羽多野渉アーティストデビュー10周年記念スペシャル対談企画『羽多野くんと〇〇くん』 Part.1「羽多野くんと小野くん」前編|先輩から受け継がれていく技と魂__羽多野渉さん×小野大輔さんが出会いから思い出の作品、互いの楽曲まで語り合う
小野さんが今でも忘れられない羽多野さんのセリフとは?
小野:その『キスダム』に途中から羽多野くんがレギュラー参加して。
羽多野:戦艦の艦長が中井和哉さんで、僕は副長役でしたね。
小野:収録ではまだ絵がない状態だったけど、羽多野くんは硬めの中低音で演じていたよね。カッコいい感じだったけど、絵を見たら頭髪がコーンみたいな、すごく立ったキャラで。
羽多野:見た目の個性が強すぎて「え~っ!? 思っていたイメージと違う!」と。
小野:でも絵と合わせて見たらすごく合っていて。「コイツ、すげえ!」と感心しました。僕には絶対合わせられないよ。あんなキャラ。
羽多野:それはすごく記憶に残っています。
小野:それ以外でも羽多野くんがやった役が僕にはすごく刺さるんです。新人声優の成長を描いた『REC』というアニメでも、保村(真)さんが初めて主役を演じた作品ということもあり、STA☆MENのメンバー全員で鑑賞会をしたという美談がありますが。本題はそこではなく(笑)。
羽多野:僕は新人時代に呼んでいただいて。
小野:アニメの打ち上げシーンで、羽多野くんは先輩声優役。、そのセリフに「そういうことってあるですよ」って普段絶対に言わないような言い回しセリフがあって(笑)。「何だ! このセリフは?」って。
羽多野:何目線の声優イメージなんだと(笑)。
小野:「羽多野くんはどうやるんだろう?」とキャスト陣の間でも話題になったけど、羽多野くんのお芝居を見て、「正解はアレだ!」とみんな納得してました。そういえばディレクターさんから「いい感じにしておいてよ」というアバウトな指示もよくあるよね。
羽多野:あとスポーツもので、人数がいない時に5人のモブを3人で何とかしてとか。そんなムチャ振りがある中で、先輩の記憶に残ることは嬉しいですね。分量にしてみたら30分アニメでセリフ1つですからね。ディレクターさんも先輩もみんな笑ってくれるから嬉しかったです。
お二人が尊敬する先輩、鳥海浩輔さんとの素敵なエピソード
小野:番組レギュラーや兼ね役で作品の1つのピースになっている点でも近い感じがして。
羽多野:『モノクロームファクター』も印象深いです。小野さんが主役で、他に諏訪部(順一)さんや神谷(浩史)さんなどすごく豪華で。
小野:ナツいね。
羽多野:その作品で初めて共演したのが佐藤拓也くんで。
小野:サトタクも僕らと同じ空気を感じるよね。
羽多野:世代ごとに魂が受け継がれていくみたいな。
小野:僕は渡したつもりはないけど、みんな勝手に拾っているだけで(笑)。僕も鳥(海浩輔)さんにそう言われた。よく鳥さんのを拾うので。鳥さんはだいぶ昔だけどイベントのあいさつで、「今日はたっぷり濡れて帰ってください」と言っていて。
羽多野:名ゼリフですよね。
小野:でもある時から言わなくなったんだよね。「どうして言わなくなったんですか?」と尋ねたら「飽きた」と。それ以降は「愛してま~す!」と言うようになって。だからイベントでご一緒した時に「じゃあ、僕がアレもらいます」って。それから一時期、僕も「たっぷり濡れて帰ってください。汗で」と言っていたこともあったけど、僕が言うと全然ウケなかったので、すぐに言わなくなった(笑)。
鳥さんとは『恋ギグ』で一緒だったし、高橋陽一先生原作の『ハングリーハート』でも鳥さんが主役(叶恭介)で、僕は控えのゴールキーパー(菊本ハジメ)役で共演させていただいて。打ち上げで、トイレに行ったら隣に鳥さんが来て、「小野くん。もっと自分出していいんだよ」と。「控えのゴールキーパー役でもこんなに見てくれているんだ」と思って、とても嬉しかったことを覚えています。
