、主人公・平沢唯(CV:豊崎愛生さん)とベース担当の秋山澪(CV:日笠陽子さん)が歌唱しており楽曲によってリードボーカルが変わります。
「ときめきシュガー」は澪担当の曲なので、ライブCDでも楽曲が始まったら日笠さんが歌い出すのですが、トラブル(イヤモニの不調?)が起きてしまいリズムが取れなくなってしまいます。
サビ前あたりで完全に追いつけなくなる。そこにコーラスを歌っていた豊崎さんが助けに入ります。日笠さんの変わりにサビ前半まで豊崎さんがリードを歌い、日笠さんが体制を建て直し、一瞬2人がユニゾンして歌う。
次のフレーズには豊崎さんはすぐさま元の旋律に戻り、その後最後まで日笠さんも完璧に歌いきります。
まずその対応力に「プロだな〜」と感動しますよね。「ときめきシュガー」の唯ちゃんバージョンを聞けることにも興奮、2人がユニゾンで歌う一瞬も最高。
関係性フェチの僕は日笠さんと豊崎さんが舞台裏で「さっきありがとね!」「どういたしまして!」とか言ってるのかな……と勝手に妄想&涙までしてしまいます。
そして、最大の泣けるポイントは『けいおん!』劇中とのシンクロです。第1期8話「新歓!」にて舞台上で急遽リードボーカルが変わるシーンがあるんです。
大事な新入生歓迎ライブで気合い入れてギターを練習してきた唯が演奏に集中しすぎて歌詞を忘れてしまう。そこで澪が急遽リードを歌ってピンチを救うというシーンです。
入れ替わってるーーー!!
澪に助けられた唯が今度は助ける側になるんです。アニメとの関連性も合わせてすごく貴重なシーンになっています。
この一部始終が収録された『けいおん!! ライブイベント ~Come with Me!!~』LIVE CD! は各種、音楽サブスクサービスで配信されているのでいつでも聞くことができますよ!
あなたも伝説の生き証人になろう!
そんな素敵な主題歌や劇中歌に惹かれて『けいおん!』を見る事が習慣になったのですが、僕の心をつかんで離さなかったのは本作のゆるふわ~としたギャグです。
原作はポップでコメディ要素満載の4コマ漫画で、ギャグのテンポもキレも小気味いい。そのままアニメにしてもすごく楽しくなるのは間違いないのですが、アニメではそこにシュールさ、間を取り入れたのです。
セリフ間や声優さんの語気をうまく調整して、ギャグやコメディをナチュラルな「ふざけ合い」のような雰囲気にし、物語の脇役にしたのです。ほんとに女子高生がじゃれ合っているような(ギャグセンスの塊な女子高生ですが)ゆるさが出ています。
キャラクター達の日常や音楽、青春をもっと楽しむための材料にギャグを使う。ギャグアニメと日常系のちょうど真ん中あたりを軸にして、時には笑いに振り切ったり、ある時はキラキラした青春、またいわゆる「萌」を見せるなどして『けいおん!』ならではの雰囲気が作られています。
そのバランスが美しいと感じます。
だからアニメ初心者の僕でもなんの引っ掛かりもなく視聴できました。彼女たちの掛け合いを笑っていたらどんどん「萌」という気持ちがどこからともなく湧いてきて……という感じでしたね。
そうして『NARUTO』のようなバトルや、『銀魂』のようなギャグじゃなくても「面白いアニメがある」という事に気づきます。その後もどんどんアニメを見るようになり自分の趣味として確立されていきました。
そんな「深夜アニメ」の入門作品としてぴったりな本作ですが、僕が『けいおん!』を見て美しいな~と思う点がもう一つあります。
それは主要なけいおん部キャラクターたちの「役割配置」です。
ちょっと良くわからないかと思うので、『ワンピース』を例にしてみます。主人公のルフィは麦わらの一味のリーダーであり、戦闘での活躍や仲間の士気を上げる役割を持っている他、『ワンピース』という物語を前に進める役割です。
このように、アニメのキャラクターは「作品内のグループでの役割」と「作品の方向性や物語展開にたいしての役割」を持っていると思います。
この「役割配置」は日常系や部活もの、恋愛ものと言った、キャラクターや人間関係がキーになる作品でこそ重要視されるものだと個人的には思っています。
