映画『雨を告げる漂流団地』熊谷航祐役・田村睦心さん、兎内夏芽役・瀬戸麻沙美さんインタビュー|瀬戸さんが夏芽に共感できた部分とは? 田村さんは航祐の“ぶつくさ喋る”表現に苦戦!?
瀬戸さんが夏芽に共感できた部分とは? 田村さんは航祐の“ぶつくさ喋る”表現に苦戦!?
――台本を読んだ際の、作品に対する第一印象をお聞かせください。
田村:台本を初めて読んだときは、子どもたちが思った以上に過酷な状況に置かれて驚いたのと、のっぽくんが最終的にどうなるのか、続きが気になりました。
最初に台本を読んだときからけっこう泣いていたので、「アフレコ大丈夫かな?」という心配はありました(笑)。私、涙腺が本当に弱いんですよ。
瀬戸:初めて会った『あの花』(※1)の現場でも、最終回に大号泣してましたもんね(笑)。
田村:そうだったね。あのときは、きっと耐えられないと思って、自分でティッシュボックスを買っていったもん(笑)。
瀬戸:あれ、自分で買ったやつだったんだ(笑)。“涙のむっちゃん”というイメージは確かにあります。
※1:2011年に放送されたオリジナルTVアニメーション『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。田村さんは幼少期の宿海仁太(じんたん)役、瀬戸さんは幼少期の松雪集(ゆきあつ)役で出演した。
――瀬戸さんは、台本を最初に読んだときは泣かれましたか?
瀬戸:台本を読んだ段階ではまだ泣きませんでしたが、家である程度の演技の方向をまとめるためのリハをやったときは感情が乗って、ワっと涙が出ました。意外とそういうときが一番感情に乗れて、いざ本番ではなかなかそのときの感情が出なくてもどかしいこともあったりします。
台本を読んでの第一印象としては、夏芽が、思った以上に抱えているものがあって、その悩みを表に出すのではなく、抱える子だったので苦労しました。自分が子どもだったときの発散の仕方とは違ったので、自分と重ね合わせてというか、自分の経験の引き出しで補えるものがすごく少なかった印象です。他人の感覚を考えるというのに近かったので、台本読みもじっくりとやりました。
そんな中でも、夏芽に共感できる部分はちゃんとあったんです。それは夏芽の回想シーンで、お父さんとお母さんがケンカしていて、夏芽が泣きながらお父さんを止めているところを見たときでした。大なり小なり、親のケンカって子どものときに誰でも見ていると思います。夏芽ほど壮絶ではなくても私にも経験があったので、「そうだよね。子どものときにあの光景を見るの、そして止める自分はしんどいよね」と思って、ホロっときました。夏芽は自分が分からない感覚を持っている子だと思っていたけれど、やっぱり共感できるところはあるんだな、とそのときに思いましたね。
――田村さんは航祐に共感した部分などはありましたか? 役作りの上で、瀬戸さんのように苦労した部分などはありましたか?
田村:オーディションのときや、家で練習していたときは、そんなに苦しくはなかったのですが、実際にやってみての苦労はありました。
ダメなテイクという意味ではなく、この作品は同じシーンを、「次はもうちょっと怒る感じでやってみよう」とか「今度は内に込めてやってみよう」というように何度もパターンを変えて録っていただいたのですが、そのときに、航祐はぶつくさ怒っているタイプだと感じたんです。
本当にぶっきらぼうで、口を尖らせてぶつぶつ言っていて、リアルだと多分そんなに大変じゃないと思うのですが、「お客さんにセリフを聞こえるようにしながらぶつくさ言うのってこんなに難しいの!?」と思いました(笑)。
いつも「お」「ああ」「別に」みたいな感じで、リアクションも彼はうすいんです(笑)。「さじ加減が分からん!」と思って、苦しかったですね。私はそういった感情表現は比較的豊かに出すタイプなので、「お前の気持ちが分からんよ」とすごく思いました。
――セリフとして聞こえるようにしつつ抑えなきゃいけない、というのは確かに難しそうですね。
田村:抑えめにしすぎるとうまく音が出なくなるので、「ちゃんと伝わっているのかなあ」と、不安になることもありました。
けれど、改めて音が入ったものを見たときは、この伝わっているのか、いないのか、ぶつくさ言う感じが、そもそも彼の気持ちを物語っているんだと分かりました。言動から「察してよ!」という気持ちがダダ漏れているので、聞こえても、聞こえなくても彼の気持ちは伝わってくるというのは、新しい発見でしたね。