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- 逆井マリ
- 神奈川県横浜市出身。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。
──さきほど朴さんのお話にありましたが「二月の黎明号」は難しい役どころですよね。
朴:難しかったですねぇ……。
三浦:これだけいろいろな作品に携わられている朴さんでも難しいというのは、よっぽどですよね。
朴:いやいや(笑)。でも今までとはまたベクトルの違う難役であったことは間違いなくて(笑)。黒川智之 監督から「今回の役はすごく難しいと思いますが、宜しくお願いします」とご連絡いただいたんですが。
難しいとはいえ、限度ってありますもんね。なのでそう難しく考えずに、台本を開いて「…? どういうこと?」と(笑)。監督に「難しすぎます」と速攻、返信しましたね。
とにかく「現場で一緒に考えましょう」ということになり、最初は何パターンかテストさせて頂いたんです。その中にはナナコ寄りのものもあったんですが、なんせ二月の黎明号は1万2000年の時を経ていますからね、悠真たちと年齢感近くなりたくないし、もっと異質なものを意識してチャレンジしてみたところ「それ面白いですね!」となり、今まで出したことないところでやってます。
三浦:特殊な役ですもんね。
朴:そう、だから私は「加工してください!」とお願いしたのですが……。
三浦:えっ、あの声は加工は一切ないんですか?
朴:していないみたいです…。
三浦:えっ、すごくないですか!? ……ってプロにそんなこと言うのは恐れ多いんですが(笑)、本当にすごい……! 少しフィルター掛かったお声というか。声の低いところと高いところが同時に鳴っているような感じがしていたので、今お話を聞いてビックリしています。
朴:ありがとうございます(笑)。でも色んなパターンをやってみたので、どのテイクを使われているかわからないです。感情が出る場面も、数テイク録っているんです。実際はどれが使われているか…。私は10年寝かせないと自分の出演している作品を見られないんですよ(笑)。変な汗をかくので。なので10年後に確認します(笑)。
三浦:普通に作品を見させてもらっている僕としては、「⼆⽉の黎明号」と言ったらあの声というイメージです。本当に素敵でした。
朴:えええ……嬉しい、泣きそう。大ちゃん優しいですね。
三浦:ところでAIって演じられたことはあるんですか?
朴:過去に一度ありますね。自分が(オートロボットの)中にいて、パチパチパチとキーボードで打った文字が外側にいる人たちに文言で聞こえるといったイメージを持って演じていました。
──朴さんは、三浦さんの歌われる主題歌「いつしか」を聴かれたときにどのようなご印象がありましたか?
朴:以前から大ちゃんの曲は聴かせていただいたり、見させていただいていたりして。
三浦:ありがとうございます。
朴:本当にすごい才能を持っている方だなとリスペクトしています。今回、このトレーラーで「いつしか」を聴いた時は、大ちゃんと宇宙というものがすごくマッチしていて、大ちゃんの澄み渡るダイナミックな歌声と宇宙の摂理が合わさって、胸が奮えました。早くフルで聴きたいです。
三浦:嬉しいです。完成したらお渡しさせていただきますので。
朴:買いますよ、大丈夫!(笑)
──私も拝聴させていただいたのですが、<わすれないで>という言葉に胸が温かくもなり、切なくもなり。
朴:うんうん。
三浦:トレーラーも歌詞に合わせて作ってメッセージを出してくださっていて、それも嬉しかったですね。
──作詞・作曲を手がけられているNao’ymtさんも宇宙が大好きとのことで。
三浦:そうなんです。宇宙が好きだという話をよくしていました。Naoさん×宇宙を三浦大知プロジェクトの中でやってみたいなという思いがずっとあったんです。『ぼくらのよあけ』のお話をいただき、これはNaoさんにお願いしたいなと思いました。
朴:Naoさん?
