音楽
楠木ともり4thEP「遣らずの雨」で描いたのは「引き止める側の主人公自身の変化」/インタビュー

楠木ともり4thEP「遣らずの雨」インタビュー|“雨”をテーマにした楽曲で描いたのは《引き止める側である主人公自身の変化》

声優・シンガーソングライター、楠木ともりさん。これまで数多くの楽曲を生み出してきた彼女が、4thEP「遣らずの雨」で描いたのは“雨”。彼女の感性から生み出された“雨”をテーマにした歌を聴けば、憂鬱だった雨も、また違ったものに感じられるかもしれない。全4曲、どのような思いを込めて作っていったのか、たっぷりと話してもらった。

「山荷葉」の透明感、幻想的な景色を作り出すためにしたことは?

――今回も作詞に作曲に、楠木さん自身がたくさん制作に関わっていますが、締切に追われたりはしませんでしたか?

楠木ともりさん(以下、楠木):今回もすごく大変だったんですけど、前作の「narrow」のように全曲作詞・作曲をしたわけではなく、他のやり方も色々と試すことが出来ました。ですので、アイデアが思うように出ない曲もありましたが、作業が完全に止まってしまうということはなかったです。ただトラックコンペなど、初めてのやり方、そして初めてご一緒する方も多かったので、いつもと違うところで、どうしようかなぁと悩むことは多かったです。

他には時間のなさというところでは追われていた気がします。考える時間が確保できれば進むけど、なかなかそこに取りかかれない、みたいな。そういう意味では、どうやって作っていくかは模索していました。

――確かに、何か別の作業が残っていると集中できなかったり、まとまった時間がないとできなかったりしますよね。

楠木:なので今回もバタバタと駆け抜けてしまって、何かを掴めたかと言われるとわからないんですけど、作曲をお願いしたり、トラックコンペをしたり、自分でどこまでやって、どこからお任せするのかというのを曲ごとに変えながらできたので、そこはまた次の作品に活かせたらいいなと思っています。

――すごく大事なことだと思います。今回のEPのテーマは“雨”だそうですが、これはどのように決まったのでしょう?

楠木:梅雨にリリースされるということで“雨”がいいのではないかと、スタッフルの方に提案いただいたんです。日本って雨にまつわる色々な言葉があって、そこにストーリー性を見出だすことも多いので、このテーマなら色んなタイプの表現ができると思って決めました。

――では、雨をテーマにした歌を聴いて参考にしたり?

楠木:もともと雨の曲を聴いていたりはしたんですけど、曲を作るにあたっては聴かなかったです。聴いたら引っ張られちゃいそうな気がしたので。自分なりの雨をイメージし、サウンドを膨らませて、歌詞の中にも雨っぽさを散りばめ、そこから詰めていく。今回はいろんなアプローチの仕方をしているので、雨ひとつとっても、いろいろな表情が見える楽曲になったと思います。

――まさに四曲四様といいますか、それぞれ色が違いますよね。最初に公開されたのは「山荷葉」です。これも花が雨などの水滴を吸うと透明になるという神秘的な植物ですが、曲もすごく神秘的で。

楠木:雨とは別に“透明感”というのもテーマとして描こうと。それを象徴しているのが“山荷葉”かなと思って、優しい雨を想像して書いていきました。

ただ、一番最初に取り掛かった曲でもあったので、雨というテーマの幅が広すぎて、どこを描くかが定まらなかったんですよね。そこで、いつも曲を書くときは景色を考えながら作っていたなと思って、雨がきれいだと思う瞬間の景色を考えました。

そこで、山奥に鳥居があって、ちょっとじめっとした中で優しく降る雨が思い浮かんだんです。神聖な空気の中で雨が降っていたら幻想的だなって。

――まさにリリックビデオの絵のような景色ですね。

楠木:そうなんです!4thEPの制作に取り掛かる前から、日本を感じる神聖な雰囲気の曲で、アンビエント・エレクトロニカ系の曲を作りたいですと、スタッフさんには話していたので、サウンド感はそこから引っ張ってきました。

