実際はどんな神様!? 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』女神・男神大図鑑! #8|ヘスティアの良き友“武神”タケミカヅチ編
シリーズ累計発行部数が1200万部を突破した、大人気小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(原作:大森藤ノ イラスト:ヤスダスズヒト GA文庫/SBクリエイティブ刊/通称ダンまち)。
2022年7月22日より最新TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』が放送開始/放送中です!
盛り上がりを見せる『ダンまち』ですが、作品の鍵となる存在はやはり「個性豊かな神々」ではないでしょうか。
アニメイトタイムズでは、本作に登場する神々が、実際にはどんな神様なのか紹介する連載を実施中です。
実際に世界中で語り継がれている神話の神々との関連性や、劇中でのエピソード、ファミリアの情報などを解説!
第8回目は日本神話に登場する「神・タケミカヅチ」。神々の事を知って、『ダンまち』をより楽しく鑑賞してみませんか!?
◆『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』キャスト連載メールインタビューはこちら
日本神話とは?
その名の通り、日本で生まれ現在でも歴史の教科書などで目にする神話。
有名な書物は「古事記」「日本書紀」。イザナギ・イザナミと呼ばれる神から万物が生み出された話や、太陽神アマテラスが洞窟に引きこもってしまった話、ヤマタノオロチの伝説など、誰もが一度は耳にしたことがある話が数多く記されています。ゲームやアニメ、漫画などのモチーフになることも多く、神話自体は知らずとも、単語を聞いたことはある方も多いかもしれません。
この2つは当時(710~20年代あたり)の政府によって編纂されたオフィシャルな歴史書であり、このような形で正史として神話がまとめられているのは世界でも稀な事例です。
これまでの連載で紹介した、諸外国の神話は口承によって保存されていた事が多く、日本神話はより綺麗な形で語り継がれていると言えます。
その一方で神話の魅力の1つである「多様さ」や「わけの分からなさ」が失われているのではないか?という考えもあるようです。これは「古事記」や「日本書紀」に掲載されなかった神話達が淘汰されてしまった可能性があるからですね。
多くの神話は語り部や地域によって違いが生まれ、時には矛盾も生じます。しかしその違いによってその神話を語っている人たちのアイデンティティを理解する助けになっているのは事実。かと言って保護しない事によって全ての文化やお話が途絶えてしまうことは本末転倒です。
日本神話の編纂に関しては様々な思惑や事情があったようですが、何かを残していくという活動の難しさがよく分かりますよね。
「血」から生まれた戦神・タケミカヅチ
「古事記」においてタケミカヅチは建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)と記されています。漢字から理解できるように男であるということ、そして「雷」がつくので雷神だとされています。
元々は茨城県にある鹿島神宮に祀られていた土着の神であり、全国でも広く信じられる神様ということで「古事記」などにも入ることになったとされています。また神話で語られるタケミカヅチの出生のお話から、研究者の中では「剣の神」もしくは剣そのものではないか?とも考えられています。
タケミカヅチは「天之尾羽張」(あめのおはばり)という剣から滴り落ちる血から生まれたとされています。この剣は、日本の国土を生んだとされ、日本神話において重要な神様である「イザナギ」が使用した剣です。
イザナギの奥さんであるイザナミ(この2人が交わった事で全てが生まれたとされる)は、最後の子供である「カグツチ」を生んで亡くなりました。
カグツチは火の神様で、イザナミは出産の際に火傷を負ってしまい、それが原因で亡くなってしまったのです。それに怒ったイザナギが、天之尾羽張を使ってカグツチの首をハネてしまい、その血や死体から様々な神様が生まれました。
