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- おかもとみか
- 2021夏デビューのオトナ女子新人ライター。ミドル層の男性声優さん関連記事を書くことが多いです。
最後はクラシックバレエの世界に飛び込んだ男子中学生の奮闘と甘酸っぱい青春を描く『ダンス・ダンス・ダンスール』! 本作は『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中のジョージ朝倉先生のアニメ化作品です。
「ダンスール」とは「ダンスール・ノーブル」、クラシックバレエにおいて主役級の女性ダンサー「プリマ・バレリーナ」に対し、その相手役を務める資格のある男性ダンサーをそう呼びます。
社交ダンスを扱った『ボールルームへようこそ』やフィギュアスケート作品『ユーリ!!! on ICE』にハマった方にはぜひオススメしたい本作の魅力、お見知り置きを!
物語は幼い頃の主人公・村尾潤平がクラシックバレエと衝撃の出会いをするシーンから始まります。ステージ上で力強く、しかし華麗に舞う男性のバレエに釘付けになった幼い潤平は、バレエに強い憧れを持ちつつも、父の急死を機に「男」らしくあることを誓い、その想いを封印してしまいます。
中学2年生になった潤平は同じクラスの五代都に誘われたことをきっかけにバレエを始めることに。しかし、「男らしくありたい」と始めた截拳道(ジークンドー)の恩師やサッカー部仲間である友人たちにバレエを習っていることを言い出せず悶々とします。
そんな潤平ですが、第3話では都のいとこ・森流鶯(るおう)が全校生徒の前で堂々とバレエを踊る姿に、ずっと悩んで来た「男らしいってなんだ」の答えを見い出し、バレエを習っていることを友人達へカミングアウトすることに──
昨今、ジェンダーフリーが浸透しつつある現代ですが、潤平たちが持っていたような「男らしい=かっこいい」「男らしくない=かっこ悪い」という意識はまだまだ強いのかもしれません。一般的によく知られる「バレリーナ」という言葉からも「女性」のイメージが強いバレエに憧れた潤平が、友人たちのからかいもはねのけカミングアウトする姿は「好きなものに性別なんて関係ない」を見事に体現しています。
流鶯に対するクラスメイトからのいじめのシーンが心苦しい瞬間もある第3話ですが、作品の肝となっているので、潤平の心の移り変わり・決心と流鶯の美しいバレエをぜひ見届けてください。
本作ではクラシックバレエのシーンがたびたび登場します。
そのダンスシーンは、人間の体の動きが非常にリアルかつ、なめらかに美しく描かれていて、ときめきが止まりません。
本作の制作会社は『呪術廻戦』や『ユーリ!!! on ICE』など数々の人気アニメを生み出している「MAPPA」です。MAPPA作品といえば、アクションシーンの作画においては定評があり、本作も大いにその特色が活かされた映像となっています。
特に本作では、リアルなアニメ作画を追求するためにモーションキャプチャーでバレエシーンを撮影しているそうです。メインキャラクターそれぞれにモーションアクターがいるというこだわりも、注目したいポイントとなっています。
前述した通り、潤平は中学2年生からバレエを始めたため、未経験者状態だった第1話、第2話あたりでは身体能力の高さこそ窺える瞬間を見せつつも、本物のバレエの優美さなどが垣間見られないアクションとなっています。
ところが、都の母・千鶴の教えを受けていくにしたがって、そんな潤平の動きがよりバレエ本来のダンスに近づいていく過程も作中で実に繊細に描かれています。
第5話では「洋舞祭り」のリハーサルから描かれていますが、そこで潤平の足取りがリアルにドタバタという音で表現され、千鶴に注意される場面があります。また、流鶯と踊るシーンでも、千鶴に「もっと(手を)引っ張って!」と注意されている通り、潤平が流鶯の思うがままに振り回されている様子が見られるなど、細部にわたって凝った演出が見受けられます。
また、第6話から潤平と流鶯は「生川はるかバレエ団」主催のサマースクールに参加しますが、その初日の潤平のダンスの着地音は最終話となる第11話の最終日で、変化を遂げています。
最終日、未成熟ながらもレッスンの成果を披露する潤平の足取りは実に軽やか。まるで羽が生えて飛び回っているかのような華麗さも備わって来ています。
潤平以外でも、バレエシーンはつま先立ちする足の様子や手の角度、繊細な指の動きなど、あらゆる所作が実に美しい! 忠実なダンスの再現が随所に見られます。
イッキ見ではそんな潤平の着地「音」の変化のような細かいポイントにも注目しながら、潤平の成長っぷりと華のあるダンス、そして全編にわたって表現されているバレエの美しさにぜひ魅了されてください!
