『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』アニメ最終回目前!シリーズ構成・千葉克彦さんインタビュー|じつはあのキャラクターはカットされる予定だった?
TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』がいよいよ最終回を迎える。大魔王バーンを倒すため、幾多の戦いを経てきたダイたちの冒険がいよいよ決着を見るのだ。
初回放送から数えて約2年、エピソード数はジャスト100話という物量的にもスケールの大きい、まさに大作になった『ダイの大冒険』だが、制作陣はどのような思いでこの作品に取り組んでいたのだろうか。
ファンの方であれば、スタッフの熱量の高さも『ダイの大冒険』の特徴と言えるが、今回は制作の中枢と言っても過言ではないシリーズ構成を担当する千葉克彦さんに話を伺うことができた。千葉さんと言えば、古くは『ハイスクール!奇面組』や『宇宙の騎士テッカマンブレード』、最近では『ダイの大冒険』の他にも『タイガーマスクW』などを手掛けてきた人物。そんな千葉さんは、どのような形で『ダイの大冒険』と向き合い、構成を手掛けてきたのか。今回のインタビューではその辺りがじっくりと語られているので、ぜひ最後まで楽しんでほしい。
シリーズ構成として一番印象に残っているのはハドラーが奮闘したあのシーン
――本日はよろしくお願い致します。『ダイの大冒険』もいよいよ最終回に向けて残り少なくなってきていますが、実際の放送をご覧になってどのように感じておられますか?
千葉克彦さん(以下、千葉):スタッフの方には、重要なところとそうではないところのペース配分はお願いしているのですが、僕が想像した以上に力を入れて作っているのでビックリしているんですよね。「毎回こんなにやって大丈夫?」って思っています(笑)。
――特に「ここは凄いな」と思ったところはどこですか?
千葉:ハドラーが死ぬところですね。僕自身ハドラーが好きなんですけど、まさかエンディングまで潰してハドラーを描くとは思わなかったです。
――アニメ『ダイの大冒険』を制作する上で、特に苦労した部分やこだわった部分を教えてください。
千葉:実は原作のエピソードって350週分もあるんですよね。それをアニメ全100話に入れるとなると、1話で3.5週分になるんです。それって普通のアニメとして考えたら多い方なんですよ。なので最初は「これ入るかな」って思ったんですよ。そのこともあって、前半は結構エピソードを詰めたんです。
――少し駆け足になってしまったと。
千葉:そうです。それと、エピソードをごっそり抜くかって話も実はあったんですよ。例えばマキシマムのところとか。でもスタッフにマキシマム好きって人もいて、じゃあ抜くのは止めようってなったんです。
――マキシマム好きな人、意外と多いんですね(笑)。
千葉:そうなんですよね。ただ、詰めたことによって余韻が少し足らなかったかなと感じました。例えばシーンの終わりでみんながジーンとしているところとか、そういう時間を取れなかったんです。すぐ次の展開になってしまって。
――『ダイの大冒険』に限らず、原作のある作品をアニメ化する難しさはどの辺りだと思われますか?
千葉:漫画や小説は読み物ですよね。対してアニメは観るものです。なので、観るものにするためには変換は必要なんです。
――変換というと?
千葉:一番の変換は時間感覚です。例えば一冊の漫画を15分で読む人もいれば、30分で読む人もいるじゃないですか。要は自分の主観と体感で読む。ただ、アニメは作り手が時間を決めちゃうんです。
一冊を15分で読む人にとっては長いと感じるし、30分で読む人にとっては速いと感じることもある。なので、そこの塩梅加減が難しいと思いますね。
――『ダイの大冒険』を手掛ける中で、特に時間感覚を意識した部分はどこですか?
千葉:アニメ一週分で3.5話の原作量が入るって言いましたけど、でも、原作を3.5話ずつやって、そのまま切るわけにもいかないですよね。
――おっしゃる通りです。
千葉:なので僕の場合は、みんなが入り込んでいるさいちゅうに、フッと終わるというやり方を多用しました。途中で切ると、みんな続きを見たがるんです。ただこれをやると、観てる側はストレスを感じるんですよね。「こんなところで終わりやがって!」って(笑)。
――原作者の三条陸先生や稲田浩司先生との具体的なやり取りはありましたか?
千葉:変更を加えるなら、より面白くしてくれって言われました。例えば一話では、ダイたちとニセ勇者の戦いを、ロモス王国に行かずにデルムリン島で収めようとした時に、何か作戦を立てて、ちゃんと頭を使って乗り込む描写がほしいとのことでした。
――千葉さんご自身、特に印象に残っているシーンはありますか?
千葉:ハドラーがキルバーンのトラップを支えながら「躯が動いたのだ!! もうけものと思えっ!」って言うシーン良いですよね。
あとはピラァ・オブ・バーンが発動するかしないかのところで、ポップたちがバーンに諦めずにかかっていって、バーンが「今さら余と争って何になるッ……!!!」って言ったらポップが「順番通りじゃねぇか。何がおかしい?」と言うところですね。ああいう見栄の切り方とか好きです。
――いまポップのお話が出ましたが、ポップと言えば『ダイの大冒険』の中でも屈指の人気キャラクターですよね。千葉さんはポップをどのように見てらっしゃいますか?
千葉:今回、数十年ぶりに『ダイの大冒険』がアニメ化しましたけど、スタッフみんなダイが大好きなんですよ。ただ、僕は世代が上ということもあって、最初、そこまでの熱量がなかった。なので、「よし、俺がポップになろう」って思ったんですよ。どんな時でも魔法使いのようにクールになろうって。 いや……どちらかというとマトリフですね(笑)。