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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』岡本拓也Pインタビュー

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』はこれからガンダムを知る方とこれまでのガンダムを知っている方、両者が楽しめる要素が込められている!? 岡本拓也プロデューサーが語る魅力と制作の裏話とは

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』以来、久しぶりのガンダムTVシリーズ最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(以下、本作)。その放送がいよいよ2022年10月2日(日)よりスタートしました。

長い歴史を誇る人気シリーズである“ガンダム”であること、そして各所で公開されている前日譚「PROLOGUE」をご覧になった方は、既に本作へ大きな期待を寄せているのではないでしょうか。

また、オープニングテーマ「祝福」を人気アーティストのYOASOBIが担当するということで、これまでガンダムを知らなかった方も興味を持たれた事と思います。

アニメイトタイムズでは、本作のプロデューサーを務める岡本拓也さんへのインタビューを行いました。

ガンダムのTVシリーズとしては初の試みとされる女性主人公についてや「PROLOGUE」の制作裏話、これまでのシリーズファンと本作からガンダムを知る方々へ向けたアプローチのバランスなど、作品にまつわる気になるポイントを伺いました。


 

魅力的に思えた“魔女”というワードのコンセプト

――『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のヒットをはじめ、ガンダムブームが再燃している感覚があります。そんな中での放送となりますが、作品への期待は感じられていますか?

岡本拓也プロデューサー(以下、岡本):『機動戦士ガンダムUC』あたりから徐々に盛り上がってきていると感じています。『閃光のハサウェイ』のヒットについては、おかげさまでビジネス的な面も含めてガンダムシリーズ全体にまだまだ広がりがあるなという感覚がありました。

本作の作品制作を進めていく中でも、想像以上にガンダムシリーズが広がっている感覚があって。本作に課せられた期待も数年前よりさらに大きくなっていると思っています。

『機動戦士ガンダム』は1979年と43年前の作品ですが、1994年の『機動武闘伝Gガンダム』に端を発する宇宙世紀以外を舞台にしたガンダム作品も、既にかなりの歴史を重ねています。『機動戦士ガンダムSEED』や『機動戦士ガンダム00』を小学生や中学生の頃にリアルタイムで見ていた世代が早くも30代ですし。

重ねてきたシリーズ作品が歴史そのものなんです。色々なクリエイターの方々が作ってきたガンダムがある種の厚みになっていて、そこから受けるプレッシャーは非常に大きいものがあります。ありがたいことに各作品にファンの方がいらっしゃいますし、そういう土台があるからこそ出来ることがあるんです。けれど、それ故の難しさもある。


 
もちろん本作でも、今までのシリーズファンの方にも喜んで頂けるものは入れたいと思っています。ですが新たなシリーズ作品を制作する以上、これまでガンダムには触れてこなかった方々に向けてという部分も考えています。
 
既にガンダムを知ってくださっているファンの年齢層も幅広いですし、様々な世代の方に喜んで貰いたい。「ガンダム」が幅広い年齢層の共通言語になっているのは、素晴らしいことだと思います。本作もそういったみなさんに毎週ワイワイ言いながら楽しんでいただけると幸いです。


 

――今回の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』企画立ち上げのタイミングやアイディアが生まれたのはいつ頃だったのでしょうか?

岡本:新たな企画の話が出始めたのは、2018年頃だったと聞いています。私に話が来たのは2020年の初春でした。その時は『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』の制作中でした。

そんな中で、「女性を主人公としたガンダムを作って欲しい」との要望があり、モリオン航空さん(※キャラクターデザイン原案のモグモさん、設定協力のHISADAKEさんが所属するクリエイターチーム)が企画コンペに出されたアイディアの中に、“魔女”というワードがありました。そのコンセプトが面白く、惹かれる部分があったんです。小林寛監督やシリーズ構成の大河内一楼さんとも話して、これを活かす形で企画をスタートさせました。最終的には設定考証の白土晴一さんも加えた4人で2020年の春頃から打ち合わせを始めて、徐々に今の形に作り上げていきました。


 

――主人公であるスレッタとミオリネのキャラクター造形はどの段階で決定したものなのでしょうか?

岡本:当初はもっとシリアスなところからスタートする物語の予定だったんですが、作品の方向性を話し合う機会があって、1話の脚本も1度完成していたのですが路線変更する決断をしました。

そこからマイナーチェンジを重ねて、今の形に落ち着きました。なので、スレッタとミオリネのキャラクター性も物語を作りながら決まっていったところがあります。


 

――前日譚「PROLOGUE」も公開されています。作品の世界観を示すようなエピソードを制作するに至った理由は何だったのでしょうか?

岡本:2015年に放送開始された『鉄血のオルフェンズ』から7年ぶりのガンダムTVシリーズですので、シリーズファンやこれからガンダムを知る視聴者の方に向けて、本編の前にお見せできる物を制作したいと考えました。

本編の前に展開するエピソードを、どういった内容にするかは悩みどころでした。ただ尺は20分程度と決まっていたので、その尺の中でしっかりと世界観を見せられないだろうか、と考えたのが「PROLOGUE」の土台ですね。


 

――早い段階でガンダムがオールレンジ攻撃を行っているのは珍しく思えました。このあたりの意図はなんだったのでしょうか?

岡本:「呪いのモビルスーツ」として「PROLOGUE」のラストで存在を否定される訳ですが、その説得力を持たせるためです。本作で描こうとしているテーマを考えた際に、ガンダムの立ち位置はどうあるべきなのかを考えた末、初手からオールレンジ兵器を採用するに至りました。

本作の世界観において、ガンダムと呼ばれる兵器はかなりの強さを持ったモビルスーツとして存在しています。最初から強い兵器として存在しているので、この世界の中でどう捉えられているのか、ガンダムに対して周囲がどう動いていくのか、その部分に注目してご覧になっていただけると嬉しいです。

また、エリクトがガンダム・ルブリスに話しかけるシーンがあったと思います。あそこは、彼女がガンダムをどういう存在だと捉えているのか、その表現のひとつです。彼女にとってガンダムは研究者である両親が心血を注いでいる身近な存在であるのですが、当時の年齢は4歳ですし兵器であることはまだ理解していません。


 
カルド・ナボとルブリスについて話しているシーンから分かるように、エリクト自身もルブリスが特別であることは、ある程度理解しているんでしょうね。もしかしたら友達や兄弟として見ているのかもしれません。
 
実はエリクトがルブリスに話しかけるシーンのイメージボードみたいなものは、小林監督がシナリオ打ち合わせの段階から書いていました。小さなエリクトと大きなモビルスーツ、その関係値を描けると良いのではないかと考えたんです。これも物語を作るきっかけのひとつでした。


 

――戦闘シーンにも気合が入っているように思えました。制作はやはり大変だったのでしょうか?

岡本:直近では『閃光のハサウェイ』や『ククルスドアンの島』など、気合が入った作品がたくさんあります。本作では今までと制作の進め方やスタイルも変わってきていてなかなか慣れない部分もありますが、お客さんに喜んでもらえる映像に仕上げていきたいという気持ちがあります。

物語以外のところで映像的に何ができるのか、そこに対して新しいことを着実にやっていきたいとは考えていました。それが今の形になっているのかなと思います。


 

(C)創通・サンライズ・MBS
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