羽多野:鳥さんは本当に若手を見てますよね。僕は『バジリスク』(鳥海さんは主役の甲賀弦之介役、羽多野さんは筑摩小四郎役)の時にすごくお世話になって、収録後には毎週飲みに連れていってもらいました。一緒にお酒を飲みながら「羽多野、あんまりうまくなるなよ」と言ってくださいました。
小野:すごく深いね。
羽多野:その時はまだしっかりと理解はできていなくて。でも同じことを櫻井孝宏さんにも言われたことがあって、「うまさを目指すな」と。「うまさだけを追求すると長く活躍できなくなってしまうから、個性を探そうね」と言ってくださって、ちゃんと見てくださっているんだなと今、小野さんのお話を聞いていて思い出しました。
小野:上の人たちはちゃんと見ているよね。そしてさりげなく大切な言葉をかけてくださって。その姿に憧れて、僕もあんな風になりたいなとずっと思ってる。でもさりげなく言えないからステージで正面切ってまっすぐ言うから泣かせちゃう。ごめんね(笑)。
羽多野:いえ、そんなことないです! すごく嬉しいです。根底にある想いがありがたいです。
小野さんの曲の幅広さは声優だからこそ。小野さんが言われた「何かさせたくなる器」という意味
――すごく熱くて、いいお話を聞かせていただいてありがとうございます。
小野:いえいえ。
羽多野:たぶん僕らは音楽と声優を分けて考えていないからなんだと思います。役者として音楽をやっていることが小野さんを見ていてもよくわかるし、自分もそうありたいと思ってやっているので、音楽について語ろうとすればお芝居は切っても切れないんですよね。ちゃんと声優としてお芝居しているから音楽も楽しめるというのはあります。この対談企画のお話をいただいてから、改めて小野さんの曲を聴かせていただいて。サブスクだといろいろな曲がリリース時期に関係なく、ランダムで聴けるんですけど、曲の幅がすごく広いんですよね。
小野:雑食だよね(笑)。
羽多野:シリアスでしっとりした歌い上げる系の曲があれば、ディスコソングやファンク系があったり。そして聴いていると自然と元気になるんです。小野さんの音楽を長く応援し続けているファンの皆さんの気持ちがよくわかります。
小野:ディスコ&ダンスチューンの「熱烈ANSWER」から、演じることに振り切ったことで生まれた音楽性だね。それ以前は渡辺拓也さんにずっと楽曲提供をしてもらっていて、エモーショナルなJ-POPをまっすぐやっていた。もちろん演じることは絶対はずさないように。でも「熱烈ANSWER」で完全に演じることに振り切った。『バトルスピリッツ ブレイヴ』のED曲ということも大きくて。初めてのタイアップ曲で、日曜の朝から「energy発射」なんて、「(作詞の)畑亜貴どうかしているぞ」と(笑)。
羽多野:アレは勝ち曲ですよね。イントロからテンションが上がってしまう曲が多いですよね。だからイントロを聴いただけで「来た~っ!」と。
小野:そのハンドル握る仕草からすると聴くのは車の運転中だよね。わかる。車で聴く同業者の曲は染みるし、刺さる。運転と聴こえてくる音楽だけに身を任せているから体にすっと入ってくるんだろうね。
羽多野:今朝、聴いていたのは「真夏のスピカ」で、その後が「DELIGHT」で「来た~っ!」って(笑)。思わずテンションがアガってしまう曲作りは小野さんの音楽チームの素晴らしさであり、小野さんのボーカルの素晴らしさだと思います。
小野:演じることに特化しているからチームもそういう曲を持ってきてくれるのかなと。「この人、何でもやらせられるな」って。プロデューサーからも「小野さんは何かやらせたくなる」と言われたし、森久保さんからも言われた。「(森久保さんのモノマネをしながら)Dってさ、器だよね~。何か入れたくなんだよ~」って(笑)。