牧野由依さん ミニアルバム『あなたとわたしを繋ぐもの』インタビュー|いろいろな繋がりを集結させた1枚に
声優、歌手、ピアニストとして活躍している牧野由依さんが、約4年半ぶり2枚目のミニアルバム『あなたとわたしを繋ぐもの』を10月5日に発売。リード曲で長編アニメ『とつくにの少女』主題歌の『Touch of Hope』と、10年以上ぶりに担当した『ARIA』の主題歌2曲の他、豪華クリエイター陣が参加した新曲4曲が収録されている。発売を間近に控える中、それぞれの曲に込められた思いなどをじっくりと語ってもらった。
いろいろな繋がりをギュッと一つに集結させたアルバム
――ミニアルバムの制作が決まったとき、どのようなアルバムにしたいと考え、スタッフさんたちとはどのようなことを相談しましたか?
牧野:久しぶりに『ARIA』で主題歌を担当させていただき、メジャーデビューをさせていただいたフライングドッグさんから、再びリリースさせていただけることになったりと、ご縁がまた繋がり再会する機会が、その時期とても多くて。今までの繋がりとか、私と聴いてくださる方々を繋ぐものとか、未来の自分に繋いでいけるものといった、いろいろな繋がりをギュッと一つに集結させたアルバムにしていきたいね、という話をしました。
――後ほど、タイトルについて伺うつもりだったのですが、制作のスタート時点から「繋ぐ」がテーマになっていたのですね。
牧野:はい。「あなたとわたしを繋ぐもの」というタイトルは、後からみんなで考えましたが、そういったイメージは元々からありました。
――ここからは、収録されている7曲について、制作時や収録時のエピソードなどを聞かせてください。3月にデジタルシングルとしてもリリースされている『Touch of Hope』は、長編アニメ『とつくにの少女』の主題歌で、曲からも独特の世界観が感じられます。
牧野:『とつくにの少女』という作品を一言で分かりやすく表現してしまうとダークファンタジーで、呪いや死、生の輝きと怖さや脆さ、大切な人に向けた渇望や葛藤などが描かれていたりするんです。そういったものは、この曲の中にも存分に表現されていると思います。
――聴いたときに、優しいのに切ないという少し複雑な印象を感じたのですが、どのような思いを大切に歌われたのでしょうか?
牧野:原作も読ませていただいたので、自分視点で何かを伝えるというよりは、語り部的な感じで、『とつくにの少女』の世界を歌で俯瞰的に伝えるような感覚で歌わせていただきました。
『ARIA』の曲を歌わせていただける機会は、もうないと思っていた
――2曲目の『エスペーロ』は、昨年12月に劇場公開された『ARIA The BENEDIZIONE』のオープニングテーマですね。牧野さんが『ARIA』シリーズの主題歌を担当するのは、2008年放送の『ARIA The ORIGINATION』のオープニングテーマ『スピラーレ』以来でした。私も『ARIA』の大ファンなので、牧野さんの歌う『ARIA』の新曲が聴けて、とても嬉しかったのを覚えています。
牧野:ありがとうございます。私もとても嬉しかったです。
――久しぶりに『ARIA』の曲を担当するということで、何か特別に意識したことなどはあったのでしょうか?
牧野:正直、私が『ARIA』の曲を歌わせていただける機会は、もうないだろうなと思っていたんです。なので、自分の中でもとても感慨深かったですし、奇跡みたいなお話だと思いました。でも、だからといって、曲の中に自分の特別な思いを入れようといったことはまったくしていなくて。(作曲・編曲の)窪田ミナさんが描いてくださった『ウンディーネ』『ユーフォリア』『スピラーレ』という3つの曲から繋がっていく『エスペーロ』のデモを聴かせていただいたときに、「ああ、窪田さんの曲だ」って嬉しく思ったんです。なので、この曲を今の自分ができる表現で、素直に伸び伸びと歌いたいなと思いました。
――試写会や映画館などで、アニメの中で流れる『エスペーロ』を聴いたときの心境を教えてください。
牧野:もちろん感動しましたし、そこまでの時間を思い返したりもしたのですが、試写のときに一番感動したのは、実は『ウンディーネ』なんです(笑)。
――このアルバムにも収録されているエンディングテーマの『ウンディーネ ~2021 edizione~』ですね。2005年に放送された第1期『ARIA The ANIMATION』のオープニングテーマ『ウンディーネ』を新たなアレンジで新録した曲です。
牧野:『ウンディーネ』は、私の2枚目のシングルだったんです。当時はまだ「歌」ってどういうもので、レコーディングってどうやるんだろうみたいな状況で。デビューシングル(『アムリタ』)を8月18日にリリースしているんですけど、『ウンディーネ』をレコーディングしたのは、たしかデビュー直後の8月頃だったんです。そこから年月が経って、また、河井英里さんの歌詞を今の私で歌わせていただけるのって、なんて幸せなことなんだと思ってレコーディングをしました。そんな気持ちで歌った自分の歌が、『ARIA』の美しい映像の中に乗せていただけていて……。今の私は、幸せの権化だなって思いました(笑)。
――2005年にリリースして以降、ライブやイベントなどで『ウンディーネ』を歌う機会は多かったと思うのですが、今、新規に録音するということに対しては、特別なプレッシャーのようなものはなかったのでしょうか?
牧野:10年以上の時間を『ウンディーネ』と一緒に歩んできて、その中できっと変わったものもあるだろうし、おそらく変わってないものもあると思うんです。それをどういう塩梅で今回の『ウンディーネ』に入れていくのかは、すごく考えました。きっと、単に元に戻るということであれば、元々の『ウンディーネ』の音源を使っていただいていたと思うんです。でも、新録をするというところに、何か本編で描きたいもの、意図しているものがあるんだろうと感じたので、元の歌い方にすごく忠実にというよりは、今の私で、Choro Clubの皆さんも参加された新しいアレンジの曲に気持ちよく歌を乗せさせていただきました。