『サマータイムレンダ』&『STEINS;GATE』の共通点と作品との向き合い方|田中靖規氏×志倉千代丸氏 対談
2022年4月14日(木)よりTV放送/配信してきたTVアニメ『サマータイムレンダ』がついに完結。そして、新たなストーリーが紡がれるMAGES.制作によるNintendo Switch/PlayStation 4ソフト『サマータイムレンダ Another Horizon』の新情報も解禁となった。
本作は、田中靖規先生による原作コミックス(集英社ジャンプコミックス刊)は「少年ジャンプ+」で連載された、累計閲覧数1億5,000万回を誇っている人気作だ。
□[#001]サマータイムレンダ - 田中靖規 | 少年ジャンプ+
https://shonenjumpplus.com/episode/13932016480029133982
9月某日、田中靖規先生と、『STEINS;GATE』をはじめとした一連のシリーズである科学アドベンチャーシリーズの企画・原作者であり、『サマータイムレンダ』の2nd Opening Theme「夏夢ノイジー」の作詞・作曲を担当している志倉千代丸氏の初対談が実現した。
共通点の多いふたりはすぐに意気投合。対談では両者の作品のベースに流れる世界観、そして作品制作の基となるインスピレーションを明かしていく。
「絶対に趣味が合うだろうな」と
──おふたりはお会いするのが初めてだそうですが、田中先生は『STEINS;GATE』をずっとプレイされていたんですよね。
田中:そうなんです。ハマりましたね。コンテンツにハマるということはそこまで多くないんですが『エヴァンゲリオン』の次にハマったのが、『STEINS;GATE』でした。
志倉:ええ、嬉しい。
MAGES.スタッフ:番外編の『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』にドクペが登場するじゃないですか。それを見て『STEINS;GATE』を意識しているのかなと思い、今回の対談を企画させてもらったんです。
田中:ああ、そうだったんですね。描いてみるものですね(笑)。意識していました。僕はドクペ片手に『STEINS;GATE』をプレイしていましたから。関西にはドクペってあんまり売っていないんです。『STEINS;GATE』で初めて知って、それ以来ずっと飲んでいます(笑)。
[前編]サマータイムレンダ2026 未然事故物件 - 田中靖規 | 少年ジャンプ+
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496868421289
──(笑)。田中先生が『STEINS;GATE』にのめり込んだきっかけはなんだったんでしょう?
田中:友だちから「面白いよ」って言われたことがきっかけだったと思います。それでアニメを見始めて、3話、4話くらいまで見たところで続きが気になりすぎて、ゲームを買ったんです。その後、Blu-rayボックスもサントラも買いました。
志倉:そんな…代金払わないと……。
田中:(笑)。
志倉:アニメは普段、あまり見ないんですか?
田中:そうですね。もちろん作品に触れる機会はあるんですけど、仕事の目線で見てしまって、純粋に楽しめないんです。映画は積極的に見るんですけど。
志倉:映画はどんなジャンルがお好きなんですか?
田中:最近だと、ジョーダン・ピール監督の『NOPE/ノープ』という映画を見たいなと思っていました。ジョーダン・ピール監督は『ゲット・アウト』、『アス』などが有名で。クリストファー・ノーラン監督も好きです。『インターステラー』は最高です。SFやホラー、サスペンスを中心に見ていますね。
志倉:やっぱりそういう作品がお好きなんですね。ということは、趣味が合うのかなという感じがします。クリストファー・ノーランさんの作品は、僕は勝手に「科学アドベンチャーシリーズ」と呼んでます。本当に勝手に、ですけど(笑)。
※科学アドベンチャーシリーズとは?(科学アドベンチャーポータルサイト)
http://www.kagaku-adv.com/about/
田中:(笑)。クリストファー・ノーラン監督の作品は科学的な裏付けをしっかりされていますもんね。設定がかなり作り込まれている印象です。
志倉:良いですよね。どこもカットして良いシーンがないというか。『インセプション』も撮影技法、ギミックが面白かったんですよ。一つひとつのギミックを理解できて、解釈ができるようになると急に面白くなる。
田中:ストーリーに没入していくうちに、自然と設定が頭に入ってくるストーリーテリングが理想だなと思います。最近の『TENET テネット』(2020年)は少し難しい印象がありました。
志倉:『TENET テネット』は、いわゆる熱力学第二法則を描きたかった作品だと思うんですよね。確かに観測しているのが誰か、ってところが少し難しい気がする。
田中:そうですね。エモーショナルなエンディングだったんですけど、複雑な状況を理解するのに頭を持っていかれてしまって、僕は初回の鑑賞ではあまりピンとこなかったんです。で、その後考察サイトや動画などで理解して、遅れて感動したんですけど…できれば鑑賞中に、映画の主人公と同じタイミングで感動したいじゃないですか。好きな作品だからこそ、ちょっともったいないなと感じて。でもそれって『サマータイムレンダ』もそうなってしまう危険性があるなと。ただ、分かりやすくしようと説明をし過ぎると、逆に読者の方としては「分からなきゃいけないんじゃないか」というしんどさも生まれてしまうし。そのへんの塩梅は気をつけたつもりです。
志倉:ノーランさんの作品って伏線と回収があまりないんですよ。大きな伏線は1個か2個程度。小さいものがあまりない。そういうところも難しくさせないテクニックなんだろうなって思っています。
田中:なるほど。
志倉:あと、能力に何かしら制限をつけることで作品が面白くなるなと思っています。逆にそうじゃないと成立しないというか。『サマータイムレンダ』を読んでいても感じたことですが。
──制限ですか。
志倉:つまり、自分(登場人物)にリスクが伴わず、何回でも能力を使えちゃうと、つまらないんですよね。例えば魔法を1回使ったら3歳年を重ねてしまう、使っても5回までとか。田中先生はおそらくそういうことも考えられて作ったんだろうなと。
田中:能力に代償はつきものですよね。
──『サマータイムレンダ』にはその他にどのような印象がありますか。
志倉:アニメの印象が強かったんですよね。2クールだったので、コミックスのスピード感でいくのかなと思ったのですが、1話から思ってた以上に「おっと、結構すっ飛ばすなと」。それは悪い意味ではなく、見せ方がコミックとは違うんですよね。どちらも良い見せ方だなと思いました。
中盤あたりからはアクションが増えてきて。あれをちゃんとアニメーションでできるのかな、という心配もありましたが杞憂に終わりました(笑)。全然心配する必要なかったなと。あと、作品を読んで「絶対に趣味が合うだろうな」とは思ってました。
田中:僕自身が(志倉さんの)影響を受けてますから。この間改めて『STEINS;GATE』を見直したんですけど「イベント・ホライゾン」(事象の地平線)という言葉が出てきますよね。僕も使ったなあってハッとして(笑)。
志倉:あはははは。
田中:これは完全に無意識のうちに使っていたもので。「あ、やばい」って。
志倉:でも僕が作った言葉ではないですから。
田中:僕の中にワードが染み込んでいたんです。