音楽
KOTOKO『すぅぃ~とさいくろん-☆いぇいっ☆-』インタビュー

「新しい世代の人にとってはまだまだ一般的ではない電波ソング。今やるなら私でしょ!って」 KOTOKOさんが念願の電波ソングアルバムをリリース! おじさんとマシュマロに、タコですよ!? 超ロングインタビューいぇいっ☆

問題作「おじさんとマシュマロ」

──例えば、この曲の中に出てくる<課金>という言葉も、電波ソングが世に知られるようになった時代には、あまり一般的な言葉じゃなかったですよね。ある意味、これまでの曲とは対照的というか。

KOTOKO:そうなんです。曲を長く愛してもらいたいので、時代が変わったときに分からなくなってしまうような言葉はあまり使わないようにしてきたんです。でも歴史の本を見るかのごとく「そういう時代だったんだね」と後の世代の人たちが知る材料にもなっていくのも良いなと思って。それを90年代や80年代の音楽を特集した番組などを見る中で確信したので、あえて狭い世界を切り取りました。あと問題作が「おじさんとマシュマロ」。

──(笑)確かに問題作ですね。

KOTOKO:Aiobahnさんが「こんな歌詞をつけてくるとは」とがっかりしてるんじゃないかな、と少し心配です(笑)。

──きっとそんなことないですよ(笑)。ほっこりしました。そもそも「おじさんとマシュマロ」ってワードはどこから出てきたんです?

KOTOKO:実は地元・札幌の局アナがマシュマロを試食するときに、「おじさんとマシュマロ」って自虐的に言ってたんですよ。それを聞いて「なんてパワーワードなんだろう!このタイトルで絶対1曲書きたい!」って思っちゃったんです。この曲はおじさんに対する愛しかない曲です。電波曲は“かわいい”がいちばんの要素なんですけど、かわいいって、女の子、子ども、動物だけのものじゃないよ!っていう。かわいいのジャンルの中におじさんも入るよ!ってことを言いたい曲。

──愛がすごい! 曲が先にできてたんです?

KOTOKO:曲は曲で作ってもらってました。いつもは曲を聴いてから歌詞やタイトルを考えるんですが、今回はまったく逆だったんです。作家さんにオファーしたあとすぐ、曲もないうちから、タイトルに入れたいワードを全部書きだしておいて。スマホに思いついた言葉をどんどん書き出していったんです。見ます?

──ぜひ!(スマホを見せてもらい)タイトルにない言葉もありますね。

KOTOKO:書きたいものが15曲分くらい溜まった状態だったんです。電波曲に関してはアンテナがビンビン動くみたいで。アイデアが止まらず、曲がくるのを待ちきれないという状況でした(笑)。だから入り切らなかった言葉は歌詞の中に入れているんです。例えば、ここにある「アナネズミ」という言葉は「Alice in Joker?!」(2曲目)の歌詞に入れてます。こうやってアイデア出しをして、その後、「この作家さんの曲にこの歌詞をつけたいな」ってなんとなくあたりをつけておくっていう。

──このアイデアメモの中にある「タコですよ?」は、私がいちばん好きな曲です。

KOTOKO:すごくうれしい! 

──最初「タコですよ?」って何かの比喩かと思ったんです。そしたら本当にタコの話で(笑)。<唐揚げ おでん ガーリック炒めに天ぷら きゅうりとは酢の物 タコライス>ときて、<オイ残念!>と。しかもラストにはエロスも含まれている。

KOTOKO:そうなんです!(笑)「タコですよ?」は歌詞まで全部浮かんでいたのでワンコーラス分歌詞を書いていたんです。それをもらった曲に重ねて。

──すごい、見事にハマったんですね。

KOTOKO:ハマりました! D.wattさんが書いてくださった曲と相性抜群だったんです。文字数を合わないところを削ったり、足したり、入れ替えたりするくらいで。最初のアイデアをほぼほぼ使っています。

──D.wattさんは「タコですよ?」の歌詞の内容は知らずだったんです?

