モブ君と歩んだ6年。「自信がない」とは言いたくない──秋アニメ『モブサイコ100 Ⅲ』影山茂夫役・伊藤節生さんインタビュー
『ワンパンマン』などを手掛ける漫画家・ONE先生によるコミックを原作としたアニメ『モブサイコ100』。2016年にTVアニメ化を果たすと、続編やOVA、ドラマ化、舞台化など数々のメディアミックスが展開中です。
2022年10月には待望のアニメ最新作『モブサイコ100 Ⅲ』が放送! 普通の青春を願う影山茂夫ことモブに平穏な日は訪れるのでしょうか。
本記事では放送を記念して、モブ役の伊藤節生さんにインタビューを実施! 第3期の見どころはもちろん、シリーズの振り返りや舞台版についてもお話いただきました!
第2期を終え、完全に特別な作品に
──アニメ『モブサイコ100』第1期放送から6年が経ちます。改めて作品の第一印象を教えてください。
伊藤節生さん(伊藤):オーディションのタイミングで初めて原作を読みました。最初はどちらかというと、モブ君をどうやって演じようかという目線で読んでいたんですけれど、アニメーションになったときの映像とか音声が全然想像できなくて。
ONE先生の作品は表紙を含めてキャラクターはほとんどモノクロじゃないですか。だから色合いを想像できなかったので、どうオーディションに挑もうか悩みました。
でも、作品自体は惹かれるものがすごく多いと感じました。超能力を扱っているけどそれを全面に押し出しているわけではなく、どちらかというとひとりの男の子の悩みであったり、人間的な部分が描かれていて。徐々に魅力に気付きました。
──モブは超能力がなかったら普通の中学生ですもんね。
伊藤:そうなんです。超能力という面白さはもちろん、人間ドラマもあって。いろいろな楽しみ方ができる作品だと思いました。
──出演が決まったときの感想は覚えていますか?
伊藤:そもそも初めての主役でしたし、TVアニメにレギュラーで出演すること自体初めてだったんですよ。最初にマネージャーから連絡が来たときは「信じられない」というくらい嬉しくなって。それから内容は詳しく言えませんでしたが親に報告したりしました。でもそれも最初だけで……。
──最初だけというと?
伊藤:時間が経つごとに不安が押し寄せてきて……。しかも、イベントでキャストが発表されたんですけど、僕の下にある名前が錚々たる面々で……。あそこから不安が加速しました(笑)。
──いま見てもすごいキャスト陣が揃っていますよね。
伊藤:世代が幅広くて、偏っていないんですよね。僕自身、すごく勉強になる現場でした。
──そんなキャスト陣が揃うアフレコ現場に、主役として入るのは緊張されたのでは?
伊藤:第1期の第1話のアフレコ前日はもう眠れなくて。めちゃくちゃ早く現場に行ってソワソワしていました。でも無名のド新人が主役をやる上で、ほかの方に「この人で大丈夫?」と思われるのは嫌だったので、せめて堂々と失敗しようという心持ちでした(笑)。
──(笑)。
伊藤:堂々としようと見栄を張っちゃいました(笑)。でも第1期の第1話は事務所の藤原啓治元社長がゲストでいらっしゃって。そこはすごく心強かったです。
──そうだったんですね。当時、伊藤さんが主役に決まって藤原さんも喜ばれていたのでは?
伊藤:当時はかなり面倒を見ていただきました。他の方から聞いた話ですが、事務所の新人が主役に選ばれて張り切っていたなんて話もあって。
──実際に収録が始まっていかがでしたか?
伊藤:周りの方々はほかの現場で活躍されているので、僕自身は最初から信頼しきっていて。むしろ「どんなすごいお芝居を聞けるんだろう」と思っていたくらいです。
実際に収録を重ねていく内に「やっぱりすごい人たちだ」と。第3期の収録を通しても思いましたし、僕も追いつかないといけないなと思います。
──第1期から6年近くが経ちましたが、ご自身にとって『モブサイコ』はどんな作品になりましたか?
伊藤:第1期で初めて主役をやらせていただくタイミングで、絶対に僕にとってこれ以上ない特別な作品でしたし、オーディションに受かった時点で今後特別な作品になるんだと。
そして第2期を終え、OVAとか舞台を経験した頃には完全に特別な作品になりましたし、自分の人生においてこれ以上はないんじゃないかと思うようになって。
この作品をやり終えるまでは死ねないなとも思って(笑)。そう思えるくらいの作品ですね。
そして、この作品を通していろいろなことを経験させてもらいました。今後の役者業においても土台となるのはこの作品だと思います。それだけいろいろなものをもらえたので。
──特にこの経験が大きいというものを挙げるとしたら?
伊藤:現場の立ち回りからお芝居の仕方、舞台であれば舞台の演技……内面的なことを含めて全部が土台になっています。
ほかにも、イベントとかで人前に出て喋ることもこの作品がほぼほぼ初めてで。すべてはモブを演じる中で経験させてもらったことなんです。僕の人生においての柱ですよね。
──ひとつの作品でこれだけの展開があるのはすごいですよね。
伊藤:中々ないですよね。ここまで自分にいろいろなことをさせてくれた作品はなかったですし。本当にありがたいことです。
人間ドラマを見届ける作品
──改めてアニメ『モブサイコ』の魅力を教えてください。
伊藤:超能力作品ということでド派手で面白い部分があるんですけど、根底には人間ドラマがあって。キャラクターたちの悩みや葛藤であったり思春期ならではの成長だったり。『モブサイコ』はそれらを見届ける作品だと思うんです。
もちろんボンズさんが手掛けるアニメーションの魅力も絶対にあるので、そこも楽しみながらキャラクター個々の関係性や成長をもっと楽しんでもらえればと思います。
──お気に入りのキャラクターはいますか?
伊藤:一番好きなのはテル君(花沢輝気)です! 一般人が超能力を持ったらああなるよね、とずっと思っていて。
モブ君は平凡と言われていますけど、普通はあれだけの超能力を持ったらあんなに大人しくはならないはずなんですよ。僕は特別だ!と思うほうが自然ですよね。そういう意味で最初は人間味をすごく感じました。
──普通だったら超能力で好き勝手しちゃいそうですよね。
伊藤:超能力でモテたいし、目立ちたいと思うのが普通ですよね。でもそれを否定したモブ君との関係性も好きです。モブ君の影響で、素直で良い人になりましたし。自覚していないでしょうけど、そこもモブ君の魅力ですよね。
あと第2期で、今までは頼れる大人だった師匠(霊幻新隆)がちょっと脆い部分を出していてすごく人間味を感じました。僕自身、いつの間にか師匠より年上になっていたので共感できるといいますか、すごく心にくるものがありました。
人生を良くする上で、誰しもが外っ面を良くするために嘘をついたりすることがあると思うんですけど、第2期の師匠にもその葛藤があって。最終的にはすべてをさらけ出して、それをモブ君が認めてくれましたが、改めて良い関係だなって思いますし、こういう大人って良いなと。
──『モブサイコ』は全体として、キャラクターそれぞれの良い一面をしっかり描いた作品ですよね。
伊藤:根っからの悪がコテンパンにされて改心するというより、悩みを抱えた人物を、また悩みを抱えた少年が素直に接した結果、皆が改心をしていて。それもモブ君だからこそできることですよね。
言葉で説得されても納得できないことを、素直な心と圧倒的な超能力で相手に知らしめるという部分も魅力だと思います。