「〇〇色の表紙ってもしかして…」――BL漫画における表紙カラーとストーリー内容には関係性があるのか?BL好きライターが調査してみた!【ネタバレあり】
【涼しげブルー!】
みなさんは“ブルー”が表紙の作品にどのような印象をお持ちですか?
私は、言葉に「青」が含まれているという点からも「青春(アオハルとも言いますよね)」や「ブルーな気持ち」という言葉があるように気持ちが沈む感情、「シリアス」というイメージを持っていました。
それはBLコミックスに於いても同じく、「青春感(「青春は学生時代に味わうことが多い」という印象から自ずと学生がテーマ)」や「シリアス」な作品が多いという印象を持っています。
それでは、青が目立つ表紙の作品たちは本当に「青春感がある(学生がテーマ)」「シリアス」なのでしょうか?
手を伸ばしたら、つばさ
考察レビュー
青と言えば「青春(学生がテーマ)」「シリアス」なイメージがあります。例えば、「青春を謳歌する学生ネタの話」「しんみりと感情が沈んでしまうような話」など、青のイメージと言えばこんな感じでしょうか?
本作『手を伸ばしたら、つばさ』は、まさにその「青春(学生がテーマ)」「シリアス」なイメージにぴったりの作品になっています。
そんな本作は、大学生という“学生同士”のお話。力良(受け)は鳥のロボットを大空へ飛ばす研究をしている一生懸命な学生でした。おおまかな内容としては、過去にトラウマがある里見(攻め)が、大学で力良と出会い、力良の明るさに救われていくストーリーなのでシリアスな表現が多分に含まれています。
印象的なシーンは、自分の意志で入れていない半身のタトゥーを里見が初めて見せた際に、力良が「綺麗」だと言ったシーンです。里見からしたらトラウマの産物だったので、特にタトゥーに意味はなかったのですが、力良が「綺麗」と言ってくれたことよって「意味をくれた」と微笑みながら話すシーンに今までの(里見の)悲惨な思い出が頭をよぎり、切なくなりました。
最後は、里見と協力して研究テーマであった鳥のロボットも大空に飛ばすことができ、そんな場面で力良が言い放った「俺里見といると どこまでもいける気がする」というセリフが心に残りました。爽やかさを含みつつも2人の未来に希望が見えたような、どこか切ない終わり方。
また空を描いたブルーの表紙がタイトルの『手を伸ばしたら、つばさ』の「つばさ」の部分をを引き立てていますね。
きみの春花
考察レビュー
先ほども話題に上がった、「青春(学生がテーマ)」「シリアス」というイメージ。
本作『きみの春花』は、「青春」の要素が強く、「シリアス」な要素も話の終盤にでてくる、私が思う青のイメージにぴったりな作品でした。
そんな本作は“高校生”という学生同士のラブストーリー。2人の出会いから穏やかな日常風景が描かれています。例えば、屋上で東城(受け)に膝枕しながら授業をサボったり、学校で見かけて目で追ってしまったり、学生ならではの“青春感”があります。
読み進めていくと、純恋が受けなのかと思いきや、美人さんでツンとした東城が受けということに驚く方もいるかも知れませんね。
また先輩である東城がお話の最後には卒業してしまうのですが、「卒業してほしくない」という純恋の心情描写が切なく描かれていました。
表紙も淡いブルーで、学校の屋上を思わせる場所で2人が座っていますね。背景が学校というのも、学生ストーリーならではではないでしょうか!
神様のウロコ
考察レビュー
こちらは番外編(?)と言いますか、色々な青の表紙をみているうちに、「水」がテーマとなっている作品もいくつかあるということに気が付きました。
本作『神様のウロコ』は、そんな「水」というテーマが全面に溢れ出ている作品になります。
「智治殿〜!」と、優しくのほほんとした“水”の神様・鱗(りん)と小説家・智治のお話です。
神様特有の水を扱う表現(手から水を出したり、水を操ったり等)も相まって、ほのぼのした性格なのに表情に清涼感が滲み出ています。1巻には「私はあなたと家族になりたい」というド直球で素直なセリフがあったのですが、その表情に異様に爽やかさを感じたのも水の神様という設定からなのかもしれません。
表紙も「水」をイメージしているのか涼しさ溢れるデザインになっていますね。
そのほか該当作品
初恋は群青に溶ける
『初恋は群青に溶ける』 著ゆき林檎先生
【一言コメント】
野球で肩を壊してしまったケンゴ(攻め)とかつていじめに遭っていた吉岡(受け)の学生青春ラブストーリー。
アオハルは愛し愛され
『アオハルは愛し愛され』 著百瀬あん先生
【一言コメント】
学生男子寮のルームメイト2人のお話。リバカップル(どちらも攻め受け)。
4月の東京は・・・
【一言コメント】
中学時代の仲の良かったクラスメイトと社会人になり再会するお話。
鮫族への捧げ物
【一言コメント】
鮫の獣人が登場します。鮫ということで海のシーンが多いです。
水槽オペラ
【一言コメント】
高校の海洋生物研究部が舞台となっているお話。顧問×生徒。
総合考察結果
ブルーな作品は「青春(学生がテーマ)」という印象が強いものが複数あり、そこから派生して「シリアス」「清涼感」というイメージに繋がっているものが多いのかな? と感じました。
学生時代は入学や卒業などもあり、出会いと別れが多く、そんな長い人生の中で過ぎ去ってしまう学生という時期にしか得られない瑞々しいひと時に、シリアスさや清涼感といったイメージを浮かべるのかも知れません。
また、調査してみて発見した「水」がテーマとなっている作品たちも見受けられました。元々、「水」がテーマとなっている作品自体が少ないものの、テーマとなっている場合の表紙のブルー率は高い可能性があります(今回紹介した中では「神様のウロコ」「鮫族への捧げ物」「水槽オペラ」)。