その1人がタケミカヅチです。勇猛果敢で猛々しい神であり、彼の神話は多く残されています。
国譲り
タケミカヅチの神話で最も有名なお話が国譲りというエピソードです。
葦原中津国(あしはらのなかつくに)という平和な国を持っていた神・オオクニヌシ(※1)の活躍ぶりを見ていた太陽神アマテラスは、中津国を自分のものにしよう(他の神の助言もあった)と言い出します。
そこで、オオクニヌシのところへ何名か交渉人を送るのですが全て失敗に終わってしまいます。そこで白羽の矢が立ったのがタケミカヅチでした。
彼は中津国に着くやいなや、持っていた剣を地面に突き刺し、その上にあぐらをかいて「国を譲れ」と強気に交渉します。
オオクニヌシは1人の息子に判断を委ねますが、その息子は二つ返事で国を譲ると発言。今度はもう1人の息子であるタケミナカタを呼び出し、タケミカヅチと話させるのでした。
すると、タケミナカタも力には自信があったのか、力比べで決める事に。タケミカヅチに掴みかかるタケミナカタですが、タケミカヅチは自身の腕を剣に変化させて驚かし、逆にタケミナカタを投げ飛ばしました。
2人の息子が交渉に応じた姿を見たオオクニヌシは潔く国を譲る事を認め、中津国は晴れてアマテラスのものになりました。
※1:オオクニヌシ……元々は「オオナムチ」という名前の神。八十神という沢山の兄弟神の中で妬まれ、命に関わるレベルのいじめを受けた。その後もスサノオ(凶暴な一面を持つ神)に試練を課されるなど、苦難の末に立派な神となったとされる。
ヘスティアの良き理解者 『ダンまち』におけるタケミカヅチ(CV:間島淳司)
ヘスティア・ファミリアと同じく少数精鋭のタケミカヅチ・ファミリアの主神。オラリオに訪れる前は、極東でファミリアのメンバーたちを幼少期から育てていました。そのため、タケミカヅチを含めてみな極東由来の和装をしています。
ヘスティアとは下界に降りる前からの友人であり、お互い零細ファミリアとして、共にアルバイトをして生活の足しにしていました。そのほか、ミアハやヘファイストスとも親交があります。
上記の日本神話同様、『ダンまち』においてもタケミカヅチは立派な戦の神であり、ファミリアメンバーにありとあらゆる武術や戦闘の心得を教え込むほどの達人。下界では能力が制限されるので、天界にいた頃ほどの力は無いものの、一般的な冒険者なら軽くあしらうことができる実力を持っています。
ファミリアメンバーにとっては育ての親でもあるため、非常に仲がよく、他のファミリアの主神と眷族の関係とはまた違った繋がりになっています。
タケミカヅチ・ファミリア メンバー紹介
カシマ・桜花(CV:興津和幸)
17歳
タケミカヅチ・ファミリア 団長
Lv.2
二つ名:武神男児(マスラタケオ)
種族:ヒューマン
タケミカヅチ・ファミリアの団長を務める大柄な男性冒険者。
メンバーやタケミカヅチからの信頼も厚い、仲間思いな男。
ダンジョン内でモンスターに追われた際に、偶然出くわしたベル達を犠牲にする形で撤退するなど、時には仲間を守るために冷静な判断も下す。
その後、上記の一件に責任を感じ、ヘスティア・ファミリアに協力していく中で、彼らと親交を深めていく。
ヒタチ・千草(CV:井口裕香)
16歳
タケミカヅチ・ファミリア 団員
Lv.1
種族:ヒューマン
桜花、命、春姫とは旧知の仲。
内気な性格だが、タケミカヅチに幼少期から鍛えられているため武術、武具の扱いに長けており、弓に関しては命よりも腕があるほどの名手。
桜花に好意を抱いているが、彼が鈍感なこともあり伝わっていない。
参考
「剣の神・剣の英雄―タケミカヅチ神話の比較研究(大林 太良、吉田 敦彦)」法政大学出版局
「面白いほどよくわかる日本神話: スラスラ読めて一気にわかる神々の物語 ミスペディア神話シリーズ (神話が好きになるポケット文庫シリーズ) Kindle版(ミスペディア編集部、高安正明)」
「日本の神話と神様手帖 あなたにつながる八百萬の神々(秦まゆな)」マイナビ出版
「The Quest For History 日本の神々完全ビジュアルガイド(椙山林継(監修)、レッカ社(編集))」カンゼン