『ホリック xxxHOLiC』映画プロデューサー・宇田 充&原作編集者・桂田剛司インタビュー「実写化しても原作の良さは変わらない」
創作集団・CLAMPによる累計1,400万部突破の伝説的大ヒットコミック『xxxHOLiC』。同作を日本を代表する写真家にして映画監督である蜷川実花監督が実写映画化した『ホリック xxxHOLiC』が絶賛公開中だ。
蜷川監督としては『さくらん』『ヘルタースケルター』に続く3度目の漫画実写化作品である本作。原作のイメージそのままの妖艶な世界観や豪華キャスティングに、SNS上では公開前から多くの反響を呼んだ。近年数多くの漫画原作の実写映画作品が公開されているが、これほど話題になる作品はそう多くはないだろう。
今回はどのようにして『xxxHOLiC』が実写映画化されたのかを探るべく、本作の映画プロデューサーである宇田 充さんと、講談社ヤングマガジン編集部次長にして『xxxHOLiC』編集担当の桂田剛司さんの特別インタビューを実施。製作経緯から漫画作品を実写化する上での工夫や苦労を聞くとともに、「漫画作品を実写化することの意味」を映画サイド・原作サイドそれぞれの視点で語ってもらった。
映画『ホリック xxxHOLiC』は10年前から動き出していた
ーーまずはじめに『xxxHOLiC』実写映画化の経緯を教えてください。
宇田 充(以下、宇田):蜷川さんは常にいろんなことに挑戦されたいタイプの人で、2007年公開の『さくらん』、2012年公開の『ヘルタースケルター』に続き、3作目には何をつくろうかと『ヘルタースケルター』の撮影中から考えていたんです。
蜷川さんとしても蜷川組(蜷川実花のクリエイティブチーム)としても3作目には規模的にも予算的にも大きな挑戦をしたいと。その候補の一つとして挙がっていたのが『xxxHOLiC』でした。ちょうど連載が一区切りついた後くらいのタイミングだったかと。
蜷川さんから2013年1月4日に突然電話がかかってきて、「やっぱり『xxxHOLiC』をやりたい」と宣言がありました。今でもあの時のことをハッキリと覚えています(笑)。
ーー約10年も前から動いていたことに驚きです! ちなみに、蜷川監督はなぜ『xxxHOLiC』を選ばれたのでしょうか?
宇田:蜷川さんは写真家として国内外問わず様々な国で活躍しているのですが、日本を含めたアジアの良さを生かした作品をやりたいよねという話はあり。まさに『xxxHOLiC』には、ビジュアルのすばらしさはもちろんなのですが、世界を善悪や白黒ではない、アジア的日本的なテーマ性を持った世界観、メッセージが素晴らしいと。「この作品を映像化するのは、私でありたい!」という勢いだったかと。
また、次につくる作品は若い世代や自身の子どもに見せるものにしたいと思っていたのも理由の一つとしてあったと思います。
ーーなるほど。『xxxHOLiC』を実写映画化すると決めた後に、講談社へ連絡を?
宇田:はい。電話があってすぐの営業日に講談社さんに正式な連絡させていただき、桂田さんとやり取りし、本格的に動かす前にCLAMP先生にご挨拶へ伺いました。
桂田剛司(以下、桂田):一緒にCLAMP先生のスタジオがある京都へ行って、みなさんで会食したのを覚えています。
宇田:お酒をいただいた記憶があります。会食の時は真面目なトーンでお話をしていたのですが、お酒を飲んでからは砕けた雰囲気で(笑)。
桂田:昔に比べたらだいぶお酒の量は減っていますけど、CLAMP先生はお酒が好きですからね(笑)。
宇田:まるで(『xxxHOLiC』の壱原)侑子さんのようでした(笑)。
ーー実写映画化のお話をされた時のCLAMP先生の反応はいかがでしたか?
桂田:CLAMP先生は基本的に「メディアミックスのお話はありがたいことだ」と前向きに検討されます。『xxxHOLiC』の実写化は、以前WOWOWでドラマをつくっていただいた前例がありますし、さらに今回の映画は蜷川さんが撮っていただけるということなので、最初からポジティブな印象だったと記憶しています。いち編集者としても蜷川さんは『xxxHOLiC』のイメージにドンピシャだなと思っていたので、原作サイドにネガティブなものは何もなかったですね。
ーー実写化する上でCLAMP先生は意見や提案を言うことはあるのでしょうか。
桂田:これもCLAMP先生のスタンスなのですが、メディアミックスの際には「入る」か「入らない」かのどちらかなんですよ。例えば『カードキャプターさくら』のアニメのように「入る」場合は、脚本やコスチュームデザインなどに入って監修されます。ですが「入らない」という選択をされた作品については、一切口出しはされません。
クリエイターのみなさんは、原作を使用して表現したいことがあるから、映像化などのご提案をいただくわけです。CLAMP先生は、そのモチベーションを削ぐようなことをされず、「クリエイターの方々が感じた原作の面白さを形にしてほしい」、そしてできあがった作品を純粋に楽しみたいという思いがあるように感じます。『ホリック xxxHOLiC』に関しても、脚本などにはちゃんと目を通されているのですが、「蜷川さんの撮りたいものを撮ってください」というスタンスでしたね。