『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』古谷徹さん、古川登志夫さん、成田剣さんインタビュー|本当はアムロもあそこに残りたかったのかもしれません
ドアンの印象は? そして映画で描かれた結末について、改めて語る
ーー作品で大きかったのは、ククルス・ドアンの存在ですけど、この劇場版のドアンの印象はいかがでしたか?
古谷:完成されたオトナ、という印象ですよね。エースパイロットで戦闘は当然強い。でも子供たちを脱走してまで守りたいと思う優しさがあって……。本当に素敵なオトナだと思います。
ーードアン役の武内駿輔さんのお芝居はいかがでしたか? 掛け合ってはいないと思うのですが。
古谷:今回は誰の声も聞かずに1人で収録したのですが、僕がアフレコをしたときは、ドアンが武内くんだというのも決まっていなかったんです。まだ探しているみたいな感じだったんですけど、自分なりに、今回のドアンのルックスを見て、そこから声をイメージしたんです。それは、TVアニメ15話の徳丸完さんの声でもなく、今作のドアンからイメージしたものなんですけど。
なので、ドアン役が武内さんだと聞いたのが、3月9日に行った『ザクの日 スペシャル会見』だったんです。一緒に舞台に登壇するのだったら、武内さんがドアン役なのかな?って(笑)。
会見をするのに聞いたことがないのはどうかと思うので、その時点での映像を見せてもらったんですね。そうしたら自分がイメージしていた声にぴったりだったので、すごく驚きました。芝居も、武内さんが僕の声を聞きながら演じてくれていたから、すべて絡むように、会話が成立するように演じてくれていたんです。それもまったく問題がなかったので、本当に彼で良かったなと思いました。
ーー古川さんや成田さんは、若手のお芝居という点ではいかがでしたか?
古川:僕、武内くんとはほかの作品で一緒になったことがあって、帰りがけに駆け寄って来てくれて、「実は私がククルス・ドアンを演じます」と、非常に丁寧に挨拶をされて、礼儀正しい方だな、そしてずいぶんお若い方が演じるんだなという印象でした。
演技的に言うと、僕や徹ちゃんや秀ちゃん(シャア役:池田秀一)はあれだけど、その後を継がれている方は皆さん達者な方が選ばれているので、そういう意味では安心して観ていられますね。
成田:武内さんは意外と若いんですよね。声からは想像もつかないですけど。こんなに若い人がこういう声を出すんだと、ミスマッチしているようなところが魅力ですよね。子どもたちが何人も出てきますけど、みんな個性的なんですよ。それぞれの性格をよく掴んでいらっしゃる。そういうお芝居が伝わってきたので、本当に素晴らしいなと思いました。
ーーやはり、みんなで一緒にアフレコをしたほうが良いのでしょうか?
古谷:僕は結果的に武内さんと一緒にやらなくて良かったと思っているんですよ。もし一緒だったら、お互い気を使いすぎちゃったのではないかと思って。かえって別録りで良かったんだろうなって。
古川:別録りのほうが良い場合っていうのも実際あるんですよね。必ずしも今の録り方が全然ダメだと思わなくて、場面によってなんですよね。
古谷:そうなんですよ。まぁ一緒に録ってたらどうなっていたかは今となってはわからないんですけど、多分気を使っちゃったんだろうなぁって。
ーー15話でも、最後はドアンに武器を捨てさせました。この行動については、どう思いますか?
古谷:あの時点で、ジオンにとってあの島の価値はなくなったと思うので、追手が来ることはなくなるのではないかと思うけど、ザクがあるから、ドアンがエースパイロットであるから両軍にとって脅威なんですよね。その意味で、兵器を捨ててしまうことによって、兵士ではなくて、子どもたちにとっての父親代わりになれるんだなと思いました。
ーーアムロがそのことに気付いたことは大きい気がして。何かが変わったのかなと思いました。
古谷:そうですね。あの島での生活の中でアムロは成長しましたし、本当はアムロもあそこに残りたかったのかもしれないんですよね、ガンダムも捨てて。戦争に巻き込まれる前はそういう優しい少年だったわけで。これまでのホワイトベースの仲間との戦いの日々があったからこそ、戻らなければならなかった……。
ーーそういう意味では、今のアムロは兵士なんだと感じる衝撃的なシーンも途中でありましたよね?
