この記事をかいた人
- 篭法
- 内向的で口下手、典型的な陰の者。テーマやメッセージ、登場人物の心情を考えさせられるアニメが好み。小説も好き。
――お互いの演じるキャラクターの印象をお聞かせください。
田村:夏芽は本当に我慢しちゃう子で、「もっと自分を出せばいいのに」と思う反面、私自身は夏芽の気持ちを分かる部分が少しあります。たぶん他の人とケンカするのも好きじゃないというか、言い合いとかをしてもめるよりは、「自分が笑って、全部飲み込んでしまったほうが気が楽だ」というタイプの子なのかなと思うので、「その生き方、辛いぜ……」って思います(笑)。
瀬戸:先輩……(笑)。
田村:なので、物語が進んでいく中で、自分の気持ちを言えるようになっていくのを見て、よかったなと思いました。
――瀬戸さんは航祐の印象はいかがですか?
瀬戸:航祐は、完成したものを見て、改めて“諦めない男の子”だと思いました。自分の行動もそうですし、こと夏芽に対して不器用ながらに、理解したいと思ってぶつかっていて。うまく言えなくて失敗も繰り返すんですが、それでも諦めないで「夏芽をどうにかしたい」と行動する、彼女のことで頭がいっぱいになっている、夏芽が大好きな男の子なんだなって思いました。
本当に頑固で、そこも思春期の少年らしくて魅力的です。そこにむっちゃんのお芝居が付いて、より最高になっていると思います。
むっちゃんのお芝居で素敵なところはたくさんあるんですが、中でも一番素晴らしいなと思ったシーンが、航祐が団地の屋上で双眼鏡を覗いているときに、後ろでダラダラしているみんなに、背中で声を掛けるシーンです。あそこの距離感やリアクションの塩梅が本当に小学生の男の子で、すごくリアルだったので感動しました。あとは、建物と建物で離れているときの声なんかも、実際にこれくらい離れているんだろうな、という距離感がすごく立体的に表現されていて、「むっちゃんスゲー……!」と思いました。
田村:ありがとう! すごく褒めてくれるじゃん(笑)。
瀬戸:昨日作品を見たばかりだからね。ほやほやな気持ちです。
――今のようなお話でもいいですし、全体的な部分でもいいのですが、注目してほしいシーンを教えてください。
田村:アクションシーンというか、動きですね。こんなに絵が綺麗なのに、とってもよく動くんです。本当に細かくって、すごく人間らしさもある一方、実際にはこんな動きできないよね、というアニメらしい部分もあって、両方の良さが詰まっていると思います。
瀬戸:こんなにリアルなのに、ちゃんとアニメーションっていうところがいいよね!
田村:そう! それ。それです(笑)。
瀬戸:ごめん、勝手にまとめてしまって(笑)。
私は、音の表現が素晴らしいところですね。劇伴や挿入歌などもそうですし、私たちが吹き込ませてもらった声にも、団地だからこその響きや、学校の喧騒の中での響きや距離感が付けられているんです。周りの環境の影響を受けての音の変化が素晴らしいので、注目してほしいなと思います。
田村:全部注目ポイントだから、見ながら喋りたいよね! 都度止めて「ここよかったわ~」って言いたい。
――そういう意味では、本作は劇場公開だけではなく、Netflixでの配信もあるのでうってつけですね。
田村:確かに!
瀬戸:けれどやっぱり音響もすごいので、ぜひ劇場にも足を運んでいただけると嬉しいです。
――劇場と配信、それぞれ違う楽しみ方ができそうですね。本日はありがとうございました!
[取材・文・撮影/篭法]
中学までは運動部だったが、だんだんインドア趣味になり、今では完全に陰の者。小説が好き。ライターを志すきっかけになったアニメは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。その他に好きな作品は『91Days』『SSSS.GRIDMAN』『ワンダーエッグ・プライオリティ』など。アイドル系の作品にはあまり触れてこなかったが、1年ほど前から『シャニマス』にハマり、ライブにも足を運ぶようになった。
2022年9月16日(金)Netflix全世界独占配信&日本全国ロードショー
スタジオコロリドが贈る長編アニメーション映画第3弾『雨を告げる漂流団地』。
夏の終わりの冒険ファンタジー
2018年初の長編映画『ペンギン・ハイウェイ』を手掛けた「スタジオコロリド」は、2020年Netflixにて全世界独占配信された『泣きたい私は猫をかぶる』において世界30カ国以上で再生回数の多い映画ランキングTOP10に入るなど全世界からの賞賛を浴びた。スタジオコロリド待望の新作は、長編アニメーション映画第3弾『雨を告げる漂流団地』。
小学6年生の幼馴染、航祐と夏芽、その仲間たちが取り壊し前の団地に入り込んだことから始まるひと夏の冒険物語。少年少女を乗せた団地が大海原を漂流する。
現実からファンタジー世界に観客を連れていく映像手法と、親しみやすいビジュアルで、スタジオコロリドらしい瑞々しさと勢いのある映画となっている。
監督を務めるのは、33歳の若さで長編映画二作目となる石田祐康。『陽なたのアオシグレ』(2013)で第17回文化庁メディア芸術祭にてアニメーション部門の審査委員会推薦作品に選出、『ペンギン・ハイウェイ』(2018)では29歳という若さで異例の長編監督デビューを果たし、第42回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞、ファンタジア国際映画祭 今敏賞(ベストアニメーション賞)を受賞した、アニメーション界の次代を担うクリエイター。
幼なじみの航祐と夏芽。小学6年生になった二人は最近お互いを避け、ギクシャクしている様子。
夏休みのある日、二人の姿は取り壊しの決まった団地にあった。その団地は、二人がかつて育った思い出の場所。航祐たちが団地で遊んでいると、突然不思議な現象に巻き込まれる。気づくとそこは、あたり一面の大海原。航祐たちを乗せ、団地は謎の海を漂流する。果たして元の世界へ戻れるのか?
ひと夏の別れの旅がはじまる―
監督:石田祐康
脚本:森ハヤシ/石田祐康/坂本美南香
キャラクターデザイン:永江彰浩
キャラクターデザイン補佐:加藤ふみ
音楽:阿部海太郎
主題歌・挿入歌:ずっと真夜中でいいのに。
企画プロデュース:山本幸治
制作:スタジオコロリド
企画:ツインエンジン
田村睦心
瀬戸麻沙美
村瀬歩
山下大輝
小林由美子
水瀬いのり
花澤香菜
島田敏
水樹奈々