忍者とは『利』を求める職種――秋アニメ『忍の一時』渡部 周監督インタビュー
地に足のついた世界観
――忍者としての設定や、忍術の扱いはいかがですか? 今作の忍術は、現用兵器に近いもので、そこも作品の特色かと思うのですが。
渡部: そこに関しては、「忍核」というある種のバッテリーで、「忍装」というモーターにあたる装備を動かすようなイメージで、そうしたひとつだけ大きな嘘、ファンタジーの設定を作り上げたあとは、起こる現象は現実的なものになるようなバランスで考えました。2話の火遁の術の扱いとかを観ていただけると、そこはよく伝わると思います。
――ビジュアル面も含めた映像の総合的な観点では、どんなことにこだわられていたのでしょう?
渡部: 少し求められいるものとは違った角度からのお答えになってしまうかもしれませんが、TROYCAという制作会社ができてからそこそこ長い年月が経って、若いスタッフが増えてきたんです。そうした子たちに新しい仕事というか、新しいチャンス、新しいポジションを与えてあげたい気持ちがまずありました。この作品を通じて、会社の中から新しい人を発掘したい。それが上手く行けば、TROYCAとしても新しい力が手に入るし、そこから今後の仕事の幅が広がるんじゃないかなとも思ったんです。
――人材育成的な意識が。
渡部: 1クールで終わる作品ばかりではなく、昔のように1年かけて放送される作品が多かった時期には、言葉は少し悪いかも知れませんが「お試し」みたいな話数を作って、そこで若いスタッフにチャレンジしてもらうことができたんです。でも今のアニメ業界が置かれている状況では、同じことがやりづらい。であれば、作品自体をひとつ、そういうことができる場として作ってあげた方が、若い子たちはやりやすいのかなと。それもあって「肩肘を張らないで観られる作品に落とし込みたい」ということは意識していました。
――長野さんも「シンプルな、わかりやすい内容」、「90年代や00年代ごろのテレビアニメ」の空気感というような、近いお話を取材でされていました。
渡部: お話もですし、画面づくりにも流行があるんですよね。今回はそのへんを20年くらい前のテイストに戻しつつ、それでいて、今の視聴者のみなさんにも楽しんでいただけるように意識して、絵コンテ以降の作業もやった感じです。セル画時代のベーシックな表現に戻しつつ、フィルムっぽいニュアンスが出るようにも考えつつ、今の若い人たちにも共感ができる範疇のバランスで……。
――上手い落としどころ探りながら。
渡部: そうですね。そうはいいつつ、押さえるべきポイントではしっかりと見せ場を作ってはいるんですが、全体的にはシンプルな画面作りになるよう、気を使う。そうやって絵コンテでの設計はシンプルにしておいて、そのときどきで現場の人間が、求められている以上のがんばりを見せてくれたら、それは全然いい。筋さえ通っていれば、やりたいことをやってオッケーだよ……という形で作品をつくりたかったんです。がんばればがんばるだけ、それがそのままフィルムに反映されることを、若いスタッフに実感してもらえたらいいな、と。実際、こちらの想定した以上のよいものが上がったところがいくつもあって、「監督の仕事の魅力って、こういうものなのかな」と、自分としても楽しませてもらいました。
――では最後に、既に全話完成されているわけですが、監督の考える今作の最大の見どころは?