三浦:はい。Nao’ymtさんという方が楽曲を作ってくださっていて。僕自身が作ることもあるんですけど、Naoさんから曲をいただく時は、Naoさんが仕立ててくれたスーツを自分たちがどう着こなすか、と考えています。だからNaoさんと一緒にやるときは、Naoさんに全部(テーマなどを)ぶつけて、それをNaoさんからももらって、それをどう表現するか……というパターンが多いです。今回もそのパターンでした。凄まじい作品を作られる方なので、僕も大ファンなんです。そのNaoさんの中にある宇宙と、温かな心がふんだんに詰まった1曲になったと思います。
──制作側からなにかリクエストのものはあったんですか?
三浦:いや、なかったです。自由にやらせていただきました。
──せっかくの機会なので、最後に、お互いへの質問がありましたら。
三浦:あ、でも僕はさっき聞いてしまいました。AI役をやられたことがあったのかな、というのを聞きたかったんです。
朴:車の役をやったことがあるんですよ。
三浦:車が人格を持っているということですか?
朴:車の人工知能•AIですね。乗車する主人公を守りぬく。今回とはまた全然違いますね。
三浦:ひと味もふた味もちがったわけですね(笑)。しかも、ストーリーの柱を補う役ですし。
朴:そうなんですよね。私も大ちゃんに、聞きたいことがありすぎるのですが、今Naoさんのお話を聞いていて大ちゃんが大切にしているものが分かった気がしてさらに興味深いですね。誰かに曲をもらうときは、台本をもらったときのような感覚ですか?
三浦:それに近いと思います。それをあとは自分がどう表現するかというか。僕は自分のことを「三浦大知」というプラットフォーム・遊び場になっていたらいいなと思っていて。この遊び場にいろいろな作家さんが来たときに、「三浦大知だったらこんなことできるよね」とか、「めちゃくちゃなボールを投げても面白くできそう」とか、リミットなしで、心置きなく遊べる場所になったら良いなと。
朴:素敵!
三浦:その方の作家性が出ているものがいちばん好きなんです。誰かに理解される・されないとか度外視で、その人が全面に出ている作品。自分を媒介にすることで、一個の作品にできる場所だと良いなと思い制作しています。
朴:全然違うジャンルの人とか「これはいままでやったことない」ってものほどウェルカムってことですか?
三浦:そうですね。いろいろなシンガーの方と歌わせていただくことも好きですし。朴さんが⼆⽉の黎明号役で今回チャレンジされたように、僕もそういうチャレンジは今後もしていきたいなと思っています。
インタビュー・逆井マリ
神奈川県横浜市出身。既婚、一児の母。音楽フリーペーパー編集部を経て、フリーのライターとしてインタビュー等の執筆を手掛ける。パンクからアニソン、2.5次元舞台、ゲーム、グルメ、教育まで、ジャンル問わず、自分の“好き”を必死に追いかけ中。はじめてのめり込んだアニメは『楽しいムーミン一家』。インタビューでリアルな心情や生き方を聞くことが好き。
2022年10月21日(金)公開中
1万2000年をかけて地球に来た“未知なる存在”と子どもたちの極秘ミッションが今、始まる―
講談社「月刊アフタヌーン」で連載された傑作 SF ジュブナイル漫画「ぼくらのよあけ」(原作:今井哲也)が、この秋、ついに劇場アニメ化!
原作:今井哲也「ぼくらのよあけ」(講談社「月刊アフタヌーン」刊)
監督:黒川智之
脚本:佐藤大
アニメーションキャラクター原案・コンセプトデザイン:pomodorosa
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:吉田隆彦
虹の根デザイン:みっちぇ
音楽:横山克
アニメーション制作:ゼロジー
配給:ギャガ/エイベックス・ピクチャーズ
製作:2022「ぼくらのよあけ」製作委員会
主題歌:三浦大知「いつしか」
沢渡悠真:杉咲花
ナナコ:悠木碧
岸真悟:藤原夏海
田所銀之介:岡本信彦
河合花香:水瀬いのり
岸わこ:戸松遥
沢渡はるか:花澤香菜
沢渡遼:細谷佳正
河合義達:津田健次郎
二月の黎明号:朴璐美
岸みふゆ:横澤夏子