行き着く果てを知ってしまうとやっぱりどうしても──『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』ガッツ役・岩永洋昭さん×キャスカ役・行成とあさんインタビュー(前編)
映画三部作『ベルセルク 黄金時代篇』の公開から10年。TVシリーズ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』として、鷹の団の、あの輝かしい時代が再び幕を開けた!
原作は言わずとしれた三浦建太郎による同名コミック。2022年6月時点で全世界累計発行部数5,000万部(紙+電子)突破する、世界で愛され続けるダークファンタジーが、STUDIO4℃による鮮烈な映像表現でアニメーションとして描き出される。メモリアルエディションでは映画版では描かれなかった「夢のかがり火」など原作珠玉の名シーンが追加されていく。毎週土曜日24:30~好評放送中だ。
アニメイトタイムズでは、かつての制作秘話、新規シーンへのこだわりなど作品に込めた想いをスタッフ&キャストが語り明かす連載インタビューを実施。第3回は、映画三部作で主要キャストとして抜擢されたガッツ役・岩永洋昭さん×キャスカ役・行成とあさんインタビュー(前編)をお届けする。
行き着く果てを知ってしまうとやっぱりどうしても
──『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』の制作決定の報が届いたときのお気持ちを教えてください。
ガッツ役・岩永洋昭さん(以下、岩永):うれしかったです。またできるっていう、それに尽きますね。
キャスカ役・行成とあさん(以下、行成):新規追加シーンはどこになるんだろう!?というのが気になりました。もしかしたら、あのシーンとかあのシーンとかが入るのかな?だとしたらうれしいなって想像が膨らんで。あと、キャスカとしては、その後続いたTVシリーズ(黄金時代篇以降のエピソードの初のアニメ化となるシリーズ)では言葉としてのセリフをほとんどしゃべっていなかったので、ああ、久しぶりにガッツと話せるんだなあとも思いました。単行本(『ベルセルク』第41巻)特装版用のドラマCDの収録の時もそうでしたが、キャスカがキャスカとしてしゃべるというだけで胸に来るものがあって。思わず、「アキさん(岩永の呼び名)、キャスカがしゃべったよおおお」と声を震わせてしまいましたね。
──この10年の間に『ベルセルク』はご自身にとってどんな作品になっていましたか?
岩永:シンプルに、ものすごく特別なものです。当時、僕は声優未経験の状態で、いきなりこんな大役に選んでいただいた。その時点ですでに特別ですが、でもまさか、こんなにもずっと続けていくことになるとは想像出来ていなかったので。人生に刻まれ続けて、よりかけがえのない大切な作品になっていますね。
行成:私はもともといち読者、いちファンとして三浦先生の『ベルセルク』が大好きだったので、新人時代に映画三部作のオーディションに受かったときの喜びと驚きがまず大きく印象に残っています。恐れ多い気持ちもありながら、せっかく任せていただけたんだから、今の私にできることの精いっぱいで、誠心誠意やらなくては、というところからの10年でした。
私自身、この仕事を始めてそれこそ10年と少しなので、役者人生の間ずっと『ベルセルク』が傍にいてくれたような感覚があるんですよね。役者を続けていると、自分の芝居に対して、こうしたらもっと良くなるかもしれない、もっと自由にできるかもしれない、というような気づきが生まれていくものですが、自分の中でそれが育った頃にいつもちょうど『ベルセルク』の新しいお仕事が届く、というようなサイクルなんですよね。今回のメモリアル・エディションでも、あれから10年後の自分の精一杯でやりたいと思って臨みました。
──グリフィス率いる鷹の団にガッツが加わり、戦乱の世を駆け、仲間たちで高みへとのし上がっていく黄金時代篇。描かれていく物語に、あらためてどんな魅力を感じていますか?
岩永:黄金時代篇のことを考えると、仲間っていいな、戦いって燃えるな、などと思いつつも、行き着く果てを知ってしまうとやっぱりどうしても、もう少しどうにかならなかったのだろうか……と、いつまでも思ってしまうんです。なぜ、あんなにも絶望へと向かっていってしまったんだろう、ガッツはどうしていたらよかったんだろうって。でも、人間……誰しもではないにしても、ダメだとわかっていてもそっちに行ってしまう瞬間ってあるものだとも思うので、その瞬間がとてもうまく描かれているんだよなあって感じています。
行成:そういう宿命なのだとわかっていても、どうしてもそう思ってしまいますね。だって、黄金時代は本当に彼らがキラキラしている時代なんですもん。新規シーンを録っていても、ああ、この頃は本当によかったなあって思ってしまいます。
岩永:今回の新規シーンで、鷹の団のみんなとの交流がより深掘りされているので、少し救いになる想いもあるね。
行成:ガッツが鷹の団に入って、キャスカたちといろいろぶつかりながらも、徐々に頼りにされていく。最高の形ですね。ずっとこのままだったらいいのに……と思わされるけど、そうではいられないから『ベルセルク』なのであって。とにかく、何かとてつもないものがはじまったな、という感じが魅力だと思います。ガッツの物語のはじまりです。
──年月を経て、ガッツとキャスカに対する想いに何か変化はありましたか?
岩永:映画三部作の後、TVシリーズをやらせていただいたり、ゲームやパチンコ版などの収録をしたりする中で、どんどんガッツのことを好きになっている自分に気づきました。ガッツの去るもの追わず、というか、物とか人に固執しすぎない姿勢に学んだ感じもありますね。僕の場合、何かに固執しすぎると周りが見えなくなって、本当に大切なものを見失いがちになるので。本当に大切なもの以外はなんだっていいんだ、というような感覚をガッツから教わった気がしています。あと、僕も歳をとって、のちに前髪の一部が白髪になるガッツと同じあたりに白髪がパーって出てくるようになって、より近しく感じるようになりました。
行成:私は10年前は、鷹の団で千人長として部下を率いて、私がしっかりしなければ、みたいな、ピンと張り詰めた心で頑張っている彼女に共感していたんです。でも、今はどちらかというと、「私にはもう……」「疲れちゃった」とか言って、ふにゃっとしちゃうような彼女にも共感できるようになっていて。キャスカのことを、少しお姉さん的な目線というか、そんなに頑張らなくてもいいんだよ、というように見ている自分がいるなって、今回の収録で気づきました。
この10年で私も大人になったというか、見方って変わるものですね。以前は、私は大丈夫!って気張ってる彼女が好きだったんですが、今は弱い部分も受けとめてあげられるようになっていました。それは自分自身、いろいろな現場でいろんな先輩後輩たちと一緒に作品に携わって、ちゃんと人に頼れるようにもなっていたから気づけたことですね。虚勢を張らなくてもいいんだって。