グリフィス役・櫻井孝宏さんのひと言がグッとくる──制作陣が明かすアフレコ秘話。『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』TVシリーズ監督・佐野雄太さん×STUDIO4℃プロデューサー田中栄子さんインタビュー(後編)
怒涛の制作。現場は戦場化
──ここまでのお話にも垣間見えていますが、あらためて映画制作当時を振り返って、どんな想いがありますか?
田中:三部作、しかも1年の間に立て続けに公開していくということで、述べ5000カット以上に上る映画3本をほぼ同時進行で織り上げていくという、怒涛の制作でしたね。
佐野:僕がSTUDIO4℃に入社して現場に入った時点で、すでに現場は戦場と化していました。カット袋の積み上がりがすごくて、やってもやっても積み重なって、いっこうに(カット袋の)山が消えない地獄でした(笑)。
田中:みんな、「俺は今日は5人斬った」とか、そんなのが日常会話になっていてね。
佐野:とにかくすごい状況だったんですけど、逆に僕にとってはそれがとても幸せだったんですよね。新人のうちから、そうやっていろいろ仕事を振ってもらえる機会もそうそうないと思うので。田中さんがよく「ピンチはチャンス」って言うんですけど、まさにその通りで、いや本当にピンチの場合もあるけど(笑)、だとしてもチャンスと思ってやらなければ、いつまでも先が見えないんだなあって。あそこで必死にやった経験のおかげで今の自分あると思っています。
田中:終盤にはもうどうしても、どこかを削らなければ物理的に間に合わないだろう、という局面にもなって。会議室で窪岡監督と机に資料を広げて、他のスタッフからもアイデアもらって、欠番にするシーン案をわーっと出したりしましたね。その光景がすごく記憶に焼きついてるんだけど、佐野くんもそれ参加してました?
佐野:いや、僕はその頃まだ入社一年目でしたから、そこにはいなかったかな。
田中:百人斬りのサムスンのシーンも、モデルもレイアウトも全部できてたんですけど、泣く泣くカットしたんですよね。あとはやっぱり、最後の「蝕」のシーンも思い出深いですね。窪岡さんが描かれていたゴッドハンドが登場するあたりまでのかっこいいコンテを引き継いで、3DCGチームの3人に振り分けて、コンテの段階から3Dで起こして。
佐野:僕はゴッドハンドが出てきて烙印を押されるところまでのコンテを担当して、ぎゃーっと使徒たちが出てくるところを平野浩太郎さん、そのあとの髑髏の騎士とゾッドのシーンを秋本賢一郎さんが担当しました。もともと蝕の地形自体を3Dで組んであったので、そこから直接レイアウトもつくっていったんですよね。
田中:佐野くんも他のスタッフもそうなんですけど、みんなものすごいパワーがあったし、勢いがあって、第三部のラストスパートではスタッフ全員が本当に一丸となっていましたね。比喩ではないくらいひとつになってた。そこまでに積み上げてきたものが臨界点を突破して、各々の中に根付いて、みんながつながっている感じすらありました。
佐野:窪岡監督のもと、全員がディレクターの感覚で動いていて、しかもその一人一人の意志が完全に統一されているような状態でしたね。撮影の行程も最後は社内でやってたのですが、CG監督チェックも細かくは出せないくらい切羽詰まっていたので、みんな自分のチェックを信じてやって。でも、ラッシュ映像を見たら、ほとんど合ってたんですよね。普通はバラバラにやったら色や明度の違いとか、いろいろ出てくるんですけど……。こんなにも心が通じ合うことって本当にあるんだ、って思いました(笑)。
──ついにスタートしたメモリアル・エディション。これからの放送を楽しみにしている、読者のみなさんへメッセージをお願いいたします。
佐野:『ベルセルク』は、非常に重厚なストーリーで、残酷だったり、エロティックな表現も多いので、観るのにある程度の覚悟のいる作品ですが、それだけ作り手のものすごいエネルギーが詰まっています。特に、濃厚なダークファンタジーが好きな方はぜひ、この世界を堪能してください。続く第2話では、突然に圧倒的脅威が現れたりと、ストーリーにファンタジー色が入ってきます。大迫力のゾッドとの対峙をご覧ください。また、『ベルセルク』ファンにとって特別であろう曲を使用して、少し変わった演出を入れています。その楽曲を使用できると聞いた時には、編集の重村(健吾)さんと二人で大興奮でした。楽しみにしていてください!
