『ハコクの剣』神谷浩史さん、上村祐翔さんが語るリーディングライブの魅力「Kiramune Presents READING LIVEは声優という枠にしばられない、役者の新しいスタンダード」
Kiramune Presents READING LIVE 10周年『ハコクの剣』
ーー10周年を迎えた『Kiramune Presents READING LIVE』ですが、今作『ハコクの剣』はどのような経緯で作られていったのですか。
神谷:そもそも僕が福井さんと一緒にお仕事させていただいた『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(※9)という作品の時に、福井さんが本編の脚本を担当されていたのとは別にBlu-ray&DVDをAmazonで購入した限定特典として、付いていたドラマCDの脚本も福井さんが書かれていたんです。
そちらは本編とは全く違ったギャグテイストの作品で、それでも作品の内容を壊さない形に仕上がっていて、本編の「重厚な福井晴敏」というみんなが抱いているイメージとは、ドラマCDの脚本がかけ離れた内容だったから、気になっていました。ドラマCD収録の現場へ行った時に、福井さん自らが「この作品はこういう感じです」と説明してくださったので、僕が「これはギャグですよね。福井さんが書いたんですか?」と聞いたら、福井さんが「はい、僕が書きました」と言ったので、すごくふり幅のある脚本家さんだなと思ったんです。
ドラマCDの方は、僕が演じているクラウス・キーマンというキャラクターが主人公だったので、福井さんとドラマCD収録の度に福井さんとお話する機会があったんですよね。その中で、これだけふり幅があるんだったら、いろいろなものを書けるだろうと思って、リーディングライブの説明をさせていただいて、僕が「もし機会があったら、書いていただけたら嬉しいです」と話したら、福井さんが「はい。いいですよ」という感じでOKしていただきました。
その年にNHKで放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀』(※10)というドキュメンタリー番組で、その年に上演した『カラーズ』(※11)を取り上げていただいたんですよ。福井さんが番組をご覧になってくださっていたようで、僕が説明したリーディングライブというものをその時に知って、福井さんの方から「以前神谷さんが言っていたあれを僕もやりたいです」とおっしゃっていただけたので、正式にオファーをさせていただいて、プロットを書いていただいて、現在に至るというところです。
※9『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』:『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの1つで、2017年より公開されたアニメ作品。福井晴敏さんがシリーズ構成・脚本を担当し、神谷さんはクラウス・キーマン役を演じた。
※10『プロフェッショナル 仕事の流儀』:2004年からNHK総合にて放送されているTV番組。第一線で活躍中のプロフェッショナルに密着取材し、その仕事の流儀に迫るドキュメンタリー。神谷さんは2019年1月7日放送回「答えを求めて、声を探す~声優・神谷浩史~」に出演。
※11『カラーズ』:2018年上演作品。神谷さんは青柳スグル役を演じた。
ーーカーテンコールではKiramuneメンバーの吉野裕行さんのお話が出ていましたね。
神谷:吉野裕行くんは、今作の舞台の上には立っていませんけど、打ち合わせには参加してくれていて、「もしやるんだったら、俺もプロットを読んで意見を言ってもいい?」と言ってくれたので、「もちろんだよ」と答えて、吉野くんにもプロットを読んで感想を言ってもらいました。
新型コロナウィルス感染症の世情もあったので、10年目の大きい記念公演になるとはいえ、ここまでカロリーの高い作品を果たしてステージ上げて、お客さんが本当に見に来てくれるのかとか、ステージ上に大勢のキャストを乗せなくてはいけない関係上、それを成立させていいものかどうか、もっとキャストが少ない方がいいんじゃないかとか、いろいろなことを加味された上で、福井さんの方からご提案いただいたのがA案、B案という2作品。『ハコクの剣』とは違う作品もご提案いただいていたんです。
『ハコクの剣』ではない作品は、もう少し軽めでウェイトとしてはそこまで比重が大きくなく、カロリーもそこまで消費せずに作れるので、『ハコクの剣』はまた別のタイミングでやるとして、今回はこちらをやることにという選択肢もあると福井さんからもご提案されました。
でも、その時に吉野くんが「『ハコクの剣』の方がいいんじゃないか」と言い始めて、「まぁ、よっちん(吉野)がそう言うんだったら、僕もこっちの方がいいと思うし、10年という節目でこういうものをやれるんだったら、ありがたい」ということで、舵を『ハコクの剣』の方に切って成立しました。
ーー上村さんはお話を聞いて参加されたのですか。
上村:10周年記念公演の演目は『ハコクの剣』だと聞きました。稽古が始まる前の段階から、キャスティングを聞いていたので、まさか自分がこの記念すべき公演の座長、しかも神谷さんとのWキャストで演じさせていただけるのは、すごく光栄なことだと思うと同時に、責任重大だなという思いもありました。
『OTOGI狂詩曲-RE:Read-』の終演後、特報としてお客さんに『ハコクの剣』のPVを見てもらうということなり、まだ佐吉という役柄はしっかり固まっている段階ではなかったんですけど、『OTOGI狂詩曲-RE:Read-』のリハーサル中に、『ハコクの剣』のPV収録を神谷さんと一緒にさせていただいて、そのためだけに福井さんにも現場へ来ていただいたんです。そこでいろいろと福井さんからお話をうかがって、神谷さんが『ハコクの剣』をやるにあたって、どういう思いで取り組まれるのかということも聞くことができたので、僕としても本番スムーズに臨むことができました。