秋アニメ『陰の実力者になりたくて!』中西和也監督インタビュー|シャドウの「アイ・アム・アトミック」発動の瞬間のためにすべてが設計された5話【連載03】
逢沢大介さん原作の人気ライトノベル『陰の実力者になりたくて』のアニメが好評放送中!
先日放送された5話では、シドがアレクシア王女誘拐事件の容疑者として拘束されていたため、真相解明のためにアルファたちシャドウガーデンのメンバーが行動を起こし、アレクシア王女が捕らわれていたアジトへ。アレクシア誘拐の首謀者であり、ディアボロス教団の一員だったゼノアとシャドウが対峙。一方、ゼノアの部下が作り上げた怪物が解き放たれ、王都で暴れまわるもアルファが倒す。シャドウとゼノアの対決は、まったく歯が立たないゼノアが秘薬を使って魔力覚醒するも、シャドウは奥義「アイ・アム・アトミック」を発動させ、ゼノアのアジトを壊滅するだけではなく、王都にも影響を与えるほどの威力を見せた。アレクシアは姉のアイリスの元に帰還、アイリスは教団の調査に着手。シャドウからいち生徒のシドに戻ると、新たなキャラ、シェリーのとの出会いが……。1つの事件が解決し、次なる進展を感じさせた5話でした。
注目作の放送開始を記念して、アニメ『陰の実力者になりたくて』にまつわるキャストやスタッフなどへのインタビュー連載をお届けしています。第3回にご登場いただくのは中西和也監督です。
5話の振り返りと解説や、原作の印象やアニメ化で意識された点、6話以降の見どころなどご紹介いただきました。
シャドウの「アイ・アム・アトミック」発動の瞬間のためにすべてが設計された5話。悩み続けたアレクシアが理解・納得するまでの心理描写がお気に入り
――先日放送された5話を振り返って、制作の際に意識されたことやお気に入りのシーンや演出をお聞かせください。
中西和也監督(以下、中西):5話に関してはシャドウが「例のあれ」を撃つというところがすべて、と言っていいものであり、実際にその瞬間のためだけにすべてが設計されていました。
騎士たちを跳ねのける化け物、化け物を圧倒するアイリス、それを上回り建物ごと化け物を消滅させるアルファ、この段階でだいぶインフレは進んでいるけれど、そこから更に極まった破壊と、破壊後の風景をしっかりと焼き付ける。現場のスタッフの大なる努力もあり、その流れは上手く見せられたのではないでしょうか。
気に入っているシーンをあえて挙げるとすると、そういうアクション的な見せ場ではなくアレクシアの個人的な解消の部分を描けたところです。きっかけは与えられたものであっても、最終的には自分で自分を救い上げられる人間なのだろうな、と原作を読んでいたころから感じていた印象を映像として現わせたと思います。その後の姉、アイリスとのやり取りの部分を含めて、役者さん方にも素晴らしい演技をしていただけたので嬉しかったです。
原作をweb小説だった頃に読んで、書籍化やアニメ化まで確信!
――『陰の実力者になりたくて!』の原作を読まれた感想や魅力を感じた点をお聞かせください。
中西:ちょうどアニメの5話の話の内容でしょうか、この部分がweb(『小説家になろう』)で連載されていた時に読んでいたのですが、その時に「この作品は書籍化するだろう」と感じました。
しっかりと仕掛けを作って最適なタイミングでそれを爆発させる。読者の存在を想定して書かれている。商業作品としての適性を持っている。「上手い」作品だな、と思いました。その後、続きのある章を読んだ時に、「これはアニメまで行くだろう」と半ば確信していました。
そして実際そうなりました。予想外だったのは自分がそのアニメの監督だったことくらいです。
意識したのは原作の読後感の再現。キャラクターデザインの飯野まことさんは中西監督からオファー
――アニメ化にあたって意識された点、難しかった点をお聞かせください。
中西:意識したのは原作の読後感を再現する、というところです。一冊、一章を読み終えたときに感じたもの、それを映像として再現することを目指しています。間違いなく楽しく笑えるひと時だった、そのはずなのに、最後の1ページを読み終えた瞬間に感じるものは、意外と……という、あの原作の独特の空気を目指す、ということです。
難しい面はやはり倫理的な部分でしょうか。笑いの方向が火遊びじみた性質を持っているところがある、とはいえその部分を消してしまえばこの作品である意味がない。しかし火遊びであると隠してただ「楽しいものですよ」と提供するのは不義理に過ぎるだろう、だからといって説教臭く「危険だ、危険だ」と繰り返すようなことも違う。そのあたりのあんばいにはだいぶ頭を悩ませています。
――原作の逢沢先生や編集サイドからオーダーやリクエストはありましたか?
中西:こちらからの提案に対するアンサーという形では、細部にわたっていろいろなご意見、アドバイスなどを受け取っていますが、先方様からのオーダーと言う形で何かご要望をいただいたということは余りない、という状況です。
正直に言ってしまうと、役者さんの選定など、いかにもアニメを作ってる感のあるキャッチーな部分とかはもうちょっと鶴の一声的なものをくれた方が現場としては助かったんだけどなぁ、とか思わないこともないですが(笑)。原作者の一言は重い。
――スタッフチームはどのように決まったのかお聞かせください。そして監督から各スタッフにオーダーされたことも合わせてお聞かせください。
中西:付き合いの長いスタジオでの仕事ですので、スタジオとしての座組を引き継ぐ形での人選になります。唯一キャラクターデザインの飯野まことさんだけは私個人の付き合いがあったので、お声がけして参加していただきました。