田中:10年後も20年後も30年後も素晴らしい作品として、皆さんに愛され生き続けていくであろう「ベルセル黄金時代篇 モリアルエディション」。熱き魂をこめて、お届けします。
[取材:ワダヒトミ]
連載バックナンバー
画像をクリックすると、関連記事にとびます。TVアニメ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』作品情報
放送情報
2022年10月よりTOKYO MXほかにて放送開始!
・TOKYO MX 10月1日(土) 24:30-
・とちぎテレビ 10月1日(土) 24:30-
・群馬テレビ 10月1日(土) 24:30-
・BS11 10月1日(土) 24:30-
・アニマックス 10月16日(日)23:00~
配信情報:
ABEMA、dアニメストア、U-NEXT、NETFLIX、WOWOWオンデマンド、GYAO!、ひかりTV、FOD、バンダイチャンネル、Hulu、auスマートパスプレミアム、TELASA ほかにて配信予定
イントロダクション
全世界累計発行部数5000万部突破(2022年現在)日本を代表するダーク・ファンタジー超大作がTVシリーズとして放送決定!
1989年の連載開始から今もなお孤高の存在として本格ダーク・ファンタジーの軌跡を現代漫画界に刻み続けている『ベルセルク』(著・三浦建太郎/白泉社『ヤングアニマル』連載)。
ファンの間でも最も人気が高い“黄金時代”を三部作で映画化し、2012年~13年に日本をはじめ世界16カ国で公開しました。そして2022年、劇場公開から10年の時を経て、『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』として2022年10月よりTVシリーズにて地上波初登場を予定。
【黄金時代篇三部作】
2012年2月4日公開 『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』
2012年6月23日公開 『ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略』
2013年2月1日公開 『ベルセルク 黄金時代篇III 降臨』
今回の放送では2012年の劇場公開時にはなかった原作人気シーンの一つでもある「夢のかがり火」など原作珠玉の名シーンが、劇場版同様に恩田尚之総作画監督のもと新規カットとして追加することが決定!さらに、既存カットも、数百カットに手を加え、リマスターとしてバージョンアップ!
新規カットには、平沢進、鷺巣詩郎による、新たな楽曲提供が決定。
ストーリー
己の剣だけを信じてきた。友も家族も帰る故郷もない──孤独な剣士ガッツは、百年戦争に揺れる地を傭兵として渡り歩いていた。身の丈を超える長大な剣を自在に操り、強大な敵をいとも簡単に倒すガッツ。そんな彼に目をつけたのが、傭兵集団“鷹の団”を率いるグリフィス。
美しい姿からは想像もつかない統率力を持ち、大いなる野望を秘めたグリフィスは、自らの夢を叶えるためにガッツを決闘で制し、鷹の団に引き入れる。数々の激戦を共にくぐり抜けるうちに、信頼で結ばれていく仲間たち。なかでもグリフィスとガッツの絆は、今や特別なものとなっていた。
やがて鷹の団はミッドランド王国の正規軍にのし上がるが、それはグリフィスの目指す頂点へのはじめの一歩にすぎなかった。一方ガッツは、グリフィスの「夢」に取り込まれ剣を振り回すだけの人生に疑問を抱き始める。だが、ガッツはまだ知らない。果てなき夢が二人に与えた、恐るべき宿命を──
STAFF
原作:三浦建太郎
メモリアル・エディション監督:佐野雄太
劇場版監督:窪岡俊之
脚本/メモリアル・エディション脚本総監修:大河内一楼
キャラクターデザイン/総作画監督:恩田尚之
アニメーションディレクター:岩瀧智
美術監督:中村豪希 竹田悠介 新林希文
動画検査:梶谷睦子 加来由加里
色彩設計:成毛久美子
CGI監督:草木孝幸 廣田裕介 斉藤亜規子 今中千亜季
編集:重村建吾
音響デザイン:笠松広司
音楽:鷺巣詩郎
オープニングテーマ:平沢進「Aria」(テスラカイト)
エンディングテーマ:中島美嘉「Wish」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作:STUDIO4℃
CAST
ガッツ:岩永洋昭
グリフィス:櫻井孝宏
キャスカ:行成とあ
ジュドー:梶裕貴
リッケルト:寿美菜子
ピピン:藤原貴弘
コルカス:松本ヨシロウ
ガストン:矢尾一樹
バズーソ:ケンドーコバヤシ
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