渡部: この作品では、主人公以外の別のキャラクター……たとえばライバル側にカメラを置いても物語を作れるような、その世界にキャラクターたちが生きているように感じられる、地に足のついた世界観を作り上げました。その上で、『忍の一時』というタイトル通り、あくまで一時くんという主人公の物語を描いているんです。一時くんがいろんなことを考えながら、物事を決めていく。その決める過程と、決めた後の強さを、ぜひ観て欲しいです。「覚悟を決めた人間は強い」というか、決めた瞬間から、独特な力強さを持つ。それを繰り返すことで、人は一歩ずつ成長する。社会もそうだと思うんです。それが作品を通して伝わったらいいなと。
――ヒロインたちを始め、魅力的なキャラが多数登場しますが、あくまで一時の成長の物語として監督としてはお作りになられた。それも地に足の着いた、これもまたちょっと近年では珍しいものですね。
渡部: そうですね。TROYCAで参加した『Re:CREATORS』という作品でも、主人公はいろいろと大変な経験をしますが、僕の感想として主人公の成長が「ほんの一歩」だけ描かれていたと感じたんです。もっと劇的に主人公の成長を描けたのにあえてそうしていない意図を感じました。それを見た時に「たしかに現実ってそういうものだよな」と感じるものがあった。それが『忍の一時』での一時くんの描き方にも影響しているところがあって、そういう意味ではこの作品には、TROYCA作品はもちろん、これまで自分が関わらせてもらった作品からの影響がよく出た作品になったんじゃないかとも感じています。
TVアニメ『忍の一時』作品情報
2022年10月より放送開始!
放送
TOKYO MX:10月4日より毎週火曜23時~
BS朝日:10月7日より毎週金曜23時30分~
CBCテレビ:10月22日より毎週土曜27:12~
AT-X:10月4日より毎週火曜20時~
リピート放送:毎週木曜8時~/毎週月曜14時~
配信
FOD:10月4日より毎週火曜23時~
※放送日時は変更となる場合がございます
キャスト
櫻羽一時:逢坂良太
加賀時貞:小西克幸
紅雪:白石晴香
黄瀬川輝麗:悠木 碧
鈴ノ音涼子:関根 瞳
伴 朱雀:坂 泰斗
高嶺火村:八代 拓
櫻羽弓香:井上喜久子
森山光蔵:田中 完
柘植礼羽:進藤尚美
伴 鳳扇:てらそままさき
高嶺焔毘:間宮康弘
椿 里美:富田美憂
美濃部鬼道:津田健次郎
上月汐音:高田憂希
五所川原隼人:前野智昭
唐獅子玄二:松風雅也
児雷坊十全:麦人
三ツ橋小南:森なな子
スタッフ
企画:DMM pictures ×TROYCA
監督:渡部周
シリーズ構成・脚本:高野水登
キャラクターデザイン・総作画監督:鈴木勇
メインアニメーター:奥田淳
プロップデザイン:江間一隆
美術監督:岩瀬栄治
美術設定:高橋麻穂
色彩設計:篠原真理子
CGディレクター:井口光隆
撮影監督:加藤友宜
編集:右山章太
音響監督:明田川仁
音楽:TOMISIRO
音楽制作:DMM music
アニメーション制作:TROYCA
製作:忍の一時製作委員会
オープニングテーマ:ハンブレッダーズ「光」
エンディングテーマ:黒子首「おぼえたて」
イントロダクション
忍者は、存在しない。…と、我々は思っている。
仮に忍者が存在したところで、忍者はその姿を我々に晒すことはない。
だからこそ、忍者は『表向きには』存在しないのだ。
主人公、櫻羽一時は、我々と同じく忍者は存在しないと思っている、普通の男子。
彼には普通の、幸せで輝かしい日々が約束されている…はずだった。ある日、一時は命を狙われ、それが甲賀忍者の仕業であると聞かされる。
なぜ一時は命を狙われたのか? それは…彼が由緒正しき、伊賀忍者第19代正当後継者だったからなのだ!
伊賀と甲賀は長年対立しており、甲賀は伊賀を侵略しようとしている。
一時が生きるためには…自らも忍者になるしかない!こうして、誰も知らない忍者の世界に身を投じる一時。一人前の忍者となるべく学び、戦い、苦難に立ち向かう。
だがそれは、一時が辿る過酷な運命の、ほんの序章でしかなかった…。
『アルドノア・ゼロ』『アイドリッシュセブン』のTROYCAが放つ、先の読めないオリジナルニンジャアクション、2022年放送開始!
関連サイト
TVアニメ『忍の一時』公式サイト
公式Twitter
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