『けいおん!』もその配置が美しい作品です。メンバーそれぞれが重要な役割を持っていて、それを完璧にこなしていく。一見緩く物語が進んでいるように見えて、キャラクターの動きはシステマチックになっています。
本作のキャラクター紹介がてら、実際にその役割を見てみましょう。
主人公の平沢唯は「先駆けて行動を起こし、けいおん部の方向性を決める」役割です。彼女の行動によって集団が団結します。それにともなって作品のストーリーの起点を作っていく「主人公の役割」を果たします。
ドラム担当の田井中律(CV:佐藤聡美)はボケたりツッコんだりしながら、集団のコミュニケーションを円滑にする管理職タイプ。頼りになるキャラクターですが、とんでもないミスをしたり責任を抱えきれなくなったりする事もありストーリーを転じさせる役割も持ちます。
ベース担当の秋山澪は唯の天然や律の冗談にツッコみながら、メンバーを見守る司令塔の役割です。キーボードの琴吹紬(CV:寿美菜子)は財力で部活を補助したり、個性的なイメージを見せる味変ボケタイプ。
この2人は唯や律の提案や行動を受けて発展させる役割をこなします。
最後にサイドギターの中野梓(CV:竹達彩奈)はもうひとりのツッコミで、学年が一個下であり、けいおん部に変化をもたらしてくれました。また彼女がいることで様々なドラマが生まれ、物語に深みがでます。
ゆるゆると日常が過ぎているように見えて、しっかり計算された「創作物」である事がわかります。この5人だからこそ生み出せる独特な空気感が本作の魅力だと僕は思います。
本作の最終回や劇場版のエンドロールを見ていると、どうしようもなく悲しくなりました。僕の初めての「〇〇ロス」は『けいおん!』ロスでした。
こんなに終わってしまって寂しい気持ちになるアニメやフィクションがあるんだなと、涙ながらに思ったのを今でも覚えています。その後、寂しさを埋めるようにたくさんアニメを見て、出会いと別れを繰り返した末に今があります。
人間は一度味わった感覚をなかなか忘れることができないもので、僕は今でもアニメやエンタメを見た時のワクワク、ドキドキを求め、現代社会をさまよっています。
そのきっかけとなった作品の一つが『けいおん!』なのです。
また、僕は2019年8月に本作の聖地となった滋賀県豊郷町と京都へ聖地巡礼に向かいました。もともと予定を立てていたのですが、結果的にその旅行は聖地巡礼と、作品や制作会社さんへの感謝の思いを伝える旅となりました。
舞台となった旧校舎群の中に入ると、まるで作品の世界に入り込んだようでした。建物内にはファンが自らの意思で持ち寄ったグッズ、ティーセット、楽器などが所狭しと並び、中には手作りのものもあって『けいおん!』が多くの人から愛されていることを実感。
他にも唯たちが修学旅行で訪れた嵐山、OPで描かれる鴨川の飛び石など作品に関連する場所に赴きました。
聖地巡礼中はもう感謝やら興奮やらいろんな感情が混ざり合って言葉で表しきれません。あれは一生忘れない経験だと思います。
この作品に出会って、音楽の趣味だとか、キャラクターを愛おしく思う気持ちや、創作物に関する興味などいろんなものを感じてきましたが、この旅行を通じて僕は「ファンをこのような気持にさせる作品を自分もいつか作ってみたい」と強く感じました。
こんなに作品を「好き」、「作ってくれてありがとう」と感じたのは後にも先にもありません。創作物とはこんなに人の心を動かすものなのだと改めて思いました。僕はその一ヶ月後に「自分でも表現ができる事はないか?」と思いブログをスタート。
そして現在のライターという仕事へと結びついています。
この出会いがあったからこそ、今好きな仕事ができているのです。これは『けいおん!』に思い入れがありすぎる僕の感想なのですが、本作は誰にでも楽しめて、元気が出て、活力になる作品です。
それが僕の人生を変えた作品、『けいおん!』なのです!
99年生まれ、沖縄県出身。コロナ禍で大学に通えなかったので、「100日間毎日映画レビュー」を個人ブログで行い、ライターに舵をきりました。面白いコンテンツを発掘して、壁に向かってプレゼンするか記事にしています。アニメ、お笑い、音楽、格闘ゲーム、読書など余暇を楽しませてくれるエンタメや可愛い女の子の絵が好きです。なんでもやります!