古谷:そうなんですよ……。あのシーンだけですね、一発本番OKではなかったシーンは。僕自身、こういうアムロは描いてほしくなかったと本音では思っていましたし、アムロはそんなに残酷なことができる少年ではないと思っていたところもあって、ちょっと迷いが出てしまったんです。
ただよく考えてみると、そのシーンに至るまでに、アムロとドアンそして、あの島の子どもたちとの触れ合いと距離感が描かれているんです。もう家族のような思いもあって、あの時点で、守りたいという気持ちが本当に強かったのではないかと思うんですね。
そこでためらってしまったらマルコスが危なかったかもしれない。子どもたちも危険な目に遭うかもしれない……そこまでの思いがあったんでしょう。だから泣きながら、そういう行為をしてしまうわけですけど、そこで僕自身も納得して演じることができました。あれを描くことで、戦争の悲惨さがより鮮明になる気がしました。
ーーでは最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。
成田:『ククルス・ドアンの島』は、ガンダムを象徴しているような作品だと思っています。今までずっと応援してきてくれた方、ガンダムを見て育った方にとっては、新鮮さや懐かしさがある映画だと思います。映画を観て、楽しんでいただければと思います。そしてガンダムの魅力をまだ知らない若い方々が観て、喜んでもらえれば素晴らしいことだと思います。
古川:僕もガンダムを凝縮したような作品だと思います。最後にアムロがザクを投げ捨てるのは象徴的なシーンだと思うんです。あれが、戦争、人類同士の殺し合いに終止符が打てない人類に対する、「ちゃんとした理がないと変だろう」という、安彦さん風の考えなのではないかと思うんです。
だから安彦さんってリアリストだと思うんですよね。そういう意味では、宇宙の物語とかSFではなく、現実、今世界で起こっていることと同じではないかという視点もあるので、そこも観ていただきたいです。
古谷:今のアニメーションの技術で、ファーストガンダムの1エピソードが映画になったことを本当に喜んでいますし、大好きなアムロ・レイという少年を再び大スクリーンで演じられたことを光栄に思っています。安彦監督の『THE ORIGIN』では1年戦争をより詳しく描いていますから、できればまたアムロを演じたいですね。そのためにも、ぜひガンダムファンの皆さんの力を貸してほしいなと思っています。何度も劇場に足を運んでください。
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映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』
公開時期:6月3日(金)全国ロードショー
配給:松竹ODS事業室
STORY
オデッサ作戦を控えたアムロたちホワイトベース隊は、「帰らずの島」と呼ばれる無人島での残置諜者(敵地に残って破壊諜報活動などを行う兵士)掃討の任務を拝命する。
捜索に当たっていたアムロは1機のザクと遭遇、囚われの身となってしまう。目覚めたアムロが見たのは「ククルス・ドアン」と名乗る男と20人の子どもたちであった。
アムロは失ったガンダムを取り戻し、島の秘密へとたどり着けるのか?
メインスタッフ
企画・制作:サンライズ
原作:矢立 肇 富野由悠季
監督:安彦良和
副監督:イム ガヒ
脚本 : 根元歳三
キャラクターデザイン:安彦良和 田村 篤 ことぶきつかさ
メカニカルデザイン:大河原邦男 カトキハジメ 山根公利
総作画監督 : 田村 篤
美術監督:金子雄司
色彩設計:安部なぎさ
撮影監督:葛山剛士 飯島 亮
CGI演出:森田修平
CGI監督:安部保仁
編集:新居和弘
音響監督:藤野貞義
音楽:服部隆之
製作:バンダイナムコフィルムワークス