実際はどんな神様!? 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』女神・男神大図鑑! #4|オリオンを探す孤高の“女神”・アルテミス編
シリーズ累計発行部数が1200万部を突破した、大人気小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(原作:大森藤ノ イラスト:ヤスダスズヒト GA文庫/SBクリエイティブ刊/通称ダンまち)。
2022年7月22日より最新TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』が放送・配信中です!
盛り上がりを見せる『ダンまち』ですが、作品の鍵となる存在はやはり「個性豊かな神々」ではないでしょうか。
アニメイトタイムズでは、本作に登場する神々が、実際にはどんな神様なのか紹介する連載を実施中です。
実際に世界中で語り継がれている神話の神々との関連性や、劇中でのエピソード、ファミリアの情報などを解説!
第4回目はギリシア神話などに登場する「神・アルテミス」。神々の事を知って、『ダンまち』をより楽しく鑑賞してみませんか!?
◆『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』キャスト連載メールインタビューはこちら
ギリシア神話とは?
古代ギリシャ人から口伝えで紡がれてきた壮大な神と人間の物語。
口頭で語られていたのでエピソードやストーリーにハッキリとした輪郭が無く、話者や地域によってさまざまな解釈をされてきました。
人間臭い一面を持つ神々の挿話を楽しむ物語になっており、神と人間のエピソードも多く描かれています。
『ダンまち』も神様と民衆たちの距離が近く、神達の思惑によって物語の展開が変わっていくので「ギリシア神話」との類似性も感じられるはずです。
純潔を愛する厳格な女神・アルテミス
連載第1回で紹介したヘスティアと同じ処女神であるアルテミスは、神の王・ゼウスとレト(※1)の間に生まれた神です。
双子の兄妹として太陽神であるアポロンが存在し、アルテミスは月の神と呼ばれることもあります。
しかし、アルテミスは「狩猟の神」としての側面の方が強いようで、猟犬とニンフ(妖精たち)を引き連れて狩りを楽しむ話が多く残されています。
また、純潔を“愛しすぎる”神で、自分の侍女たちにも徹底してその誓いを守らせています。
※1:レト……神々の中でも最も優しい女神と言われている。ゼウスはプレイボーイな一面を持っており、鶉の姿に変身して彼女に近づき、アルテミスとアポロンが生まれた。
厳格で冷徹な一面
アルテミスは自身だけでなく、侍女たちにも純潔を守らせています。しかしカリストという美しいニンフがアルテミスに隠れてゼウスと関係を持ってしまいます。
カリストは妊娠し、お腹がどんどん大きくなって、アルテミスに隠しきれなくなりました。沐浴の際に最後まで服が脱げず、それを怪しんだアルテミスが妊娠に気づき激怒。その後、カリストは森の奥でひっそりと出産をすることになりました。
またアルテミスは、復讐のために子どもたちを弓で射殺したというエピソードも残しています。
ある時、美しい子供たちを多く(16名ほど)出産したと言われる女性・ニオベがアルテミスの母であるレトに“子供の数マウント”を取りました。
それを聴いて怒ったレトは、アポロンとアルテミス2人にそれを聞かせると、母親の名誉を傷つけたとしてニオベの子供を皆殺しにしてしまったのです。
『ダンまち』の劇中では、男性キャラクターたちがアルテミスの目を盗んで水浴びを覗くシーンが描かれていました。
神話内でもアルテミスの沐浴のエピソードが残されています。
とある狩人の男性がたまたまアルテミスの沐浴中に泉に入ってきてしまい、それに気づいたアルテミスは激怒し泉の水を浴びせたのです。
彼女にしてはカワイイ怒り方ですが、なんと水をかぶった狩人は鹿(獣という説も)の姿に変わってしまいます。そしてアルテミスは猟犬にその鹿を食い殺させたのです。
怒りっぽい性格、必ず復讐をする執念、狩猟をこなしてしまう強さ。そして純潔を守り続ける厳格さを持つのがアルテミスなのです。
アルテミスの恋
そんな厳格なアルテミスも恋をしていたのです。(この人間味がギリシア神話の魅力!)