KOTOKO:事前にリモートで打ち合わせをしていたんです。そのときに「高速ユーロビートが良いです」とお伝えしていて。で、さっきお見せしたタイトルの中から、5つくらいD.wattさんに合いそうなタイトルを伝えていました。その中に「タコですよ?」が入っていたんです。その後、レコーディングで会ったときの第一声が「本当に、タコですよ?になったんですね」でした(笑)。

──あはははは。D.wattさんもびっくり(笑)。

KOTOKO:その前に収録されている「ハピラキ☆ベジタボーイ」も曲がくる前に全体像がありました。もともと自分のデモ曲に「ハピラキ☆ベジタボーイ」というタイトルをつけていたんです。ハピラキ☆ベジタボーイは、草食男子のことを指してるんじゃなくて、自分が“無農薬野菜”なんです。さっき電波曲にはエロスも必要……といった話をしたじゃないですか。「ハピラキ☆ベジタボーイ」は一見爽やかな電波に聴こえるんですけど、ちゃんと歌詞を深く読んでいくと「なるほどね」って感じだと思います(笑)。

──それって他の曲にも言えることですよね。例えば6曲目の「桜舞乱心*いろは詩」とか。

KOTOKO:そうですね(笑)。浮気した男性に対してあそこを切っちゃうよ!っていう歌詞です。男性が聴くとゾクッと、女性が聴くとスカッとすると思います。

──女性と言う切り口で言うと「Alice in Joker?!」はゾクっとしました。

KOTOKO:「王子様に出会いたい」という曲なんですけど、アリスに見える女の子の中身はジョーカーだよっていう本当は怖い童話……という感じです。女の子は好きになってくれるかもなって思ってます。

桃井さんとタッグを組んだ「ライブハウスの天気予報」

──「タコですよ?」のあとが、桃井さんの手がけられた「ライブハウスの天気予報」。同じ電波曲と言えど赴きがガラリと変わりますよね。

KOTOKO:「タコですよ?」などのぶっ飛びソングが強烈な色香を放っているので、最後の2曲が正統派に響きますよね(笑)。掛け声も入っていて、十分電波してるんですけど。

──ラスト「すぅぃ~とさいくろん-☆いぇいっ☆-」も含め、最後の2曲はメッセージソングとして響きました。

KOTOKO:あ、それは間違いじゃなくて。ラストの2曲はメッセージソングとして成り立たせたかったんです。

──そうだったんですね! では、まずは「ライブハウスの天気予報」の制作についておうかがいしてもいいでしょうか。

KOTOKO:桃井さんの曲に関しては全部おまかせで。「こんな感じで」などはオーダーせず、桃井ワールドを出していただきたかったんです。桃井さんに個人的に「今回お引き受けいただきありがとうございます」というメッセージを送ったら、桃井さんから「(当時)自分はやりたいと思ってきたことを歌にしたら、まわりが電波と呼ぶようになったんです。今、KOTOKOさんに声高に言って欲しいと私が思っていることを歌ってほしいから、それを曲にします」といった返事をいただいて。そのワードを見た瞬間にグッときました。「これはいい曲になるな」と確信しましたね。桃井さんとお話できたこともうれしかったです。

──実際に本当に素晴らしい曲で。そして、KOTOKOさんが作詞・作曲ともに手がけられた「すぅぃ~とさいくろん-☆いぇいっ☆-」。これはライブで盛り上がる曲ですよね。今だからこその工夫もあって。

KOTOKO:今はライブで声が出せるか出せないか、瀬戸際の時期ですけど……万が一出せなくても楽しめる曲を作りたくて。手拍子や足踏みができる曲を作ろうっていうのはずっと構想していたんです。アイリッシュダンスのようなアレンジにしてもらったので、みんなで腕と腕を絡ませたりするダンスを……知らない人が隣にいても、一緒にくるくる回ったり、人と一緒に手拍子したりするっていうのがこの曲の最終目標。コロナ禍が明けたら、みんなでダンスして、外国の田舎のパーティみたいなことをライブハウスでしたいなって思ってます。老若男女、動物も人もみんなで入り混じって踊ったらハッピーじゃん!って。世界の平和を願った曲でもありますね。

──アイリッシュな雰囲気ですが、ジャングルビートという言葉もありますよね。

KOTOKO:よーく聴くと後ろでジャングルビートも鳴ってるんです。言葉が先にあったので、アレンジをしてくれたC.G mixさんに「ジャングルビートを入れて下さい」とお願いしました。

──なるほど! そして、<回転アーップ↑↑>という言葉から、後半どんどん畳み掛けていきます。

KOTOKO:これもやりたかった演出で。どんどんテンポが速くなっていく曲を作りたいなと思ってました。テンポひとつアップのところはまだ良かったんですが、2回目のアップのところがかなり速くて大変で(笑)。最後の<まーわれ まーわれ まーわれ らんらん>ってところは、MとLの音が入ってるんです。Mの音は口をつぐむ、Lは下を上顎につけるんですが……これってボイストレーニングで重要な音なんです。それを高速でやるのは、ボイトレの練習にもなります。