「生川はるかバレエ団」のサマースクールで、潤平と流鶯が出会う個性豊かな仲間達。彼らの演出も実にこまやかに描かれています。
まずはその体格。
福耳が特徴的な姫乃小路寿。スクールの講師から「バレエの技術・センス・素質・資質なし」と評されているとおり、背もあまり高くなく、あくまで一般的な体型で描かれています。
次に、講師から「資質は申し分ない!」と評価され、バレエ団のトップを務める生川綾子からも注目されているというイケメン安田海咲は、背も高く、首や手足も長い、すらっとしなやかな体格です。
そんな2人と対照的な田倉大和は身長が180cmで大柄な点と、バスケから転向して来たというエピソードもあり、肩のラインも厚く、腕や足にもしっかりと筋肉がついている体型で表現されています。
がっちり派な大和と比べると潤平も流鶯も体のラインが細く、海咲に近い体格で描かれていることから、それとなくバレエの素質・資質の高さが窺えるともいえます。
そんなそれぞれの体型の描かれ方もさることながら、個人的に筆者が注目して欲しいのが
第7話、まだ出会ったばかりで対立をしていた海咲たちと潤平・流鶯とのピルエット対決後、一緒に食事をするなど仲を深め、向かった公園でのシーンです。
公園の池の中に立つ細い丸太の上で、5人がプロムナードと呼ばれるバレエのポーズを決めているシーンが登場します。つま先立ちする5人の足が大きく映し出される瞬間があるのですが、5人の並び順からそれぞれ描かれているつま先が誰のものか推察出来ます。
見比べてみると、大和や寿が一般人に近い普通の足の甲の形になってしまっているのに対して、他の3人の甲はしっかりと「バレエダンサー」同様の形になっているのがわかります。こんなところにもバレエの素質が垣間見えるのか! と衝撃を覚えました。
そんな細かな描写のこだわりに筆者はときめきを感じてしまい、「【イッキ見】したからこそ気づけたのかも!」そんな思いを持ちました。
サマースクールでの日常は、年齢の近い仲間たちと潤平・流鶯の交流が賑やかに描かれているかたわら、どうしてもSSクラスに入りたい海咲の策略も気になります。このサマースクールで認められた1人だけが得られるというスカラシップは誰になるのか……目が離せません。
いかがだったでしょうか。
各作品の見どころはもちろんですが、【イッキ見】することで見えてくるもの、気になるシーンを振り返ることで得る発見など、新たな気づきになっていたら嬉しく思います。
しかし、本稿はあくまでも個人的な「口コミのひとつ」にほかなりません。また、筆者が視聴叶わなかった作品の中に「おもしろかった!」が潜んでいるのでは? アニメ好きのみなさまの2022年春アニメ作品の感想がとても気になります。
「この作品もおもしろかったよ」と思った方はぜひ、SNSにてオススメ作品を教えてください。
[文/おかもとみか]
2021夏から駆け出した新人ライター。大人になってから乙女ゲームに触れたことがきっかけで、男性声優さんに興味を持ち、本格的にアニメを見始めた文学部出身のオトナ女子。初めての乙女ゲームは『ときめきメモリアルGirl's Side(1st)』。作品などの聖地巡礼やコラボカフェも好き。ミドル層の男性声優さんやKiramuneレーベルについての記事を書くことが多いです。