その相手は海神ポセイドンの息子・オリオン。彼は狩りの名手でビジュアルも良くモテモテな男でした。
その腕前に感心したアルテミスはオリオンと行動するように。共に狩りをするうちに2人の距離は近づいていったのです。
しかし純潔を誓ったアルテミスがオリオンと仲良くしている姿を見たアポロンが2人の仲を引き裂きます。
アポロンはアルテミスに「あの海の向こうで動く的を射ってみろ」と発破をかけました。彼女は自慢の銀の弓で見事に的を打ち抜きますが、なんとそれは海の上を歩いていたオリオンだったのです。
アルテミスはひどく傷つき、父・ゼウスに頼み込んでオリオンを星座に加えさせ、いつでも彼を見守るようになるのでした。
豆知識:アルテミス神殿とアルテミス像
トルコのエフェソスにはアルテミスが祀られたとされるアルテミス神殿の遺跡があります。
最大級の大きさを誇るこの神殿は、なんと9回に渡って破壊され、再建されたと言われています。自然災害や放火などによって何度も壊され、そのたびに人々の圧倒的な支持を得て再建されたようです。
今では広大な跡地に巨大な柱が1つ立つのみとなっています。
またそこに残された「アルテミス像」は、乳房が沢山付いているという不思議な像となっています。その昔、先住民族たちから「多産の神」として子どもたちを守ると言われていたという説も残っており、それを表すのがこの像です。
ギリシア神話とは異なる描かれ方をしており、神話の多様性が感じられますよね。
神話とはかけ離れた女神!? 『ダンまち』におけるアルテミス(CV:坂本真綾)
青い髪と美しい容姿が特徴的な女神・アルテミス。劇場版『ダンまち オリオンの矢』で登場します。
ヘスティアとはとても仲が良く、人間界に降りる前から交流があった神様です。
天界にいた際は、堅物で恋愛アンチ、ハレンチなことをする者がいれば容赦なく弓を放つ……など、現実の「ギリシア神話」を基にしたキャラ付けがなされていました。
しかし、ベル達と人間界で出会った彼女は180度人が変わったように、ベルを「オリオン」と呼びハグしたり、ポンコツな一面を見せたりと、ヘスティアも困惑するほどの変化を見せることになるのです。
“オリオン”を探すアルテミス
アルテミスが登場する劇場版『ダンまち-オリオンの矢-』は、ヘルメスに誘われたベルが、選ばれし者にしか引き抜くことのできない「伝説の矢」を引き抜くところから物語が始まります。
「オリオンの矢」に選ばれたベルは、矢でしか倒すことのできないモンスターを討伐するというアルテミスからの依頼を受けることに。
オラリオを離れて、モンスターが巣食うエルソスの遺跡に向かうベル達を待ち受けるのは、アルテミスと深い関わりを持つ魔獣だったのです。
劇場版『ダンまち-オリオンの矢-』は、上記で紹介したアルテミスの神話をモチーフに、『ダンまち』らしさ全開な作品となっています。
天界と人間界でアルテミスの性格が違う理由や、物語のラストはぜひご自身の目で確かめてみてください!
アルテミス・ファミリアについて
アルテミス・ファミリアはオラリオ外で活動するファミリアで、主にモンスターを狩猟して生計を立てていました。
アルテミス自身も弓の名手であるため、眷族達と共に戦闘に参加していましたが、ある魔獣との戦闘でファミリアのメンバーは全滅してしまいます。
参考
「図説 ギリシャ神話「神々の世界」篇(松島 道也)」河出書房新社
「ギリシア神話 -神々と英雄に出会う(西村 賀子)」中央公論新社
「図解 ギリシア神話 (歴史がおもしろいシリーズ)(普及版)(松村 一男)」西東社