──つまり、それだけ技術がいることなんですね。

KOTOKO:そう! それであのテンポっていうのがすっごい大変なんです! 表情筋をつかいます。だからボイトレ曲として、家でたっぷり練習して、完璧に歌えるようにしてほしいです(笑)。本当は掛け合いもしたいんです。(声出し)できるようになるときのために、みんなには全曲練習してきてほしいです。やってて楽しい掛け合いがたくさんあるので! 「タコですよ?」なんてサイコーですよ!(笑)

──8月から「KOTOKO LIVE TOUR 2022 “すぅぃ~とさいくろん-☆いぇいっ☆-“ 」がはじまります。タコTとか作って欲しいです……!

KOTOKO:あははは。実はツアーグッズの中でタコはピックアップされています(笑)。今回、はじめて光る棒を発売する予定なんです。これまでちょっとしたペンライトや、楽器を出したことはあるんですけど、いわゆるキンブレは初めて。しかもただ光るだけじゃなく、ボタンを押すと声が出る仕様になっています。で、その中に「タコですよ?」って声も入ってます(笑)。

──なんと、「タコですよ?」の声が! それはライブのどのあたりで鳴らせばいいんでしょう?(笑)

KOTOKO:好きなところで鳴らしてもらえたら(笑)。持ち運ぶときの電車の中とか、全然違う場所で鳴ってしまったら……と想像すると笑ってしまいますが。

──マシュマロの販売予定はないんですか?

KOTOKO:(笑)。光る棒だけは話が進んでるんですけど、ほかは今話しあっている最中で。マシュマロも出したいですね。この場(取材現場)でも分かる通り、スタッフ、関係者の皆さんが……ほぼほぼおじさんじゃないですか(笑)。皆さん歌詞が刺さりまくってるみたいで。<おじさんなのに>の<なのに>がヘイトが入ってる感じがしてつらいって皆さんおっしゃるんですけど、だったら「おじさんなのに◯◯ステッカー」とかどうかなって(笑)。その◯◯に自分のアイデンティティを主張してもらいたいなあ。私とお揃いのジャージも検討中です。実際にどうなるかは分からないですけど、今回はパワーワードが多いので、どれをグッズにするのか迷ってるところです。

「いぇいっ☆」は究極にポジティブな言葉

──ところで、今回のタイトルの「いぇいっ☆」って言葉がKOTOKOさんらしいなって思ってたんです。自然と広角が上がってしまう言葉というか。

KOTOKO:そうそう(笑)。『tears cyclone -廻-』(2018年リリースの7thアルバム)、『tears cyclone -醒-』(2019年リリースの8thアルバム)って続いたじゃないですか。「次は電波でいきたいな」って言ってたときに、次は『tears cyclone -いぇいっ☆ -』とか良いんじゃない? って話をしていたんです。そこからパロディのような形でつけたタイトルです。電波ソングの掛け声は「きゅんきゅん」「はいはい」とかが有名ですけど、私は「いぇいっ☆」が好きなんですよ。みんなハッピーな雰囲気でいい言葉だなって。「いろいろあるけど、いいじゃん!」っていうような、究極にポジティブな言葉だなと思っているので、ふざけ半分、でも力の強さもあるので、自分的には最高のタイトルがつけられたなと思ってます。

──魔法のコトバなんですね。

KOTOKO:そうそう! そんな感じですね。

──それをたくさん浴びれるライブを楽しみにしています。

KOTOKO:はい、絶対に楽しいものにします! さきほども話しましたが、ライブでは「巫女みこナース・愛のテーマ」の早口パートも、ライブで毎回チャレンジする予定です。私がちゃんとできるか、皆さんには毎回見守ってもらいます(笑)。私が早口パートを歌えるか見に来てね!

インタビュー・逆井マリ

 

神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。

この記事をかいた人

逆井マリ
神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。

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CD情報

初回限定盤

4,400円(税込)

アニメイト特典:マイクロファイバーコースター(100mm×100mm)

※特典は無くなり次第、終了とさせて頂きます。ご了承下さい。
※通常盤は対象外となります。

 

通常盤

3,300円(税込)

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