――編曲のarabesque Choche(Chouchou)さんは、「sketchbook」でも編曲をしていた方です。

楠木:今回は、こういう景色を思い浮かべているんですという話から編曲を相談させていただき、参考の写真もお送りしました。

和の雰囲気だけど、そこに寄りすぎず、少し感じる程度でお願いしたいですとか、この楽器が使えたらいいななど、細かい話をしてアレンジを練っていただきました。

――雨の音の中に聴こえるピアノや、リズムが心地よいアレンジでしたね。

楠木:アレンジいただいたものは想像通りだったんですけど、雨の感じはもっと欲しいと思ったので、最初の雨のSEは私からお願いしました。でも水滴をイメージした、ぽちゃんという音が入っていたり、BGMのような音楽と、そうじゃない日常的なところの間にあるような、まさにアンビエントな雰囲気を出してくださったので、やっぱり「アラベスクさんにお願いして良かった」と。

――雨の音が入ることで、外感が出ますよね。

楠木:「sketchbook」が部屋の中という閉ざした空間のイメージで、静かなアレンジだったんですけど、今回は広大な景色、山のどこかにある景色がすごく想像できました。

――Bメロのアレンジが幻想的で。おっしゃっていた少し和な感じも出ているなと思いました。

楠木:実はこの曲だけ私が作ったアレンジデモをお渡ししているんです。自分でトラックを作ったのは初めてだったんですけど、何となくのイメージだけでも送りたくて。

すごく時間はかかったんですけど(笑)サウンドのイメージが湧いたし、言葉だけでは足りないと思ったのでやってみたんです。そのデモを何箇所か採用していただいていて。Bメロの〈誰もが泡沫〉のところのアルペジオっぽいピアノのループは採用していただいた部分なので、嬉しいです。

――あと、鈴の音も良い雰囲気ですよね。

楠木:良いですよね。編曲をお願いするときには伝えていなかったのですが、Chouchouさんの和の雰囲気がある曲に鈴っぽい音が入っているのを知っていたので、1回でも入っていたら嬉しいなと思っていたんです。そしたらしっかりと入れてくださっていて。同じ景色を思い浮かべられているなと感じて嬉しかったです。

鈴って、入るだけで透明感が出ますよね。この曲はメロの運びも大きく、だらっとしてしまう可能性があったけど、鈴が入ることでハッとするというか。メリハリが付く感じで、とても素敵だなと思いました。

――コーラスも含めて、ウィスパーなボーカルも雰囲気がありましたよ。

楠木:アラベスクさんが付けてくださるコーラスは本当にきれいなんです。「もう少しこういう感じで歌ったほうがいいと思います」というメッセージをアラベスクさんからいただき、儚く消えそうな感じもありつつ、少しオトナっぽくしたボーカルで歌いました。「sketchbook」よりも喉に力を入れずに歌った感じですね。

――ラストの〈いつの日か〉の息の抜き方とかも本当に素敵で。

楠木:最近はキャラクターソングでもエアリーに歌うお仕事をいただくことが増えてきて、ニュアンスの引き出しは増えたような気がします。これだけ音数が少ないと、質感も全部聴こえてしまうから、集中して歌わないと言えないので、なかなか納得がいくテイクが録れず……。この部分はたくさん録りました。

 

――細かいですけど、最後のピアノの楽器自体から出る音がすごく良いんですよね。

楠木:たぶんペダルを上げた音だと思うんです。アラベスクさんがどんなピアノを弾いているのかわからないですけど、あの音がいい味を出していて。エレクトロニカだと電子音も混ざっているから、そこで急にペダルを離す音が入るとアナログ感が出ちゃうからどうなんだろうと思ったけど、聴くとそこが良かったりする。だから組み合わせが絶妙なんですよね。

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